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2022.06.24
スイーツ写真を撮りつづけてきたからこそ伝えたい、スイーツに込められた想い『写真家 やまぐち千予』
写真家
やまぐち 千予(ちよ)さん
カメラマンアシスタントを経て、2005年独立
光の反射と柔らかさをテーマにした作品を撮影
風景、動物、スイーツ、商品や広告撮影まで多岐にわたる
講師として約20000人以上をレクチャー
PIYOCAMERA写真事務所(2005年設立)
関西カメラ女子部主宰
デジタルハリウッド大阪校 写真/ライティング講師
FUJIFILM X PHOTOGRAPHER
NHKサラメシ出演、MBS「湯浅んぽ」リポーター等
2022年5月から自身初のスイーツ写真のみの個展「Sweets, sweets」を開催
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こんにちは、chefno編集部です。

今回は、スイーツの写真を撮り続ける写真家「やまぐち 千予(ちよ)」さんのスイーツ写真展「Sweets, sweets」にお伺いしました。

最近では、パティスリーやベーカリーでSNSを運用しているお店も多く、そこではお店で販売される商品やシェフの想いが写真を通して投稿されています。SNSを活用するなかで、写真の撮り方がいまいち分からない、何となく撮影しているという方も少なくないでしょう。では、美味しそうに見える写真、SNS映えする写真であれば良いの?やまぐちさんとお話をするなかで、この疑問がすっきりしました。

 

個展を通じて伝えたかったこと

年間約500枚以上ものスイーツを撮影される、やまぐちさん。スイーツのみの写真展の開催は日本では珍しく、この個展でやまぐちさんが伝えたかったことはいったい何だったのか。スイーツ写真に込められた想いは何だったのか。

「この個展では、『生活のなかにスイーツがある』というストーリーを写真で表現しています。スイーツを食べる人や食べている場所、食べている時間などを想像して楽しんでいただけたら嬉しいです。来場者の方から、この写真は宮殿を借りて撮影したの?と聞かれた写真もありました(笑)実際は、こたつの上で撮影した写真なんですけど、写真を見た人からは狙い通りそう思っていただけると嬉しいですね」

▲宮殿で撮影されたと思われた作品。こたつの上で撮影されたとはだれも想像できない

 

スイーツ写真を撮り続けて分かった、スイーツの本質

やまぐちさんがスイーツ写真展を開催するまで、スイーツの写真に魅了されたのは何故だったのでしょう。

「私がまだ駆け出しのカメラマンだったころは、様々なご依頼を受けるなかのひとつにスイーツの撮影のお仕事がありました。元々、スイーツが好きで、プライベートでもスイーツの写真を撮ることが多かったのですが、料理などに比べて撮り方が難しいなと感じていました。例えば、ケーキの場合、ひとつのケーキのなかに色鮮やかな果物があったり、色が濃いチョコレートやブルーベリーなどがあったりと、撮影する際の調整が非常に難しいんです。同じスイーツでも、焼き菓子のように、茶色がメインのものもありますし、本当に様々ですよね。しかも生ケーキの場合は、温度によって状態が変化するので、撮影は時間勝負です。そうやって撮影に試行錯誤を重ねていくなかで、だんだん楽しくなってきて、スイーツ写真の魅力にどっぷりつかってしまったんです」

▲やまぐちさんの作品。カラフルなお菓子ほど色のバランスや光のあてかたに苦労されるそう

いちど極めたいと思ったらとことん極めるというのが、やまぐちさんの性格。スイーツの撮影を続けるなかで、単に美味しく見えるように撮影することだけが写真家の仕事ではないことに気付かれたそうです。

「スイーツの撮影はとても楽しかったのですが、自分が撮った写真で本当にそのお菓子の本質が伝えられているのか、あるとき疑問に思ったんです。お客様の依頼を受けスイーツの撮影をしていたときなのですが、生ケーキをカットしてその断面の撮影をしていました。断面が何層にもなって構成されているのがとても美しく、バランスもよくて感動的でした。このケーキの層を生み出すのに、パティシエの方がすごく時間をかけてレシピを考え、食感やどの味をメインにしたいか、全て計算されて構成されたものだと思いました。そのとき、美しく撮影するだけでは、作り手の努力や気持ちを伝えきれないのではと思いはじめたんです」

▲撮影のセッティングに苦労したという作品の前で。なんとセッティングに半日かかったそうです。ストーリーを写真で表現するのはかんたんではない

 

スイーツを食べる人にどんなしあわせを提案できるか。それが写真家がすべきこと

ある程度実績を積み、やまぐちさんに撮影依頼をする方も増えてきました。ある案件で、お客様と撮影の打ち合わせをしている際に、撮影スタイルを変えるきっかけとなることがありました。

「あるお店で打ち合わせをしていた際に、お客様が『以前他のカメラマンに撮影してもらった写真、素敵だったんだけど売り上げにはあまりつながらなかったんだよね』と仰ったんです。私が駆け出しの頃もそんな話をちょこちょこ聞いていましたが、今あらためて聞くと、『これはカメラマンの作品になってしまっていて、お店の方の要望には応えられていなかったんだな』と気づきました」

▲やまぐちさんの作品には全て明確なテーマとストーリーがあります

いろいろ経験を重ねてきたからこそ、導き出されたやまぐちさんなりの写真家としての答えが見つかったのがこの時だったそうです。そして、いよいよ、写真家やまぐち 千予としての新しい撮影スタイルが始まることになります。

「私が、お客様から撮影依頼を受けた際に必ず行っていることがあります。それは、お店のお客様のターゲット層を理解することです。来店客は、何時頃にどんな性別の方が来られるのか。立地や利用シーンなど、オーナー様へのヒアリングと併せて実際に数日間お店の様子を拝見します。もちろん、お店のコンセプトなども理解しつつ、撮影テーマを決めていきます。美しく、美味しそうに撮ることが絶対ではなく、お客様(作り手)がどのように消費者に買って欲しいかを理解するのが大事だと思いますね。確かにきれいな写真を撮ることに間違いはないですが、だからこそそれを押し付けるカメラマンにはなってはいけないと思っています」

▲写真のテーマについて熱弁されるやまぐちさん。マーケターの一面も垣間見ることができる

筆者の私はこの撮影スタイルを聞いて、まさに「マーケティングだ!」と思いました。写真家の方が、ここまでのことを考えて実践していることに正直びっくりしました。やまぐちさんの取り組みはこれで終わらず、写真家として新たな一手を打ちます。

 

パティシエ・パン職人にも写真を撮影して欲しい

最近ではSNSを活用しているお店も多いなか、投稿する写真を撮影するたびに写真家の方に仕事を依頼するのは、コスト面でも現実的ではありません。では、やまぐちさんのように撮影をするために、自身ではどうすればいいのでしょうか。

「最近SNSの利用者が多くなってきたこともあり、撮影レクチャーの依頼を受ける機会も増えてきているんです。お店が発信したいことは、お店の方が一番理解されていると思いますので、自身で撮影できるようになっておくのは重要だと思います。ですので、写真家として皆さんにレクチャーをすることで、貢献できるのは嬉しいことです。写真を撮るのが難しい、機材を揃えるのはお金が掛かりそうという方も多いのですが、実は私はカメラやライトは高い物を使うこともありますが、その他の備品は100円均一やホームセンターで購入できるような物(背景ボードや安価なライトなど)を使い、ときにはDIYをして撮影準備をすることもあります。撮影へのハードルを下げることで、レクチャーをした皆さんも、受講後に実践がしやすいと思います。スイーツを専門に撮影する講座というのは日本でも少ないと思いますので、普及活動もどんどんしていきたいですね」

実はやまぐちさん、レクチャーのなかで「売り上げを上げる撮影テクニック」というテーマでも講義をされたこともあるそう。その内容が話題を呼び、書籍化されるほどにまで!大学や専門学校からもお呼びがかかり、講師としてレクチャーをされているそうです。

 

今後のやまぐち 千予が向かう先は

写真を撮る時に、スイーツを食べる向こうの人を想像してぜひ写真を撮影して欲しいです。私は、作り手の想いが伝わる写真撮影のお手伝いを今後も続けられたらと思います」

 

取材後記

筆者自身も、取材先で写真を撮影する機会が多くあります。その時、取材している方のお話が伝わる臨場感を大事にしていますが、やまぐちさんのお話を聞いてよりその大切さを実感しました。SNSが多用され、手軽に写真を投稿する利用者が増えています。

美味しそう、美しいだけでは写真が上手い人に負けるかも知れませんが、あなたのお店や商品の魅力を伝えるために、伝えたいストーリーを写真に込めれば、唯一無二の写真になるかも知れませんよ!

本サイトのWEBセミナーコンテンツにてやまぐちさんが行う、スマホ撮影講座の実施も検討中です!今後の情報をお見逃しなく!

 

●やまぐち 千予さんの今後のイベント開催情報
福岡、名古屋、札幌にてスイーツ写真展「Sweets, sweets」開催
イベント詳細はこちらから
 
福岡では、やまぐちさんによるトークショーの他、カメラ・レンズ体験&相談会なども開催予定です!
トークショーの詳細はこちらから
カメラ・レンズ体験&相談会(要予約)の詳細はこちらから

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chefno編集部
編集長 リョウ
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WEB業界に10年以上従事して、現在はchefno編集部の編集長をつとめる。コーヒーが大好き!コーヒーに合うパンとお菓子を編集作業の合間に食べるのが楽しみ。車があればどこにでも取材に行きます!
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