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2021.12.15

フランスからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 芽衣 Vol.5「葡萄畑が広がるロワール地方にある土曜日限定営業のパン屋さん」

こんにちは

先日、Saint-Aubin-De-Luigné (サントーバン・ド・リュイニエ )という、Savennières (サヴニエール)ワインで有名なロワール地方にあるパン屋さんに行きました。

今回は、そのパン屋さんのお話です。

実は、このお店が営業しているのは土曜日だけなんです。
月曜日〜金曜の平日は「Biocoop(ビオコープ)」というオーガニック専門スーパーへの卸販売がメインで、店舗での販売はしていないそうです。
ですので、今回は土曜日の朝を狙ってお店に行きました。

お店の雰囲気はというと、
外観は、可愛らしい木製の小屋という感じで、周囲に葡萄畑が広がるこの地域に自然と溶け込んでいました。

木のぬくもりを感じる外観

店内に入ると、販売エリアと工房エリアとの境目がなく、店内から工房内が見えます。
パン好きの私からするとパンの焼けた良い香りと製造している様子が見れ、そこはまさにパラダイスでした(笑)

カフェスペースからの店内の眺め。レジ奥にはすぐに工房が。境目がなく全てが身近に感じる

実はこのお店、フランスにある一般的なパン屋さんとは少し違う運営スタイルなんです。
というのも、お店として小麦畑を所有しており、自分達で麦を育て、収穫し、お店の裏にある製粉所で製粉しています。
そこで製粉した小麦を使い、パンやお菓子をつくり販売しています。

材料へのこだわりを感じますよね。
そして、小麦だけでなく他の材料へのこだわりも強く、商品に使用する材料のほとんどがオーガニックとのこと。
タルトにのせるフルーツや野菜ももちろんオーガニッケで、地元で収穫されたものだけを使用しているそうです。

そんなこだわりがつまった材料で作られたパンの種類は、
ハード系が15〜20種類くらい。
クロワッサン、ブリオッシュなどのヴィエノワズリー、そして焼き菓子が10種類くらい並んでいました。


このお店のハード系のパンは、イーストを使わずルヴァンで発酵させているとのこと。

オーナーのフランクさんはとても気さくな方で、私もパン職人だというと、惜しむことなく工房や製粉機などを見せてくれました。

毎日大活躍という大型ミキサー

焼成には一般的な電気オーブンではなく、薪釜を使用しているとのことで、その薪窯も見ることができました。

焼成の際に使用されている薪窯(左奥)

なぜ今回このお店をピックアップしたかと言うと、
現在フランスでは(特に私のいるロワール地方では)、チェーン展開で店舗運営せず、1店舗で「地産地消」「オーガニック」「手作り」など、トラディションとオーセンティックをコンセプトにしているお店が、作り手、そしてお客様にとても好まれている傾向があるように感じられるからです。

パリのような大都市では、昔ながらのブーランジェリー&パティスリーといった、バゲット、クロワッサンなどからタルトやケーキまであらゆる商品を揃えているお店が今も多くみられます 。
このスタイルのお店は外観がカラフルで遠目からでも「パン屋さんだ」と分かりやすく、店内のつくりも、販売スペースと製造スペースが完全に分かれているお店がほとんどです。 

ここ最近は昔ながらのお店はもちろん沢山ある中で、今回ご紹介したようなお店が増えてきています。

今回ご紹介したお店づくりやコンセプトは、開業準備を進めている私にとって、非常に参考になる運営スタイルのお店でしたので、読者の皆さんにも知っていただきたいと思いご紹介しました。

自分の開業したいお店についてゆっくり考えることの出来た、併設のカフェ。居心地が良かったな~

「パンを販売する側からお客様の表情や反応を直接見られる、店内のつくりはいいな~」と思い、店を後にしました。

 

パンの国フランスで、昔から良いとされてきたものを受け継ぎながらも、自分の信念を店づくりや商品に反映されているスタイルに深く共感しました。
そして私のように、日本から来たパン職人が、ここフランスのパン文化に敬意を払いつつ、自分のアイデンティティや考えを持ってパンをつくり、気に入ってもらえるお店づくりをする為に、しっかり開業の事を考えなくてはいけないなと、気付かされる一日でした。

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Writer
成澤 芽衣
成澤 芽衣
運営サイトはこちら
2017年 フランス全国バゲットトラディションコンクール 優勝。 現在はフランスでフリーランスのパン職人として活動する傍ら、日本でのイベントや、東京にあるベーカリーでパンの監修をさせていただいております。 フランスから私なりの視点で、パンのこと、普段のことなどなど。 生のフランス情報をお贈りします。
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