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2024.03.08

オーストラリアからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 聡Vol.09『オーストラリアとニュージーランドの穀物生産者と利用者からなる非営利ネットワークgrAiNZとその活動について』

こんにちは。気づけば、オーストラリア通信を書き始めて1年が過ぎようとしています。もっと頻繁に記事を書くつもりが、日々の仕事に追われ、なかなかこまめな更新ができていないのが事実です。さて、今回お伝えする話題は、本当は執筆が始まった当初に書くつもりでしたが、なかなか筆が進まず先延ばしにしていた内容です。ようやく、重い腰があがりました。

その話題は、「grAiNZ(グレインズ)」というネットワークのお話です。

grAiNZとは、オーストラリアとニュージーランドの穀物生産者と利用者からなるコミュニティネットワークです。grAiNZの綴りで「A」と「NZ」が大文字なのは、「A」はオーストラリア、「NZ」はニュージーランドを表し、grain(穀物)とかけているからです。

grAiNZは、好奇心と情報交換を厭(いと)わない数名のパン職人が、お茶を飲みながらその知識や経験、技術を共有する場から始まりました。2014年にgrAiNZ主催でイベントを開催し、それ以来コミュニティはどんどん広がり、今では、パン職人だけでなく小麦生産者や製粉業者、モルト(麦芽)業者や醸造業者、さらには関連分野の研究者の間にまで拡大しています。

僕は、LoferBreadで働いていた頃にこのgrAiNZの存在を知り、2016年にニュージーランドのオークランドで開催されたイベントに参加しました。その当時のイベントの様子はというと、オーストラリアとニュージーランドのパン職人を中心とした集まりで、なかには数名のホームベイカーも参加し、なごやかでアットホームな印象でした。イベントでは、最新のパン事情から材料のこと、技術的な情報の交換など、カジュアルな雰囲気ながらも勉強になる話題も多かったです。なによりも、経験年数やビジネスの規模に関わらず、同じ環境でパン作りをしている同業者の仲間たちと交流が持てた貴重な経験でした。

ただただ感心するのが、grAiNZに関わるすべての人たちが、純粋かつ積極的に活動に参加しているということ。そして、コミュニティで語られる内容は本当に多岐に渡っており、一人のパン職人として目から鱗というか、目が覚める思いというか、考えさせられることが本当に多いです。

昨年2023年にもgrAiNZのイベントが開催されました。近年の活動が活性化していることもあり、今までにない大きな規模(参加者、会場その他)での開催だったようです。残念ながら、僕は仕事でバタバタしていたこともあり、イベント参加は叶いませんでしたが、イベント案内の冒頭文を読むだけでも、このコミュニティの活動や考えがわかり、思わず熟読してしまいました。

以下の内容は、実際に2023年開催時に送られてきた案内文です。

「Against a backdrop of accelerating change and disruption, in 2023 we see a diverse community of folk committed to supporting each other’s endeavors to change our local grain economy specifically,and our food systems in general,for the better.

This year we highlight the vital importance of diversity in our living and economic systems. We are thrilled to welcome farmer and author Matthew Evans as our keynote speaker. Matthews book Soil is both a celebration of the biodiversity under our feet and a cell to action to protect it for all our sakes. We have panels exploring diverse ways to regenerate our agriculture and food systems, and celebrating the diversity of humans in our community. We have a broad offering of workshops, demonstrations and talks, seeking to open minds and spark new inspirations.

The aim of grAiNZ is to connect people working with grain, a staple that has allowed civilizations to flourish. We gather to learn from each other and together rebuild food systems that benefit our earth and her people. We hope that over the coming days you revel in reconnecting with old friends and making new ones.」

(日本語訳)

「昨今の加速する変化と混乱を背景に、2023 年には、地元の穀物経済、とくに食料システム全般をより良い方向に変えるため、さまざまなコミュニティが互いの取り組みを支援して活動しています。

今年は、私たちの生活と経済システムにおける多様性が極めて重要であるということに焦点を当てます。 農家で作家のMatthew Evansさんをお迎えし、講演いただけることを大変嬉しく思います。Evansの著書『Soil(土壌)』は、私たちの足元に存在する生物多様性を称えると同時に、私たち人類がそれを保護するための行動への呼びかけでもあります。

(今回のプログラムでは)農業と食料システムを再生するための多様な方法を探求し、このコミュニティに関わる人々の多様性を称える企画を設けました。私たちは、心を開き、新しいインスピレーションを刺激することを目的としたワークショップやデモンストレーション、講演などをおこないます。

grAiNZの目的は、文明の繁栄を可能にしてきた主食である穀物で働く人々をつなぐことです。私たちは互いに学び合い、地球とその人々に利益をもたらす食料システムを一緒に再構築するために集まります。これからの数日間、旧友との再会や新しい友人作りを楽しんでいただければ幸いです」

この案内文を見ているだけで、イベントになぜ行かなかったんだと今でも悔やまれますが、grAiNZの公式YouTubeでは、当日おこなわれた講義の様子を動画で見ることができます。

小麦の栽培について、パンを廃棄しないための施策、パンの製法や使う素材のことなど、かなり濃厚な内容ですが、とても勉強になりますし、これらからgrAiNZの活動がどのようなものかがわかるかと思います。

英語ではありますが、ぜひYouTubeを見てください。

YouTube:動画はこちらから

日々、ただパン作りをするだけでなく、生産者のことを考え、今後の未来を考え、パン職人としてどんなことができるのか。そんなことを、見直すきっかけをあたえてくれたのがgrAiNZだと思っています。

❑関連リンク
grAiNZサイト: サイトはこちらから
grAiNZインスタグラム:インスタグラムはこちらから

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Writer
成澤 聡
成澤 聡
運営サイトはこちら
パン職人になってかれこれ20年余。2012年、縁あってオーストラリアに移住。2022年12月、仲間と共にベーカリーとコーヒーロースタリーが併設した店舗をオープン。マルチカルチャーなオーストラリアの文化と人々に刺激されながら、美味しくて、楽しくて、そしてサステナブルなパン作りを日々模索しています。オーストラリアはメルボルンから、パンにまつわるエトセトラはもちろん、日々のことなどをお届けします。
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