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2022.06.30

フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.10『フランスでのヴィーガン事情』

こんにちは。

近年、ヴィーガンは世界的に注目を集めており、認知されてきたように感じます。フランスのスーパーでもヴィーガン商品が増え、気軽に購入できるようになってきています。

今回は、フランスのヴィーガン商品を紹介する前に、まず、ヴィーガンとは何なのか、ベジタリアンとの違いは?何を食べるのか?についてご紹介します。

じつは“ヴィーガン”という言葉が生まれたのは1944年。今から70年以上も前のことなんです。ヴィーガンは卵や乳製品を含む、動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者」のことを指します。

ヴィーガンは、もともと動物虐待につながるような人の食文化や産業、社会の仕組みを、人だけでなく動物も含めて地球全体がより良くなることを目的として誕生した言葉と言われています。


フランスではさまざまな宗教や食文化の違い、それに加えアレルギーの問題があるため、お店で接客をする際は、なるべく「アレルギーはありませんか?」と聞くようにしています。宗教を信仰しているかどうかは、すぐに判断ができないため、先ほどのように質問すると宗教上で食べられない物がある場合は、たいてい回答をしていただけます。

これは、お客様がお店でチョコレートを選んでいるときにあった、一幕。

お客様
「私、ベジタリアンなんだけど、このチョコレート、牛肉とか入ってないわよね?」


「え???肉?ガナッシュの中に生クリームとかバターなどの乳製品は使っていますけど」

お客様
「それならいいの!肉や魚の塊が入ってなければ問題ないわ!」


「チョコに肉なんて入ってるわけないでしょ(心の叫び)」

そんな質問、ひんぱんには無いでしょ!と思われるかも知れませんが、フランスのパティスリーではこのようなことは日常茶飯事なんです。でもベジタリアンなのに、乳製品は大丈夫なの??最初は良く分からず、ベジタリアンやヴィーガンを調べるきっかけになったのが、このお客様とのやりとりでした。

調べてみるといろいろと考え方がありますね。

ベジタリアンは、野菜を中心とした食生活を送る菜食主義者のことで、卵製品、乳製品を食べるかは、本人の判断に任せられます。一方、ヴィーガンの場合は卵や乳製品、ハチミツなども口にしません。ヴィーガンも含むベジタリアンの種類は様々で、次に代表的なものを挙げました。

-ヴィーガン(植物性食品のみを食べる)
-ラクト・ベジタリアン(植物性食品と乳製品は食べる)
-ラクト・オヴォ・ベジタリアン(植物性食品と乳製品、卵は食べる)
-ペスコ・ベジタリアン(植物性食品と魚、卵、乳製品は食べる)

などなど、他にも沢山種類はあります。

次に、なぜヴィーガンを選択する人がいるのか3つの理由を紹介したいと思います。

1.健康上の理由から
健康を気にしている人々は、健康状態の改善や長寿、疾患リスクの低下のために、肉や卵、乳製品の摂取を避けるヴィーガンとしての生き方を選ぶ場合があります。

2.環境保護の理由から
私たちがいつでも、気軽にスーパーなどで牛肉を買うためには沢山の牛が世界中で必要です。そしてその牛を育てるためには、膨大なエサ、土地、水が必要です。牛のエサは主に牧草、ワラ、とうもろこし、大豆などで、一日30~40kgを食べます。乳牛は一日に50~60Lの水を飲みます。そして世界中に15億頭の牛が存在しています。15億頭にエサを与えるためには広大な土地と、多くの食料が必要です。牛のエサを作るためにアマゾンを破壊して大豆を育てています。牛に与えるとうもろこしや大豆を人に与えればこの世から餓死がなくなるともいわれています。


その他にも牛のオナラやゲップが原因で、地球温暖化の促進要因となっています。牛の一日の排出するメタンガスが160L~320L。吐き出されるメタンは強力で、世界で排出される温室効果ガスの4%を占めます。

このような背景から、畜産業による環境への悪影響を減少させるための試みとして、ヴィーガンを選ぶ人もいます。

3.動物愛護の観点から
食べ物以外のファッション業界でも、リアルファーからフェイクファーが主流になっています。以前は、フェイクファーは安物でリアルファーが豊かさの象徴のように見られていましたが、近年では動物愛護の観点から、リアルファーの使用をやめ、フェイクファー(エコファー)に切り替えるファッションブランドも増えてきました。動物愛護を理由にヴィーガンになった人々は、動物たちが自由に生きるために、食べ物だけでなく、一切の動物性の製品を避けています。

▲草を食べるアルパカたち。アパレル業界では服の一部として毛刈りされて利用されることも

私の知り合いでヴィーガンになった人の話ですが、「なんでヴィーガンになったの?」と聞くと精肉店に訪れた時に、豚や鳥が一匹丸々吊るされているのを見て辛くなったそうです。それ以降、肉類が喉を通らなくなったようです。

自然も動物も大好きなフランス人なら、これだけ多くの人がヴィーガンになるのも納得です。

今回は、“ヴィーガン”そのものについて、かんたんな歴史背景や種類についてお話しましたが、次回はフランスのスーパー等で売られている、ヴィーガン商品を紹介しようと思います。

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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エディター兼ライター シオリ
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