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2023.04.25

食問題を伝える懸け橋に。パン職人の経験ゼロでパン屋を開業したワケ(前編) ~coboto bakery 酒井 圭一~

coboto bakeryオーナーシェフ
酒井 圭一さん
兵庫県神戸市出身。前職は、市の職員として働く。20代になって環境問題に関心を持ち始め、まずは自分の食を変えていこうと、休日を活用し有機農家巡りを始めた際に、とある小麦生産者と出会い人生観が大きく変わる。その後、独学でパン作りを行い自店を開く。パン職人でありながら食問題やパン業界についてメディアを通じて発信をする活動も行っている。
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こんにちは、chefno編集部です。

みなさんがパン職人やパティシエになったきっかけはなんですか?お店を開業された方であれば、開業したきっかけはなんですか?昔からパンやお菓子が好き、尊敬するシェフのようになりたい、自分の理想のカタチの店を開きたいなど、きっかけは様々だと思います。

今回は、世界遺産の姫路城があることで有名な兵庫県姫路市で、少し変わったアプローチでパン職人になり、開業をされたcoboto bakeryの酒井さんに、そのきっかけについてお伺いしました。

食問題を伝えていくひとつの手段としてパン職人がある

パンを焼くcoboto bakeryのオーナー酒井さん

酒井さんは、実はもともとパンが嫌いだったそうです。パン職人であれば、パン好きに違いないと勝手な想像をしていた筆者。そんな酒井さんが、パンに興味を持ち、なぜパン職人になったのでしょう。

酒井さんは、もともとパンがお嫌いだったと聞きました。パン職人としてパンを作るまでパンが好きになった理由はなんだったのでしょうか?

子供の頃に食べたパンが美味しくなくて、その時からパンが嫌いになってしまったんです。ですが、20代になりパンに興味が沸くきっかけがありました。私は、その頃に食に関心を持ち始めていて、食の根本は原料を生産する「農業ではないか」と思い、休日を活用し農家さん巡りをしていました。そこで出会った農家さんたちは、こだわりを持って農作物を生産されている方が多くて、なかには自分たちで土づくりをされている方もいました。その土を作る際に、米ぬかやモミガラなどを混ぜて「発酵」させて良い土を作られているというお話を聞いた際に、「発酵って面白い!」と思ったんです。それから自分でも色々と発酵について研究し始め、発酵を活用して作る味噌や醤油づくり、そしてパン作りをしながらさらに深く調べていました。その際に自分が作ったパンを食べた時「パンって美味しい」と思ったんです。これをきっかけに、徐々にパンへの興味も沸いて、好きになっていきました。

coboto bakeryで使用する発酵種を作るためのスターター

▲お店で使用する発酵種を作るためのスターター。発酵に興味が沸き、色々と研究されていた経験が今のパン作りにも生かされています

パンへの興味が高まり、そこから職業としてパン職人を選んだ理由はなんですか?

私が農家巡りをしている際に、兵庫県豊岡市の小麦生産者「ナカツカサファーム」さんとの出会いがありました。ナカツカサファームさんでは、パン用の小麦も生産されており、私が趣味でパン作りをしている話をすると、パン用の小麦を少しわけてくださったんです。早速、その小麦を使いパンを焼いてみると、私が今まで出会ったパンとは違って「小麦の風味をより感じる」ことに気づきました。こんなに美味しくて、風味の違う(差別化ができる)パンが作ることができるのであれば、パン屋さんでもっとこの小麦を使って欲しいなと思ったんです。それから、自分でパンを作って感じたあのパンの美味しさを伝えるにはどうしたらいいだろうと考えるようになりました。

もともと、食問題に興味を持ち始めた頃は、ゆくゆくは農業を自分でしたいと考えていました。しかし、農家で素材を生産するよりも、直接お客さんと触れ合う店舗運営の方が、生産者のことや、素材の背景や魅力が伝わるのではないかと思い、修業経験がない私ではありますが、パン職人としてお店を運営して、食問題を伝える懸け橋になろうと思い、パン職人として開業することを決めたんです。

酒井さんがパン職人になる前に出会ったナカツカサファームさんで生産されている小麦

▲パン職人になる前に出会ったナカツカサファームさんで生産されている小麦

ナカツカサファームさんの小麦をお店にある木製の石臼で挽いて一部の商品に使用

▲ナカツカサファームさんの小麦をお店にある木製の石臼で挽いて一部の商品に使用されています

 

パン職人としての知名度やネットワークが無いなか、いざ開業

自身の店を開業するステップとして、お店で何年か修業をし、技術や経営ノウハウを修業先のオーナーから学んで開業するケースが多いのではないでしょうか。筆者の私が、数々の職人の方に取材をしてきたなかでも、異業種からパン職人になったケースはありましたが、お店での修業経験ゼロという方は初めてでした。修業期間は個人によりばらつきはあるものの、5年~10年といったところでしょうか。その期間が全くない状態で、本当にベーカリー運営は順調に進んだのでしょうか。開業そして集客方法について深堀してみます。

パン業界とのネットワークがないなか、どのように開業をされたのでしょうか?

coboto bakeryのカンパーニュ

最初は、お店を持たずに通販専門店として開業して、パンの販売をしていました。私は、パン職人になろうと思ったきっかけが王道のパン職人の方とは異なっており、開業方法(通販専門から始める)も王道ではなかったと思います。

通販専門となるとお店がリアルにあるわけではなく、集客に力を入れる必要があると思いますが、どのような集客をされたのですか?

通販だけでなく、イベント出店で販売も行っていましたので、そこで買ってくださった方が通販でリピート購入されるケースもあり、ネットとリアルを活用して集客していました。また、イベントに出店することで、出店者同士のつながりもできて、他の出店者さんから「今度イベントするから来ない?」などのお誘いもあり、徐々に店を認知していただくきっかけになったと思います。

通販専門店として開業し、その後リアル店舗を構えるためにクラウドファンディングを活用されたそうですが、活用されたきっかけはなんですか?

通販とイベント出展で徐々に店を知っていただく活動はしておりましたが、実際にリアル店舗を構えるにあたり、より自分の描く事業内容を広く理解していただき、なぜリアル店舗を構える必要があるのか、その本質を開業前に伝えたかったんです。私の想いに共感してくださった方が支援してくださる、そんな流れができるのがクラウドファンディングだと思って活用しました。

とはいえ、今でこそクラウドファンディングを活用して開業というケースは珍しくないと思いますが、私がクラウドファンディングで支援募集を始めたのは2017年でした。その後は徐々にクラウドファンディング自体も世間で知られるようになっていきましたが、パン屋開業でクラウドファンディングを活用しているケースは、その当時は見つかりませんでしたので、支援者が集まるかは正直不安でしたね。

インタビューに答えるcoboto bakeryの酒井さん

クラウドファンディングを活用してみてどうでしたか?

周りからは賛否両論ありましたね。ですが、単にパン屋を開業だけでなく、「生産者との懸け橋になる」というテーマがありましたので、そこに共感していただいた方が多く、クラウドファンディングを活用して良かったと思っています。

クラウドファンディングで目標支援金額を上回り、満を持して開業。不安はありませんでしたか?

パン屋さんでの修業経験がない私のパンに本当に満足していただけるのか、もうプレッシャーしかありませんでしたね。でも、嬉しいことに、開業した当初から店の前に行列ができていたんです。店に来られたお客様とお話するきっかけが作れたことは、やはりリアル店舗の良さだと感じ、なんとか今まで続けられています。

coboto bakery前にできた行列

▲取材当日は、平日で天候があまりよくない状況にも関わらず、開業当初と変わらずお店の前にはパンを心待ちにするお客さんの列が

(前半はここまで)

今回は、酒井さんがパン職人になり開業されるまでのストーリーをお聞きしました。公務員という全くの異業種、そして修業経験が無くても、パンへの想い、そしてまたパンを通じて食や生産者の想いを伝えるという強い想いがあるからこそ開業できたケースだったのではないでしょうか。後半では、お店開業後の運営やメディアを活用した取り組みについてお話を聞いていきます。

ぜひ後半の記事もご覧ください。

 

●取材協力
coboto bakeryの外観

coboto bakery(コボトベーカリー)
住所:兵庫県姫路市梅ケ枝町873-1
電話:079-278-4571
営業日:土、日、月曜日
営業時間:11:00~16:00(パンが売り切れ次第閉店します。)
公式サイト:こちらから
公式インスタグラム:こちらから
公式YouTube:こちらから

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Writer
chefno編集部
プロモーション担当兼エディター リョウ
chefno編集部
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WEB業界に10年以上従事して、現在はchefno編集部のプロモーション担当をつとめる。コーヒーが大好き!コーヒーに合うパンとお菓子を編集作業の合間に食べるのが楽しみ。車があればどこにでも取材に行きます!
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