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2021.11.11

新商品を開発し続けて17年。ひとりのパン職人が頑張って毎月7品を開発し続ける理由

パン工房フールフール オーナーシェフ
小林資征さん
IT系の専門学校卒業後、コンピューターエンジニアとして勤務し、自分で何かをはじめたいとの思いから、パン職人の道を目指す。 大手ベーカリーで製パンの基礎を学び、約10年の修業期間を経て、2004年6月兵庫県加古川市にて独立開業。 「健康は自然の恵みから」というコンセプトのもと、素材にこだわり、栄養価や安全を意識しながら、健康的で味わいのあるパンを作っており、アイテム数は約70種類。 客層はOL、シニア、主婦、ファミリー層などさまざま。 店名「フールフール」の“フール”とは、フランス語で“窯(four)”の意味。 当時小学生だった娘さんが描いた「笑顔のコックさん」のイラストが店の看板になっています。
運営サイトはこちら

リテイルベーカリーにとって、新商品は欠かすことのできないアイテムの1つ。
ですが、1日中製造に追われているパン職人にとって新商品を考えることは悩みのタネ。

「あ~来月の新商品どうしよう」、
「最近新商品だしてないな~」、

と悩んでいる職人の方にぜひ読んで欲しい!
みなさんの悩みのタネを吹き飛ばしてくれるベーカリーが兵庫県加古川市にあります。

何と新商品を出し続けることにこだわるベーカリーなんです。
毎月7品を目標に、かれこれ17年にわたってオーナシェフが一人で新商品を考え販売し続けられているとのこと。

集客(来店きっかけ)のツールとしても、「新商品は集客のツールとしても非常に大切な要素」と語るオーナーが、17年間休むことなく開発に力を注ぐ。
そのエッセンスについてご紹介します。

 

忙しい日々を送るパン職人が、時間を惜しんでも新商品にこだわる理由

新商品を積極的に開発し始めた理由

新商品の開発に力を入れ始めた理由は、
開業当時、店舗周辺の再開発が予定通り進んでおらず、お客さんの流れが悪かったんです。
そのため、オープン1カ月後くらいだったと思います。

お店をPRするために何かできないかと日々模索していたんですよね。

自分はパン職人ですし、自分が作るパンで何か集客ができないか考えた末、
新商品を積極的に発売して、来店きっかけを作れないかと思い、その頃から取り組みを始めました。

現在では、新商品は毎月7品発売を目標に開発しています。

新商品の開発サイクルとコツを教えてください


毎月、新商品を発売してから約1週間後くらいを目途に翌月の新商品について考え始めます。
それからは、2~3週間かけて試作を繰り返し完成させ、販売するというサイクルです。

新商品を考える時のコツですが、その時に販売している商品名と値段が書かれた一覧表をひたすら眺めます。
そこからまず”終売商品”を5品ほど決めます。

そのあとは、その時思いついた素材や商品名などの単語を片っ端からその表に書き込んでいきます。
旬の素材や、問屋さんが紹介してくれた材料、気になっている味わいなどなど、さまざまなキーワードの組み合わせが、
新商品につながっていきます。

小林さんが実際に使っている商品リストを見せてもらった。 パンの種類や素材の名前など、アイデアの断片があちこちに書き込まれている

どんなところから新作の発想を得ていますか

新作のインスピレーションは本やインターネットから得たり、野菜を仕入れに行く農協で旬のものを見て考えたりもしますね。
問屋さんからの新商品情報や過去の「フールフールNews」(お店で発行しているチラシ)も参考にしています。

日々の業務が忙しく、本当は他のベーカリーへの視察もしたいのですが、なかなかできていません…。

新商品を考える時には、季節感のある旬の果物や野菜を使うことを意識していますね。
彩り良く仕上がるように、組み合わせにも工夫しています。

季節のイベントやその時のトレンドは多少気にする程度で、それは必ずしも優先事項にはしていません。

試作品のうち、新商品として採用されるのはいくつくらいですか


パンの形や味わいのバランスを考えて商品を組み立てると同時に原価計算もしています。
ですので、試作したものはほとんど採用になりますね。

新商品開発では、
今ある素材や構成を上手く生かして、早く新作が製造できるように計算をする必要もあるため、全ての商品をゼロから生み出すわけではなく、
もともとあった商品の一部を変えたり、使っている生地を活用する
“バリエーション商品”
も取り入れています。

1品だけに集中してしまうと新商品全体の構成バランスが崩れてしまう為、
総菜、サンド、菓子系など、
カテゴリー毎にかたよりが無いように考慮するのも大切。

試作した商品は実際に販売してみて、お客様の反応を確かめつつ次回の新商品に活かすようにしています

-毎月、新商品を考え続ける為にどのようにモチベーション維持していますか
なんといってもお客様に喜んでいただけることが一番のモチベーションじゃないですかね。

毎年同じ時季に販売しているパンについて、「ことしはいつ売り出すの?」と聞かれることも多いですし、
パンで季節を感じて下さるお客様もいて、それが励みになっています。
また自分を追い込んで新商品を考え続けることは、自分への挑戦にもなっています。

新しいものを考えることで商品やお店の個性にもメリハリがつきますし、生活にも張りがついてきます。
やめようと思った時も何度もありましたが、「これだけはやろう!」と思って続けてきました。

 

長年発行し続けてきたチラシは、お店とお客さんをつなぐ架け橋

お店で毎月発行している「フールフールNews」について教えてください

お店をオープンした頃は、今のようにSNSも盛んではなかったため、お店と商品を紹介するために紙のチラシとして「フールフールNews」というものを作りました。

2021年9月号のフールフールNews

 

当時は、自分で作ってポスティングしていたのが懐かしいです。
新商品を積極的に発売するようになってからは、内容も新商品の話題が中心になり現在に至ります。
当時は、文字ばかりで写真も載っていませんでしたが、204号から紙面をカラーにしました。
カラーにしたことで印象が変わり、お客様からも大好評です。

今後は、商品の紹介だけでなくハード系のパンの食べ方などご自宅でのパンの楽しみ方についても提案もしていきたいです。

このチラシを楽しみにされているお客様もいて、来月のチラシはいつ発行されるのと聞かれることもあり、このチラシが店とお客様をつなぐ懸け橋になっていると思うと嬉しいですよね。

 

看板商品と新商品から定番商品に昇格した不動のエースを紹介

お店の看板商品や売れ筋のパンについて教えてください

お店の看板商品は「レトロバゲット」です。
全粒粉を使用した低温長時間発酵のバゲットがイチオシです。

しっかりした味わいと深い香りが特徴で、クリームチーズや生ハムと食べるのがおすすめですよ。

人気商品は、「クランベリーカマンベール」、「シャキシャキレンコン」です。

この2商品は、元々新商品として過去に販売していた商品なのですが、お客様から再販のリクエストが多く、定番商品にした商品で、今もなお不動のエース商品です。

「クランベリーカマンベール」は、
クランベリーとチョコチップを練り込んだ生地にカマンベールチーズを包んで焼き上げています。
甘みと塩味のコントラストが良く、女性に人気の商品です。

そして「シャキシャキレンコン」。

細長く伸ばした生地にバジルソースを塗り、輪切りのれんこん、ハム、ほうれん草、チーズをトッピングして焼き上げます。
れんこんのシャキシャキとした食感と、バジルの爽やかな味わいが特徴です。

新商品で人気の商品と言えば、具だくさんな惣菜パンです。

新商品のアレンジの1つとして、先ほどお話しました通り、ベースのパン生地はそのままで具材が毎月変わる新商品です。
具材が沢山のってボリューミーなのが特徴です。

 

フールフールのこれから、今後のお店のビジョンは

シュークリームやワッフルなどのお菓子を揃えたり、ハード系のパンをより楽しんでもらえるように、惣菜系(デリ)の販売もしていきたいですね
そしていつか野菜作りにも挑戦して、自分で作った野菜でパンやサンドイッチを作るのが理想です。
さらに将来…静かな場所で「古民家カフェ」をするのが、大きな夢です。

 

取材協力

パン工房フールフール
住所:兵庫県加古川市平岡町新在家1595-12(GoogleMapで見る
TEL:079-422-2737
営業時間:9:00~19:30(土曜日のみ8:30~19:30)
定休日:日曜日・月曜日
☞公式ブログ

※この記事は2021年7月に取材した内容になります
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Writer
宮本優子
宮本優子
運営サイトはこちら
パンの専門学校卒業後、製粉会社の技術職として勤務。青年海外協力隊でアフリカ・ケニアに派遣され、専門学校講師として製パンを広めた。その後、パン食文化を学ぶために渡仏しパン・チーズ・ワインの製造・販売を行う。現在、フリーランスでパンのメニュー提案やパンニュース社のライターとして活動している。
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