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2024.02.13

店舗を持たない運営。SNSから広がった犬モチーフのお菓子が話題「Maison terrier(メゾン・テリア)」

犬型のクッキー
Maison terrier
横尾かなさん
美術大学を卒業後、販売職で働いていたときに趣味でやっていたお菓子作りをSNSに投稿し始める。その後、東京都にある「ごはんのようなおかしの店フードムード」に勤務し、オンラインショップで販売するための商品撮影の手伝いで撮影のスタイリングについて学ぶ。横尾さんが投稿する犬モチーフのお菓子をSNSで見たイベント担当者からの誘いをきっかけに自身のお菓子を販売するイベントに出店するようになり、2023年2月に独立。現在はイベント出店のほかに委託販売店への卸しやオンラインショップでの販売をしている。
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現在、数多くのSNSツールがありますが、情報収集にそれらを活用する方が多いのではないでしょうか?

筆者も気になるお店を調べる際、お店の公式ホームページではなくSNSから実際に訪問した方の投稿を見て情報を得ることがほとんどです。今回は、趣味で始めたお菓子作りの投稿がSNSで話題となり、イベント出店から委託販売、本の出版まで活躍の場を広げているMaison terrierの横尾さんに、気になるあれこれをお伺いしました。

犬モチーフのお菓子が人気に。インスピレーションをカタチにする方法

犬モチーフのお菓子を作ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

横尾さん
「犬はもともと好きだったんです。社会人になって接客のお仕事をしていた時、子供のころから好きだったお菓子作りを趣味として再開しました。その中でもメレンゲで犬をかたどったクッキーを作ったとき、周りに好評だったのが最初のきっかけです。このメレンゲクッキーはいまでもよく作るメゾンテリアの代表作で、それぞれ少しずつ違う表情の豊かさはメゾンテリアのお菓子の特徴だと思います。

基本的には先にお菓子の種類を決めてから、犬種を考えています。例えば、『モンブランのくるくると絞られたクリームが犬の毛並みになるな』と思い、コモンドールというモップのような犬を作りました。お菓子を見て『ここに目をつけたら犬になるな』とか、『こういうパーツを付け加えると犬になるかも』ということを考えながら形にしていきます。

作っていて飽きることがないよう、自分自身が楽しいと思えるものを作っています。基本的なレシピはあるのでそこからアレンジしたり、新作を作る時はレシピ本を参考にして分量や甘さを自分なりに調整したりしています」

犬型のモンブラン

▲コモンドールをモチーフにしたモンブラン (提供:横尾かなさん)

実店舗を持たない運営、その始まりは?

横尾さん
「2022年7月頃、母が営んでいるドールショップのスペースでメレンゲクッキーなどの焼き菓子を初めて販売しました。そのときは、知り合いやインスタグラムのフォロワーのみを対象とした限定的な販売でした。それ以前から趣味で作った犬モチーフのお菓子をインスタグラムに上げていて、それを見たハンドメイド作家さんを集めてイベントを主催されている方に出店のご依頼をいただき、商業施設としては初めて新宿のマルイさんで同年の12月に販売を行いました。

あくまで趣味としてお菓子作りをしていたので、当初から実店舗を構えたいという考えはありませんでした。販売もインスタグラムを見てくださっている方に『せっかくなら自分が作ったものを食べてもらおう』という気持ちで始めたので、いまも実店舗を構えるつもりはありません。私のお菓子を求めてくださる方がいるかぎり、『ネット販売やイベント出店や委託販売という形でお菓子を提供し続けよう』という気持ちでやっています」

犬型のお菓子をつくるパティシエ

▲メレンゲクッキーにアイシングで犬の目をつけている様子

仕事のペース(スケジュール)はどんな感じでしょうか?

横尾さん
「休もうと決めないとなかなか休めないので、1か月の中で初めに休みを確保してから、仕事のスケジュールを決めます。月に2回を目安にイベントに出店して、それ以外の期間は、オンラインショップや委託販売のお店へ納品するお菓子作りとその発送準備を行っています。ありがたいことに、今は2024年3月ごろまでイベントの出店予定が入っています。今のところは東京都内のイベントが中心ですが、機会があれば他県でのイベントも是非やってみたいな、と思っています」

今回、取材のために訪問したのは横尾さんのアトリエ。仕事場所は主にこちらでしょうか?  

「はい。お菓子を販売するために、まずアパートを借りて保健所の許可を得て、製造のためのアトリエを作りました。ここは完全にお菓子作りのみをする場所で、お菓子の材料や在庫は、業務用の冷蔵庫と小さな冷凍庫に収まる範囲でストックしています」

お菓子を作るパティシエ

▲アトリエ内の様子

お菓子はもちろん、包装もとてもかわいくて工夫されていますね

横尾さん
「ロゴやイラストは美術大学時代の友人に依頼をして描いてもらっています。パッケージなどは自分でイラストレーターでデザインして出力しています。手作り感が残るように工夫しています」

クッキー缶

▲取材時にオンラインショップでの販売に備えて試作されていたクッキーの詰め合わせ。缶に描かれているかわいい犬の絵はイラストレーターKyoko Komodaさん作

インスタグラムのフォロワー4.2万人!(2024/1/29時点)SNS時代のいま、そのコツを聞いてみました

インスタグラムで投稿されているお写真はどれも素敵ですが、そのテクニックはどのように学ばれたのですか?

横尾さん
「美術大学を卒業してから、1年間アパレルの販売員をしたあと、料理家のなかしましほさんのオンラインショップ『フードムード』で、通販のメンバーとして写真撮影を手伝うことになりました。元々はカフェスタッフとして入社したんですが、ちょうどその時期にコロナの自粛期間になってしまって、店舗の営業ができなくなったんです。撮影時のスタイリングはその時に自然と学べたので、結果的にとてもいい経験をさせてもらったなと思っています。写真は本格的に習ってはいないんですが、昔から好きでよく撮っていたのと、美術大学でも作品や課題でなにかと写真を撮る機会が多かったので独学で身につけました。メゾンテリアのインスタグラムの写真は、ミラーレスの一眼レフで撮っています」

写真を撮る際とSNS投稿で気を付けているポイントはありますか ?

横尾さん
「かならず自然光で撮るようにしています。これは、なかしましほさんにもよく言われていたことです。アトリエはとても日当たりが良く、撮影に最適なので、きれいに撮れる時間帯に撮影をしています。あと、投稿の言葉遣いに気を付けています。やわらかい印象を持ってもらえるよう、表現の仕方や言葉のチョイスは常に意識しています」

犬型のお菓子
店舗を持たなくても、活動の幅が広げられる

横尾さん
「ブランドを始めてからまだ1年と少しで、こんなにたくさんの方に自身の発信を見てもらえているのが自分でも半信半疑のまま、忙しくさせてもらっています。イベントなどの出店もインスタグラムを見たという担当の方にお声がけいただくのがほとんどなので、SNSの影響力というのはすごいな、と改めて感じています。

お友達から教えてもらった、プレゼントでもらった、という方が次にまた購入してくれて、私のお菓子をすきと思ってくれる方からどんどん広がっていって、お仕事に繋がっています」

▲2023年12月14日には、お菓子の本「My Little Dogs メゾン・テリアの犬モチーフのかわいいお菓子」を出版

取材を終えて

取材中お話ししていても、お菓子作りがすき、という純粋な気持ちが伝わってきました。

SNSで人気になるには、文章や写真のテクニック、内容やターゲットも明確にしてやっとたくさんの人に見てもらえるイメージがある筆者ですが、それよりも自分のすきを確立させることがなにより大切なことだと、横尾さんのお話を聞いていて感じました。

自分のブランドを持つ=実店舗を構えるのが一般的ですが、それには立地の悩みや営業に必要な家賃や人件費等の費用が伴います。コミュニケーション要素の強いSNSというソーシャルメディアを使って情報を不特定多数の人に発信し、徐々に自社商品のブランド力を高めていくのも、時代にそった運営方法ではないでしょうか。

●取材協力
Maison terrier
オンラインページ:サイトはこちらから
インスタグラム:インスタグラムはこちら


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Writer
chefno編集部
エディター兼ライター シオリ
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chefno編集部
エディター兼ライター シオリ
飲食店勤務を経て、現在は輸入商社で働くワイン狂。
「レモン」と名の付くメニューと出会ったらオーダー必須。
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