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2023.03.17

オーストラリアからつづる!パティシエ通信 by永田 真由美Vol.06『将来のパティシエ・パン職人を育成。講師としてのお仕事を紹介』

製菓学校の講師を務める永田さん

こんにちは。

シドニーは、ついこないだまで夏真っ盛りでしたが、ここ数日は日が落ちるのも早くなり、夏の終わりを感じ始めました。

今回は、私がオーストラリアで製菓学校の講師になるまでと、講師のお仕事についてお話します。

私がオーストラリアに住み始めてもう10年が経ちます。最初は、バケーションでオーストラリアを訪れ、色々とご縁があり現在に至ります。元々フランスで修行をし、フランス菓子一本でやってきた私にとって、「フランスの文化や料理のように心から惹かれるものがオーストラリアにあるのかな?」という疑念を持っていたのが正直なところ。ですが、住めば都(笑)なんです。オーストラリア人は、何でもオープンに受け入れてくれる気質があり、そして何よりも彼らから感じる(オーストラリア人の)エナジー。そこに、フランスとは違う可能性と心地よさを感じたんです。

そんなこんなで、10年前にオーストラリアで新たなパティシエ人生がスタートしました。私は、オーストラリアに住み始めた当初から、将来パティシエやベイカーを目指す学生たちの育成に力を注ぎたいと考えていました。ですが、講師として学生たちを教育するには、取得しなければならない資格があります。もしかするとこの記事をご覧いただいた方で、自分もオーストラリアで講師になりたいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、資格取得から講師になるまで、私の経験をもとにご参考にしていただけたら幸いです。

 

Step①教育者として必要な資格「Certificate IV Training and assessment」

オーストラリアで教育に携わるためには、”Certificate IV Training and assessment” という資格を取得する必要があります。

この資格取得を通じて、パティシエだけでなく企業での評価者、講師を目指す方などが、職場や学校などで人材育成、適切な評価ができるように必要な基礎スキルを学ぶといったものです。私がこの資格取得のために受講した授業では、企業のマネージャークラスの方や、次のキャリアを目指す消防士さんなどもいました。

このように資格取得を目指す方々は様々で、既に働いている方が取得を目指すケースも珍しくありません。そのため、仕事をしながら自分のペースで勉強ができるように、取得コースも複数あり、自分が勉強しやすいコースを選択できるようになっています。私の場合、当時パティスリーで働いていたので、取得に向けて勉強をするには仕事が終わった後や休日を利用する必要がありました。そこで、学習時間の調整がしやすい「マイペースプラス」というコースを選択しました。

“Certificate IV Training and assessment”の詳細についてはこちらから

「マイペースプラス」での資格取得までの流れはこんな感じです。

対面式授業:5日間受講

自主勉強※対面授業終了後

課題提出とプレゼンテーション

登録から18ヵ月以内※に勉強を行い、課題提出とプレゼンテーションをする必要があります。
※選択コースに関係なく課題提出とプレゼンテーションは18ヵ月以内にする必要あり

対面授業では、英会話で使われるフランクな英語とは違って、論文やプレゼン等で使う学術的な英語が使われることもあり、私の英語力では他のネイティヴの人に比べて理解するのに3~5倍の時間がかかったと思います。もちろん、質問などに対して回答もしなくてはいけないので、頭の中は常にフル回転でした。

5日間の授業が終わり、その後は自主勉強を開始。当時働いていたお店で10~12時間の仕事を終えた後、睡魔に襲われながらも一日3時間の勉強を行う日々が続きました。

最終の課題提出を無事に終え、プレゼンテーションでは「お菓子の教育」をテーマにしたため、思っていたよりもスムーズに進めることができ、無事に資格を取得することができました!

 

Step②働きたい学校にて書類選考と実技試験

資格取得が完了すれば、次は自分が働きたい学校へ志願書を出すことができます。場合によっては書類選考と実技試験が待っています。私は、ル・コルドンブルー・シドニーに志願書を出し、書類選考と実技もパスすることができました。

この2つのStepをクリアすれば、講師として働くことが可能になります。Step①の資格取得は、パティシエとしての知識や技術とは違う勉強や英語の理解が必要になり大変でしたが、それさえクリアすれば、あとは今までの経験を活かすのみです!

 

素晴らしい指導者との出会い

講師になったばかりの時は、パティスリーの仕事が休みの日に授業をし、徐々に教育者としての仕事を始めていきした。その当時、学校の製菓部門の責任者をやりながらクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーやイタリアン・ペストリー・カップに現役で出場していた情熱的なシェフAndre Sandison先生と一緒に働く機会がありました。私はフランスにいた際にも、Ecole International de patisserie Olivier Bajard で、MOFであり学校経営者でもあるOlivier Bajard(オリヴィエ・バジャール)氏の元で助手をしていた経験があり、Andre 先生やOlivier氏という素晴らしい指導者の元で勉強しながら仕事をさせていただいたことは、パティシエとして、そして教育者として非常に素晴らしい経験になりました。

 

講師としての仕事はどんなことをするの?

ここでは、私の仕事内容についてご紹介します。まず、学校でのクラスは以下の4つに分かれます。

  • Basic(基礎)
  • Intermediate(中級)
  • Superior(上級)
  • Advanced diplomat(修士コース)

どの授業も、基本的には実習と講義から成り立っていて、私は主にBasic, Intermediate, Superiorの実習で講師をしています。

授業内容は、以下のような流れで進めます。

〇授業前半(2時間半)
お題となるお菓子があり、そのお菓子の歴史や技術的なポイントを、デモンストレーションをしながら説明し、最後には私が作ったお菓子を全員で試食します。

製菓学校の生徒にデモンストレーションをする永田さん

▲マカロンをテーマにデモンストレーションをする私

デモンストレーションで作成したマカロン

▲デモンストレーションで作成したマカロン

〇休憩

〇授業後半(3時間半)
生徒たちは、前半の授業で私が見せたデモストレーションを元に、3時間半で一人ずつお題のお菓子を作り上げます。私はサポートをしながら、出来上がったお菓子のフィードバック(評価やアドバイス)を生徒たちにします。

次の写真は、今までの授業で生徒が制作した作品の一部です。

製菓学校の生徒の作品

製菓学校の生徒の作品

カリキュラムには練習日とテスト日があり、練習日はもちろんテストに向けての注意点や大切なポイントを話しながら授業を進めます。テスト実施後は採点の仕事があるのですが、私は自宅ですることが多く、最近は、オンラインで採点ができるようになり、随分と仕事が楽になりました。

ちなみに、私が担当しているいくつかのクラスの中で、最後のクラスの授業が終わるのは夜の10時!その後でちょっとした事務仕事をしていたらあっという間に11時になっちゃいます(笑)

こんな感じで、私は週に2~3日学校で講師をしております。いまは講師として次なるステップを目指し、別のクラス「Advanced diplomat」の授業ができるように勉強をしています。

今回は、私がオーストラリアで製菓学校の講師になるまでと、講師のお仕事についてご紹介しました。実は、私は講師だけでなく、コンサルタント業もしており、個人事業主としてMimi’s Pastryの代表も務めております。こちらの詳しいお仕事内容は、また次回の記事でお話しできたらと思います!

では、また!

 

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Writer
永田 真由美
永田 真由美
運営サイトはこちら
お菓子の道まっしぐら20年とちょっと。 出身地の広島から、フランス、シンガポール、現在オーストラリアでパティシエールとして情熱を持ってお菓子を作ってます。現在、ル・コルドルンブルーの製菓部門の講師兼、2019年からは小さな会社「Mimi's Pastry」を立ち上げ、コンサルタントとして活動しています。
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