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2022.06.03
フランスからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 芽衣 Vol.25『私が敬愛するM.O.Fリシャール・リュアン氏について』

こんにちは。

今回は、かねてから日本のブーランジェの皆さんにお話ししたいと思っていた、私が大好きで、心から尊敬しているM.O.F ブーランジェ「リシャール・リュアン氏」のお店をご紹介したいと思います!

オーナーであるリュアン氏は、フランス・ロワール地方のアンジェに「Boulangerie des Carmes(ブーランジュリー・デ・カルム)」と「Boulangerie Corneille(ブーランジュリー・コルネイユ)」というお店を2店舗構えています。私は3年前から両店舗のスタッフとしてお世話になっています。

店名のCarmes (カルム)と、Corneille (コルネイユ)の由来は、お店のある“通りの名前”から来ています。

フランスでは、お店を運営しているオーナーが自分の名前を売るためにも“自身の名前”を店名に掲げるブーランジェやパティシエが多いです。ですが、リュアン氏は、M.O.Fという権威ある称号があるにも関わらず、自身の店に「通りの名前」をつけるところにとても謙虚さを感じます。

リュアン氏や、彼の運営するブーランジュリーに、私が虜になった12個の要素があります。
①リュアン氏の素晴らしい人間性
②シンプルで、ミニマリスト
③全ての人は平等であるという考えに基づいた行動
④圧倒的にパンが美味しいこと
⑤オリジナル製法(伝統的な製法に効率化・高クオリティを融合)
⑥全ての材料へのこだわり(小麦粉・バター・果物など)
⑦厳しいルールの中でも、喜びと楽しさを持って仕事をする姿勢
⑧従業員の働き方を常に考えている
⑨個性的でとても素晴らしい店舗づくり
⑩環境保護を配慮した包材を使用する
⑪お客様との距離感が近い
⑫フランスパン文化伝承の概念

など、実はまだまだあるのですが、厳選してもこんなにたくさんあります。

ご紹介した要素のなかから、特に私がお伝えしたい箇所を詳しくご説明していきます。

❏『圧倒的にパンが美味しいこと』について
パンの食べ歩きが趣味である私は、日本(主に関東エリア)やフランスで美味しいと言われるたくさんのパン屋さんに行きました。そこからの学びもあり、自身でも常に美味しいパンをお客様にお届けしたいという想いでパンを作っています。ですが、3年前に初めてリュアン氏のお店で働き始め、同氏が作るパンを食べた時に、私の身体中に衝撃が走りました!「えっ!こんなに美味しいバゲット、今までに食べたことがない!!これほどまでにバターの香りが感じられるマドレーヌを初めて食べた!」と感動しました。しかも最初だけでなく、私がリュアン氏のお店で毎日働いているあいだ、いつ食べても同じ感動がありました。同氏がすべての材料と製法、生地の扱い方など、細部に至るまでこだわり、製造しているところをそばで見ていると、この「美味しさ」が生まれてくる理由が分かってきました。

▲リュアン氏こだわりの商品。厳選された材料で作るパンはどれも本当に美味しいです

▲オーガニックのライ麦100%のセイグル・オーヴェルニャ

▲夏の時季には地元のビオのプルーンを使ったアンジェ名物の Pâté aux prunes (パテ・オ・プリュン)が大人気です

私が出した答えは「誰になにを言われても、己の考えに素直に情熱を持ってこだわり続けること」「自分が守りたいと願う部分は(パン作りにおいて)妥協しないこと」。根本的なことかも知れませんが、こんなにも商品の味や、お店づくりに影響を与えるんだと改めて教えてもらいました。

 

❏『個性的でとても素晴らしい店舗づくり』について
リュアン氏のお店には、厨房と売り場の間に壁がほとんどありません

▲写真手前(左)が商品陳列棚。奥に写っているオーブンとの境界線がありません!

商品棚、ヴァンドゥーズ(販売員)、オーブン、ミキサー、パリジャン(乾ホイロ)、成形台と、パンに関わる全てが、お店に入った瞬間に視界に入るようになっています。

▲存在感のあるパリジャン(乾ホイロ)。バゲットもクロワッサンも、この乾ホイロで発酵をとります。発酵の見極めは電気ホイロではないので職人の腕が問われます

お客様が一歩お店に足を踏み入れると、小麦粉やバター、お砂糖の甘い香りと、パンを作る機材と、常に作業をしている職人たちの躍動感あふれた店内が目の前に広がります。まるで、別世界にきたような気分にさせてくれます。

▲店内の中心にあるのがレジ棚です。オープン時間には所狭しと様々なパンとお菓子が並びます

実際にお客様からも「ここのお店!本当に素敵!」という嬉しい声をいただくことが多いです。

 

❏『シンプルで、ミニマリスト』について
リュアン氏の数あるこだわりのひとつでもある「ミニマリストである姿勢」。パンを作る機材は最小限で、オーブン、ミキサー、めん台、シーター(手動)、分割機、冷蔵室のみです。冷凍庫は置いていませんし、フランスのブーランジュリーのほとんどで使われているバゲット成形機「バゲットモルダー」もありません。

▲私も大好きなダブルアームのミキサー。手ごねをするように生地を作り出してくれるこのミキサーは最高です!!

▲年季の入った分割機

お客様の目の前でバゲットを手成形することについてリュアン氏は「お客様に(特に子どもたちに)パンへ興味を持ってもらい、その作業こそが私たちブーランジェだからこそ生み出せる美しい動作だ」と仰っていました。

▲リュアン氏のお店で、バゲットの成形をする私。お客様からも非常に近い場所で作業をしています

私は、完璧な人間は存在しないと思っています。むしろ欠点があるからこそ人として味があり、長所が輝くと思っています。リュアン氏も例外ではなく、ときに些細なことで怒り、厳しい面もありますが、人間味に溢れ、自身の確固たる哲学を持って、優しく丁寧にスタッフに接してくれます。

▲写真左にいるのがリュアン氏。この日はスタッフがお誕生日で、皆でお祝いの乾杯をしたいと仕事終わりに駆けつけてくれました!

スタッフに対しても本当にあたたかい方で、その哲学に共感する私のようなブーランジェは「いつかリュアン氏のようになりたい」と憧れと尊敬の念をモチベーションにして、日々精進を重ねています。

私は開業にむけて準備中で、リュアン氏のお店がスタッフとして働く最後の店舗になります。まだまだ学べる環境にあるうちに、同氏からブーランジェとして、さらには人として大切な事を教えて貰っている事が本当に幸せであると日々実感しています。

ここに書ききれなかったリュアン氏の作るパンとお店の魅力を、いつかフランスに来られる際に、ぜひ実際にお店に行って実感してみて欲しいです!!

 

●About Shop
❏Boulangerie des Carmes
住所:21 bd Henri Arnauld, 49100 Angers
 
❏Boulangerie Corneille
住所:14 rue Corneille, 49000 Angers
 
公式Instagram:公式アカウントはこちらから

 

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成澤 芽衣
成澤 芽衣
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2017年 フランス全国バゲットトラディションコンクール 優勝。 現在はフランスでフリーランスのパン職人として活動する傍ら、日本でのイベントや、東京にあるベーカリーでパンの監修をさせていただいております。 フランスから私なりの視点で、パンのこと、普段のことなどなど。 生のフランス情報をお贈りします。
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