こんにちは。
フランスには各県に「ブーランジュリー・パティスリー連盟(Fédération départementale de la boulangerie et pâtisserie)」、さらにそれらを統括する「全国ブーランジュリー・パティスリー連盟(Confédération Nationale de la Boulangerie-Pâtisserie Française)」があります。
今回、「ブーランジュリー・パティスリー連盟」主催で、10月に開催された「FÊTE DU PAIN (パンの祭典)」に参加してきましたので、その様子をお伝えします。
このイベントでは、クロワッサン・バゲット・ブリオッシュやピエスモンテなど、カテゴリー毎にコンクールが開催されます。県大会レベルのコンテストということもあり、各選手が作った作品のクオリティはとても高いです。コンクール出品作品は一般公開もされるので、通りすがりの一般の方々も興味津々で作品を見られていました。
また、コンクールと並行して、同連盟に加入しているパン職人達が有志で集まり、朝から晩までひたすらパンを作ります。そのパン達は会場内の売り場に並べられ、これもまた有志で集まったヴァンドゥーズ達が素敵な笑顔でお客様に販売してくれます。
今回、私は有志で集まったパン職人の一人として参加しました。参加をしたブーランジェ達は、パン作りに熱い想いを抱く職人ばかりなので、彼らと一緒にパンを作ることは、体力的にきつくても「楽しい!」という想いが先行します。ブーランジェ達はみな、前日遅くまで生地の仕込みをし、翌早朝からコンクール作品を作り、それが終わると販売用のパンをせっせと作ります。とてもハードスケジュールですが、皆さん楽しそうです。
私たちは、国も違えば、食生活・教育など全く違う文化を持ちます。この瞬間にこの場所に集ったパン職人たちに共通している事は、フランスのパン文化への敬意だけです。ただ、それさえ有れば国籍など関係なく、この楽しく素晴らしい時間を共有できるのだと実感しました。
今回このイベントへの参加を私に提案してくれたのは、アンジェ市内にある「ラ・ドレエンヌ(La Doréenne)」と言うブーランジュリーのオーナーシェフ、アントニー・ガブリオ氏です。彼自身精力的にコンクールに参加しており、従業員の指導にも非常に熱心。アントニー氏の元で働く若きブーランジェ達のほぼ全員が、毎年行われる県コンクールで金賞、銀賞を総なめにしています。
アントニー氏との出会いは、2017年のバゲットコンクール。同じ出場者であり、ライバルでした。それから5年、様々なパンのイベントに共に参加する間柄になりました。ライバルとして出会いましたが、今ではパンに対する情熱を共有しあえる大事なブーランジェ仲間の1人になっています。そしてなんと今大会の「県内ベスト・ブーランジュリー(La Meilleure Boulangerie)」の第一位に、アントニー氏のお店「ラ・ドレエンヌ(La Doréenne)」が選ばれました。彼と、ヴァンドゥーズである奥様の日々の努力が評価された事は、友人である私にとっても、とても喜ばしい出来事でした。
その場で焼き上げたパンを、地元のお客様に購入していただき、「美味しい!」の言葉を直接聞ける事。そんな当たり前の様で、実はとても貴重な時間を過ごせる事への感謝を噛み締めながら、イベントを目一杯楽しみました。