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2024.10.23

パンの世界大会「第10回モンディアル・デュ・パン」日本代表選考会レポート!

モンディアル・デュ・パン

製パン技術の世界一を決める大会「モンディアル・デュ ・パン」の日本代表選考会が、10月16日から18日にかけて、インテックス大阪で開催されたFABEX関西2024において行われました。
今回厳しい書類審査を通過したのは「Y.P ブーランジュリーヤナガワ」柳川玖哉(ひさや)シェフ、「クーロンヌジャポン」鹿野大介シェフ、「ラブレド」高木弘文シェフ、「ベーカリーバンク」須貝文智(ふみと)シェフの4選手。
晴れて日本代表の座を獲得したのはどの選手なのか、chefno編集部が大会レポートをお送りします。

「職人」としての資質が試される厳しい審査

2年に一度開かれる、アンバサドゥール・デュ・パン*が主催するパンの世界大会「モンディアル・デュ・パン」。第10回を迎える今回の選考会では、4人の実力者たちが日本代表の座を賭けて競い合いました。

【Les ambassadeurs du pains(レ・ザンバサドゥール・デュ・パン)】
フランスパンの正統な技術の継承と美味しく健康によいパンの普及を目指して設立された協会。世界各国から代表チームがフランスに集まり、製パン技術の世界一を決める大会のひとつ「モンディアル・デュ・パン」を主催する。

モンディアル・デュ・パン

▲柳川玖哉(ひさや)シェフ(Y.P ブーランジュリーヤナガワ)

モンディアル・デュ・パン

▲鹿野大介シェフ(クーロンヌジャポン)

モンディアル・デュ・パン

▲高木弘文シェフ(ラブレド)

モンディアル・デュ・パン

▲須貝文智(ふみと)シェフ(ベーカリーバンク)

この選考会では、選手たちは「日常のパン」、「レスペクチュス・パニス*」、「クロワッサン」、「栄養パン」といった多種多様なパンを競技時間内に制作。パン作品は見た目や味だけでなくサイズや重さなどもチェックされ、また、制作を終えた後のブースの片付け・清掃までも審査対象になっており、まさしく「職人としての仕事ぶり」が審査されるコンクールです。

【レスペクチュス・パニス】
1キロの小麦粉に対してイースト1グラム、ルヴァンリキッド1グラム、低塩分で16℃~18℃の低温で長時間発酵させ短いミキシングでつくる、アンバサドゥール協会が提唱する古くからの製パン法。通常のバゲットなどと比べて酸化が抑えられ、小麦の旨味がより感じられるのが特徴。

モンディアル・デュ・パン

▲バゲットのサイズが規定内に収まっているかチェック

審査員は業界の大ベテランや世界チャンピオンの職人たちが務め、パンの見た目や味などを厳しく審査します。各選手はそれぞれのパン作品についてプレゼンテーションを行い、審査員にアピールします。栄養パン部門についてのプレゼンテーションではどの選手もしっかりと勉強されている様子で、業界内での意識の高まりを感じました。

モンディアル・デュ・パン

▲試食審査の風景

モンディアル・デュ・パン

▲高木シェフ(ラブレド)のバゲット

M.O.F職人もフランスから来日

モンディアル・デュ・パンの選考会では日本全国からアンバサドゥール・デュ・パンのメンバーが集まり、パン職人同士の交流が活発になることも大きな特徴です。

モンディアル・デュ・パン

▲ブーランジュリー グルマンの池田シェフ

ブースの一角では、代表チームの応援資金のために、日替わりでアンバサドゥールのパン職人たちが共同作業でパンを焼いてオリジナルトートバッグとともに販売。他のシェフたちの技術を目の当たりにしながら共に作業をすることは、若手職人たちにとって格好の勉強の機会でもあります。
また、今回はフランスから二人のM.O.F(フランス国家最優秀職人)が来日。本場フランスのパン作りの技術を惜しみなく披露してくれました。

モンディアル・デュ・パン

▲M.O.Fのアレクサンドル・ローマン氏(左)とトマ・プランショー氏(右)

大きなルール変更

今回の選考会から、世界大会でのルール変更に伴い大きなルール変更がありました。
それはコンクールの大きな部門のひとつであるピエス作品において、事前のパーツ制作ができなくなったこと。これまでは事前に制作しておいたパーツを選考会当日に組み立てるだけでよかったのが、すべてのパーツを競技時間内で制作、組み立てなければならなくなりました。
これには多くの選手が苦労した様子で、焼き上げたパーツが規定サイズを超えてしまい、その場でデザインの変更を強いられるという場面もありました。

モンディアル・デュ・パン

▲アシスタントとの連携も優勝への大きなカギ

モンディアル・デュ・パン

▲柳川シェフ(Y.P ブーランジュリーヤナガワ)は作業台の下に番重を引き出しのように配置して作業効率を工夫

各選手のコンクールにかける想いは強く、どの選手もお店を休んで大会に向けて練習をするなど、多くの犠牲を払ってこの選考会に挑戦しています。その表情は真剣そのもので、皆黙々と、時折アシスタントを務めるスタッフとコミュニケーションを図りながら競技を続けていきます。選手たちの姿を見守る審査員たちのなかに、前回大会日本代表の高橋佳介シェフ(パンフロレゾン)の姿がありました。

モンディアル・デュ・パン

▲第9回世界大会日本代表の高橋シェフ(パン フロレゾン)

高橋シェフ
「モンディアル・デュ・パンは僕にとっては特別な大会ですね。国内選考会でタイトルを獲ることができたのが独立するきっかけになりましたし、それがなければそのまま仕事を続けて今もコンクールに挑戦し続けていたと思います。モンディアルで180度人生が変わったと言ってもいいと思います」

結果発表

モンディアル・デュ・パン

長時間に及ぶ競技時間が終了し、あとは結果を待つばかりとなった選手たち。
結果発表前の大会総評では、これまでモンディアル・デュ・パン世界大会で何度となく代表チームのコーチを務めてきた山崎隆二シェフ(カネカ)からは「これまでにないレベルの低い大会」と厳しい言葉がかけられ、今後のさらなるスキルアップの期待と、協会としてのサポートの重要性を話されていました。

そして、各々が緊張の面持ちで結果の発表を待つなか、見事日本代表の座を勝ち取ったのは高木シェフ(ラブレド)。壇上に上がった高木シェフは、これまでサポートしてくれたスタッフに感謝を示すとともに、世界大会に向けてさらなる努力を約束しました。

モンディアル・デュ・パン

▲(写真左から)第二位/柳川シェフ(Y.P ブーランジュリーヤナガワ)、優勝/高木シェフ(ラブレド)、第三位/須貝シェフ(ベーカリーバンク)

モンディアル・デュ・パン

▲優勝した高木シェフ(ラブレド)

高木シェフ
「第七回から挑戦してきて、前回でやっと3位に入賞できましたけど、優勝できずにいままでずっと悔しい思いをしてきました。
毎回選考会に出る度にお店を2か月ちかく休んで、体力的にも精神的にも今回が最後のつもりで臨んだので、最高の結果が出てとても嬉しいです。夜遅くまで練習に付き合ってくれたスタッフにもただただ感謝しかありません。
これまでに何度か、サポートメンバーとして世界大会に帯同させていただいて、世界のレベルを目の当たりにして自分の実力がまだまだ及ばないことは感じていますが、サポートしていただくみなさんに応えるためにも、世界大会まで努力を重ねて優勝を目指したいと思います」

モンディアル・デュ・パン

▲優勝した高木シェフのピエス作品

今年に入り、協会の会長を15年勤めた川良弘シェフ(パン工房カワ)が名誉理事となり、あらたに安倍竜三シェフ(ブーランジュリー パリゴ)が会長に就任したアンバサドゥール・デュ・パン・デュ・ジャポン。2025年6月4日と5日には、前回世界大会の上位6チームが集い競技を行う「ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン」が大阪万博で開催されることが決定しました(日本代表として高橋シェフが出場)。
chefnoでもその模様をお伝えしますのでお楽しみに!

【最終結果】

第10回モンディアル・デュ・パン代表選考会
優勝:高木 弘文シェフ(ラブレド)
第二位:柳川 玖哉(ひさや)シェフ(Y.P ブーランジュリーヤナガワ)
第三位:須貝 文智(ふみと)シェフ(ベーカリーバンク)

第8回最優秀若手ブーランジェコンクール
優勝:坂田 竜一 選手(パン工房フルニエ)
第二位:小寺 陽葉 選手(MOTHERS CICON BAKERY)
第三位:廣瀬 圭 選手(Zopf)

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Writer
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
映像制作とフランス語関連の記事担当。18年のフランス在住経験あり。フランス生活で得た気づきやエスプリを生かして面白い&センスの良いコンテンツづくりを目指します!好きなお菓子はダントツでタルトタタン。
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