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2024.04.16

パティシエールたちの情熱と創造の舞台「ザ・ペストリー・クイーン2025」国内選考会レポート

ペストリークイーン

2025年1月にイタリアで開催されるパティシエールの国際コンクール「The Pastry Queen(ザ・ペストリー・クイーン)」の日本代表選考会が2024年4月12日に東京ビッグサイトで行われました。

選考会には、日本代表の座を巡って齋藤富柚美(ふゆみ)選手(にいがた製菓・調理専門学校えぷろん)、藤野みさと選手(ホテルグランヴィア大阪)、片山楓恋(かれん)選手(リビエール)、稲垣菜月選手(帝国ホテル東京)の4人の選手が参戦。4時間にわたる競技の末、藤野みさと選手が総合優勝に輝きました。
若き4名のパティシエールたちが持てる技術と感性のすべてを注いで挑戦した選考会。熱い戦いの様子をchefnoが取材してきました。

パティシエール女性菓子職人)のためのコンクール

ペストリークイーン

女性菓子職人のキャリア確立に大きなサポートとなる「ザ・ペストリー・クイーン」。国内選考会を主催するのは、日本人パティシエたちの国際舞台への挑戦をサポートすべく、世界大会経験のあるベテランパティシエや関連企業・団体で構成されたGPS Club(グローバル・パティスリー・サポーターズ・クラブ/代表:望月完次郎氏)です。

GPS Club 公式facebookはこちら

選考会では、選手は4時間の競技時間内にヴェリーヌ、アントルメショコラ、飴細工ピエスモンテの3カテゴリーの作品を作り(一部は事前に制作・持ち込み)、審査されます。味や食感はもちろんのこと、技術的難易度やデザイン性、オリジナリティなどが評価の対象となります。
また、今大会から配点は味覚点50点、作業点25点、芸術点25点で構成され、見た目の美しさよりも「美味しさ」に大きく比重が置かれるようになりました。

ジャーナリストや一流パティシエたちによる試食審査

ヴェリーヌ(グラスデザート)作品では「3種類の食感の表現」が評価ポイントのひとつになっており、小さなガラスの器のなかに、各選手が思い思いのデザートを組み立てていきました。
新潟県から参加した齋藤選手(にいがた製菓・調理専門学校えぷろん)は、つい最近まで学生だった弱冠20歳のパティシエールで、今は母校の専門学校の助手をされています。遠い地での開催ということもあり、たった一人でも静かに作品に向き合う姿が印象的でした。ホテルやお店だけでなく、専門学校からも挑戦する選手がいることで、業界に広くコンクール挑戦への種をまくことになるでしょう。

ペストリークイーン

▲齋藤富柚美(ふゆみ)選手(にいがた製菓・調理専門学校えぷろん)

片山選手(リビエール)は、2023年の世界大会で準優勝した立山優惟(ゆい)シェフの後輩。立山シェフは今回運営サポートとして選考会に参加。奮闘する片山さんを見守っていました。

ペストリークイーン国内選考会

▲片山楓恋(かれん)選手(リビエール)

立山シェフ

「私がいまリビエールの新店を任されて東京にいるので、残念ながら関西にいる彼女をあまり見てあげられなかったんです。今回は準備する期間があまりなかったらしいのですが、そんななか、この水準までもってきたのはすごいと思います。コンテストはメンタルの部分がとても大事。なので競技中、彼女に笑顔が見えたのはほっとしました。本人にとっても次につながるいい経験になったと思います。
他の選手のみなさんも、たくさん練習してきたのがわかります。例えばヴェリーヌやアントルメだと、お皿とか装飾とか、お菓子以外の演出の部分が本選でも大事になってくるんですけど、そこの作り込みが素晴らしく、意気込みがすごく伝わってきました」

イタリアの世界大会では、審査に世界各国のフードジャーナリストたちが参加しており、それにならい、今回、国内選考会でも日本のフードジャーナリストの方々がヴェリーヌ作品の審査にあたりました。

ペストリークイーン国内選考会

▲輝くイチゴの飴細工が華やかな片山選手のヴェリーヌ作品

ペストリークイーン国内選考会

▲藤野選手のヴェリーヌ作品。ドライアイスをボックスに閉じ込めた演出や、最後にソースをかけて食べる仕様にするなど、「食べる愉しさ」まで表現

続くアントルメショコラ作品の試食審査では世界大会経験のある名だたるシェフたちが、それまでの和やかな雰囲気とは打って変わって、真剣な面持ちで目の前に運ばれた作品と向き合います。

ペストリークイーン国内選考会

▲世界大会経験のある業界の一流シェフたちが審査

ペストリークイーン国内選考会

▲藤野選手のアントルメショコラ作品

技術と感性がぶつかるピエスモンテ作品

競技も終盤にさしかかり、各選手は最後の飴細工ピエスモンテに残る力を注ぎます。
今回のテーマは「ミケランジェロ」。

ピエスモンテ作品の競技において、とくに目を見張る活躍を見せたのが稲垣選手と藤野選手。ふたりは「共にこの舞台でたたかおう」と約束し、切磋琢磨した間柄だそう。
壊れてしまわないように安定や強度に最大限の注意を払うピエス作品において、稲垣選手は、あえて「壊す」という大胆な発想を見せました。

ペストリークイーン国内選考会

▲いちど破壊したダビデ像を再構築していく稲垣選手(帝国ホテル東京)
稲垣選手

稲垣選手

「作品をつくるにあたって、美術館に出掛けていって勉強しました。最初はそのまま作っていたんですけど、ただダビデ像の頭部がそのまま乗っているだけだと面白くないなと思って。いちど頭部を作ってからドリルで壊して、統一感をだすために飴を接着剤にして組み立てました」

対する藤野選手は細部にもこだわった、きわめて完成度の高い作品を作り上げていきました。リボンの飴細工にはイタリア国旗の色づかいを採用したり、柱部分には、熱すれば柔らかく、冷やせば固くなる飴の特性を存分にいかして、まるで煙を閉じ込めたかのような幻想的なイメージを表現するなど、随所に高い技術力を見せました。

ペストリークイーン国内選考会

▲藤野みさと選手(ホテルグランヴィア大阪)

ペストリークイーン国内選考会

▲藤野選手のピエス作品(一部)

ペストリークイーン国内選考会

▲藤野選手のピエス作品(一部)

審査後、GPSクラブメンバーであり、2021年にはフランスより「フランス農事功労章 シュヴァリエ」を受章したプリンスホテル名誉料理長の内藤武志シェフに感想をお聞きしました。

内藤シェフ

「ピエスに関しては、しっかり準備してきた人とそうでない人の差が大きくでたようです。一方で味覚審査は、みなさんまだまだ勉強の余地はあると思います。とくに構成や食感といった面でまだ物足りなさを感じました。普段お客様にお出ししているものと、コンクールに出す作品とでは構成はやはり違ってきますからね。ピエスは過去の作品の画像を見て勉強することはできるけど、お菓子は実際に食べることができないので、ここは経験を積んで感性を磨いていくしかありません。
でも、今回も才能と情熱のある若い選手が4人も挑戦してくれたことはとても喜ばしいことです。厳しいことを言いましたけど、若くしてこのレベルのお菓子を作れるというのはものすごいことだと思います。
これからも、若い選手たちが世界の舞台で輝けるようにサポートしていきたいですね」

優勝者インタビュー

すべての競技と審査が終わり、結果発表の瞬間がやってきました。
まずは部門賞の発表が行われ、特別賞を片山選手(リビエール)が受賞し、芸術部門賞と味覚部門賞を藤野選手(ホテルグランヴィア大阪)が受賞しました。

そして総合優勝を果たしたのは藤野選手。芸術部門、味覚部門の受賞と合せて、完全優勝といえる輝かしい成績をおさめました。

ペストリークイーン国内選考会

▲(写真左から)第三位の片山楓恋(かれん)選手(リビエール)、優勝の藤野みさと選手(ホテルグランヴィア大阪)、第二位の稲垣菜月選手(帝国ホテル東京)

ペストリークイーン国内選考会

藤野選手

「稲垣さんとは『ペストリークイーンを目指してたたかおう』って約束してお互い高め合うことができましたし、周りのみんながいたからこそ私も頑張ることができました。会社のみんなやGPSクラブの方々のサポートのおかげで、この瞬間を迎えることができたことに感謝を伝えたいです。ここからがスタートなので、周りの方々にもっと助けていただくことになると思いますけど、恩返しできるように、優勝を目指して一生懸命がんばります!」

何度も壁にぶつかりながら、今回の選考会にすべてをかけてきたという藤野選手。「練習を勤務時間中に行うことができた」と、環境面でのサポートがとても大きかったと話します。
来年のイタリア本選に向けて、さらなる努力を誓った藤野選手。彼女のさらに磨かれた技術力が世界を驚かせる日が今から楽しみです。
そして、今回出場した4選手の平均年齢はなんと25歳。これほど若く、才能と情熱にあふれるパティシールたちがコンクールに挑戦することで、さらに業界の裾野が広がっていくことでしょう。

各選手のピエスモンテ(飴細工作品)

ペストリークイーン国内選考会

▲藤野選手(総合優勝)の作品

ペストリークイーン国内選考会

▲稲垣選手(第二位)の作品

ペストリークイーン国内選考会

▲片山選手(第三位)の作品

ペストリークイーン国内選考会

▲齋藤選手の作品

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Writer
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
映像制作とフランス語関連の記事担当。18年のフランス在住経験あり。フランス生活で得た気づきやエスプリを生かして面白い&センスの良いコンテンツづくりを目指します!好きなお菓子はダントツでタルトタタン。
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