ARTICLE
2023.07.04

フランスレポート ようこそ「サロン・ドゥ・ラ・パティスリー」へ!

サロンドゥラパティスリー

みなさん、こんにちは。
初夏らしい陽光の明るい季節のなか、「第3回 サロン・ドゥ・ラ・パティスリー」が、2023年6月17日から19日までの3日間、パリ郊外で開催されました。
今回は、前回までの会場だったポルト・ドゥ・ベルサイユから場所を移し、ヴァンセンヌの森の中にあるパーク・フローラル公園内で行われました。
2019年の第2回以来、実に4年ぶりの開催です。さっそく、現地スタッフが行ってきたのでレポートします。

スイーツ好きが集まるパティスリーの一大イベント

会場があるパーク・フローラル公園は、さまざまな種類の花や植物に囲まれた広大な公園です。野外コンサートホールや自然遊園地が併設してあり、園内でピクニックも楽しめる、パリジャンの憩いの場にもなっています。

パーク・フローラルの孔雀

▲公園内では孔雀がお散歩していたりします

園内はとにかく広大で、正門から案内表示に従って歩くこと10分、なかなか目的地へ到達せず、場所を間違えたのではと一瞬不安になりましたが、扇状に羽を広げた孔雀のお出迎えに、そんな不安もどこかへ消えてしまいました。

「サロン・ドゥ・ラ・パティスリー」会場

▲ようやく「サロン・ドゥ・ラ・パティスリー」会場へ到着

会場へ入ると、そこはお菓子のあまい香りでいっぱい。スイーツ好きの来場者たちは、笑顔でお目当てのスイーツを食べ、熱心にデモンストレーションに見入っていました。
フランス人の8割以上が、「スイーツ余暇の楽しみ、家族や友人との分かち合いの充実した時間を過ごすのに最適」とアンケートに答えているそうです。
フランス人にとってスイーツは、老若男女問わず幸福の源のようです。

イベント規模は前回に比べて縮小傾向にあるようで、出展者も物販も少なめで、たくさんの目移りしそうなお菓子を求めてやってきた私としては、少しがっかり。
パティスリーの物販のスタンド数は限られていたのですが、それでも実力派の創作的なパティスリーにいくつか出会えましたのでご紹介します。

印象に残ったパティスリーをご紹介

ルノートル / エティエンヌ・ルロワ(Lenôtre /Etienne LEROY)

ルノートルは、ピエール・エルメ氏をはじめ、これまでに数々の優れたパティシエを輩出した、フランスを代表するメゾンのひとつ。フランスで最初の料理学校を創立したことでも知られており、今年で創業50周年を迎える老舗です。
ブースでは、昨年ルノートルのシェフ・パティシエに就任した、2017年のクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーの優勝者でもあるエティエンヌ・ルロワ シェフによる、プチガトー3種が紹介されていました。

「ルノートル」のショーケースに並んだお菓子

▲「ルノートル」のショーケースに並んだお菓子

そのなかのひとつ、「トロペジェンヌ(Tropézienne)」は、サロン限定の新作とのこと。
アーモンド、レモン・コンフィ、クリームを花の形のスポンジ生地でサンドし、上にはフランボワーズと紫色の小花をあしらった美しい仕上げのお菓子です。
形の可愛らしさと爽やかな色合いに魅了され、さっそく試食してみると、最初の一口がサプライズ。風味豊かな、特別さを感じるレモン・コンフィのインパクトのある酸味、そして、ライト感のあるクリームがなんとも爽やか。

スタンド内で実演をされていたシェフに、トロペジエンヌのクリエーションについて聞いてみました。

エティエンヌ・ルロワ氏
「トロペジェンヌは、フランスの伝統菓子の一つです。オレンジフラワーウォーター風味のブリオッシュ生地に、通常のレシピではバター使用のムスリーヌクリームを使いますが、軽さを出すためにマスカルポーネとシャンティクリームを使用しました。南仏のマントン産レモンで作ったレモン・コンフィに、ユズを少し加えて風味を出しています」

「トロペジェンヌ」を実演製作中のルロワ氏

▲「トロペジェンヌ」を実演製作中のルロワ氏

「2017年にパティスリーの世界チャンピオンになった後に、こうしてフランスの文化遺産ともいえるルノートルで、ノウハウの継承に携わることは、私にとって深い意味を持ちますし、とても光栄な任務です」
スタンド壁面に掲げられた、創業者ガストン・ルノートル氏の大きな写真の前で淡々と語るシェフの言葉から、フランスのパティスリーと文化への情熱と想いが伝わりました。

ピエスモンテを作り上げていくルロワ氏

▲アシスタントに教えながら、一日かけてアメ細工のピエスモンテを作り上げていくルロワ氏

ローラン・デュシェーヌ(Laurent DUCHENE)

ベテランMOFのローラン・デュシェーヌ氏のスタンドでも、スタッフが品薄になっていくショーケースにお菓子を補充しながら、きびきびと動いていました。
今回の会場限定商品は、抹茶ロール(Roulé Matcha)。
抹茶スポンジ生地に、バニラクリーム、フランボワーズのクーリーと、抹茶のガナシュ入り。
緑、赤、白の美しい断面にそそられてつい購入。ほどよい甘さの繊細な風味でした。
私としては、もう少し抹茶の苦味がほしかったですが、フランス人にはほどよい配合なのでしょう。それもあってか、スタンドで人気のアイテムでした。

ローラン・デュシェーヌのスタンド

▲ローラン・デュシェーヌのスタンド

ローラン・デュシェーヌの「抹茶ロール」

▲ローラン・デュシェーヌの「抹茶ロール」

余談になりますが、このローラン・デュシェーヌの2号店が、会場に近いヴァンセンヌ市内中心部にあります。
教会の隣の広場に面したお店の前、日曜の気持ちよい朝のテラスで、カフェ、クロワッサンを楽しむ市民の姿が幸せそうでした。機会があれば、ぜひ訪れてみてください。

ローラン・デュシェーヌ2号店

▲ヴァンセンヌ市内のローラン・デュシェーヌ2号店

ジェローム・ランギリエール (Jerôme LANGILLIER)

会場の入口ちかくのスタンドでは複数のパティシエによるパティスリーが並んでいました。そのなかから、ジェローム・ランギリエールの半球型のタルト・マ・シェリー(Tarte Ma Cherry)を試食。甘味が抑えられ、フランジパンのタルト生地もさっくり。季節のフレッシュなグリオット・チェリーのやさしい風味が口に広がる一品です。

ジェローム・ランジリエールの「タルト・マ・シェリー」

▲ジェローム・ランジリエールの「タルト・マ・シェリー」(中央左)

リヨン郊外にお店を持つジェローム・ランジリエール シェフは、2009年のクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリーの優勝者。会場内にはシェフ独自のスタンドがあり、自らスタンドに立って、リヨン地方名物のアーモンドの砂糖菓子プラリンをベースにした「プラリン・ポップ(Pralin’Pop)」を販売していました。

ジェローム・ランジリエール氏

▲ジェローム・ランジリエール氏

最初は、「あの固いリヨンの伝統菓子プラリン・ルージュ…」という先入観でそのまま通り過ぎようとしたのですが、ご本人から一粒手渡され食べてみると、口に入れた瞬間のさっくり感が予期せぬサプライズで、香ばしい上質のアーモンドが口の中に広がりとても美味しかったです。
6か月前に出したばかりの新作だそう。リヨンに行かれる方はお土産にぜひ。

会場内の他のさまざまな催し

今回のサロン・ドゥ・ラ・パティスリーは、イベントが充実していました。
オテル・ド・クリヨンのシェフ・パティシエも務めた、今回のイベントアンバサダーでもあるクリストフ・フェルデール氏と「レ・パティシエ(Les pAtissiers」」を共に営むカミーユ・ルセック氏によるマスタークラスのほか、星付きレストランのパティシエなど豪華メンバーによる講習会が会期中、計14回実施されました。

サロンドゥラパティスリー

▲マスタークラスの様子

また、有名パティシエによる2時間コースのパティスリー教室なども開催され、予約制で75ユーロという価格設定でしたが、アランデュカスグループのエメリック・ピナー シェフや、今年MOFとなったピエール・アンリ・ルヤード シェフが講師ということもあって、どの教室も盛況でした。

デモンストレーションでは、同じ時間帯に、トラディッショナルなレシピと、コンテンポラリーなレシピが、別会場で同時進行するというユニークな構成。来場者たちの関心度も高く、開催時間中どちらも盛況で、フランスのパティスリーの浸透ぶりを感じました。

サロンドゥラパティスリー

▲デモンストレーションコーナーには人だかりが

また、パティスリー業界の傾向や問題についての講演会や討論会も3日間で9回実施されました。パン製造の工程で不要となった麦からビールを作るという、廃棄処分の削減をコンセプトとしたユニークな出展社もあり、食にまつわるフランスの意識の高さが伺える内容でした。

サロンドゥラパティスリー

▲講演会の様子

取材を終えて

パティシエ側にとっては、鮮度や品質を保ちながら繊細なパティスリーを実店舗とは異なる別会場で販売というオペレーション自体、とても大変なことだと思います。スタンド設営、運搬、スタッフ確保などを考えると、大変な労力がかかるうえ、なかなか利益に反映されないのが現実かもしれません。

そのような状況下で、連日来場者たちに丁寧に応対し続けるシェフたちの姿勢が有難く感じられました。
パティスリー、ショコラトリー、コンフィズリー等が加盟するフランス全国職人組合会長のローラン・ルダニエル氏が、イベント会期中、ずっと常駐されていました。
業界関係者への挨拶、一般来場者からの質問にも笑顔で応対しながら、フランスのパティスリー業界を牽引する姿に感銘を受けました。
だからこそ、来年はぜひとも、もっと盛り上がることを切に願います。

フランス全国職人組合会長のローラン・ルダニエル氏

▲フランス全国職人組合会長のローラン・ルダニエル氏

「Salon de la Patisserie」ホームページはこちら

この記事をシェアする
Writer
chefnoフランス編集部
chefnoフランス編集部
運営サイトはこちら
フランス在住の編集部スタッフから、生の情報をおとどけします! 現地で開催されているイベント、注目のパティシエやブーランジェへのインタビューやお店の取材などなど。 フランスならではの情報を不定期で配信します。
1
花パン製作所
ARTICLE
2024.04.23
夫婦で独立開業!笑顔とリピーターの絶えない「花パン製作所」・前編【全2回】
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
2
ARTICLE
2022.03.15
フランスにいったら役に立つ!かんたんフランス語講座 第11回『味の感想』
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
3
ペストリークイーン
ARTICLE
2024.04.16
パティシエールたちの情熱と創造の舞台「ザ・ペストリー・クイーン2025」国内選考会レポート
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
4
シンヤパン
ARTICLE
2023.08.01
モンマルトルの人々の生活に根差す、日本人が営む小さなパン屋さん
chefnoフランス編集部
無料会員を募集しています!
chefno®︎では、会員登録することによって、会員限定のコンテンツを視聴したり、 製パン・製菓のセミナー(無料・有料開催)に参加することができます。 ほかにもいろんな特典を考えております。みなさまの登録をおまちしています!