ARTICLE
2023.01.13

オーストラリアからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 聡Vol.01『G’Day (グダイ)メルボルン!』

みなさん、はじめまして。

オーストラリアで、ベーカーをしている成澤 聡(なるさわ さとし)です。このたび、オーストラリア版ブーランジェ通信を担当することになりました。どうぞよろしくお願いします。

ブーランジェ成澤聡さんのイラスト

▲写真が苦手なのでイラストで失礼しますm(__)m

 

私が住んでいるのは、シドニーに次ぐ第二の都市メルボルンです。いきなりですが、みなさん、オーストラリアの首都がどこかご存知ですか?「シドニーじゃないの?」と思われている方も多いと思いますが、答えは「キャンベラ」です。かつてはメルボルンがオーストラリアの首都でしたが、1901年にイギリスから独立する際、シドニーとメルボルンが首都争奪戦を繰り広げ、その結果、妥協策としてシドニーとメルボルンの中間地点であるキャンベラが首都になりました。冗談のようですが、本当の話で、オーストラリアらしさをよく表している気がして、私はとても好きです。

メルボルンの中心地いわゆるCBD(Central Business District)の裏路地

▲メルボルンの中心地いわゆるCBD(Central Business District)の裏路地。メルボルンは、オーストラリアの文化と食の中心地であると同時にビジネス街でもあります。ストリートアート、数多くのクラブ、バー、おしゃれなレストランが並びます

私がオーストラリアに来たのは2013年のこと。それまでは、日本で10年ほどパン職人として働いていました。かねてより興味があった海外移住を思い立ち、インターネットで海外求人を検索していたところ、オーストラリアでベーカーを募集しているのを発見!それから運よく事が運び、とんとん拍子で渡豪しました。渡豪してからは、グレートバリアリーフという世界最大のサンゴ礁地帯で有名な観光地、ケアンズに2年、その後、メルボルンに移住しました。

私がベーカーになろうと思った理由のひとつが「パン職人になれば世界中どこに行ってもこの身ひとつでパンに関わる仕事ができる」と思ったからなのです。まさに今、日本を離れオーストラリアでパンを作って生活していることに思いを巡らすと、感慨深いものがあります。

私がベーカーとしてのキャリアを積むために日本で最初に門を叩いたのは、甘いパンから惣菜パンまで、とにかく種類豊富なパンを扱う地域密着型のパン屋でした。そこのオーナーは、未経験のアラサー家族持ちの私を雇ってくれたうえに、惜しみなく様々なことを教えてくれ、仕事も任せてくれました。おかげでその店で学んだ「包あん」作業は、今でも手が覚えています。その後、日本で展開をしているフレンチブーランジュリーに職を変えました。今では全国各地に展開するブーランジュリーですが、私が勤めはじめた当時は、本格的なフランス産小麦を使ったバゲットやフレンチスタイルのクロワッサンなどが市場に出始めたばかりの頃で、店舗数も少なく、とにかく多忙を極める日々。夢中で製造をこなす日々を送るうちに技術も知識も自然に身についていました。

ただ、働いていたベーカリーが徐々に各地に店舗を拡大し始め、それに併せて私の仕事も、パンを製造する以外に、人材育成やコスト管理、商品開発など、内容も責任も増していきました。パン生地の管理よりも人の管理が増えたそんな頃、海外転職を考えはじめたんです。そこで、冒頭でふれた通り、偶然インターネットで見つけた海外の求人募集に飛びつき、渡豪することを決意しました。

オーストラリアに来て、私の第二のベーカー人生がスタートしました。こちらに来てからは、お店の規模も取り扱う商品も異なるベーカリー3店舗で勤め、現在に至ります。気がつけば、オーストラリアでベーカーとして働いて10年余りが経ちます。その10年を振り返ってみると、様々な経験をしてきたな~と改めて感じます。

せっかくなので、その10年余りの経験について少しだけご紹介しますね。ケアンズで働いていたベーカリー「Le Crouton」では、常夏の環境下での過酷なパン作りを経験しました。そこでは、とにかくパン作りの基本である温度管理との戦いでした。そしてメルボルンでは、「Noisette」と「Loafer Bread」という2つのベーカリーで働きました。「Loafer Bread」は、舌のこえた地元の方たちに愛されるオーガニックサワードウベーカリー(純粋培養である市販のイーストではなく、小麦と水から起こすサワードウ酵母を使用するベーカリー)で、ここでは7年間勤めました。このお店での経験は、パンへの考え方や技術面だけでなく、社会的なコミットメントを考える上でも私のベーカー人生にとって大切な時間になったことは間違いありません。

オーストラリアでのベーカー人生が順調に進むなか、新型コロナウイルスによるパンデミックで、非常に長いロックダウンに見舞われました。幸か不幸か、その影響で、パン生地にさわれない日々(パンを作らなくてもいい日々)も経験しました。先が見えない長いトンネルをようやく抜けた2022年末、パンデミック前から私の食パンを卸していたカツサンドイッチ屋の「Saint Dreux」からの誘いでパートナーシップを結び、粛々と準備してきた店舗「LITTLE CARDIGAN」をようやくオープンすることができました。

成澤さんが仲間とオープンしたお店のキッチン

▲私が働くLITTLE CARDIGANのキッチンです

これから、オーストラリアのメルボルンから、私のベーカーライフやパンに関するあらゆる情報や取り組みなどをお伝えしていきたいと思っています。少しでもみなさんのご興味や関心のタネになれば嬉しいです。

最後に、少しだけ。

記事タイトルの、G’day(グダイ)は「やぁ!」「こんにちは!」を意味するオーストラリア英語独特の挨拶表現です。オーストラリアは、アメリカ英語よりイギリス英語に近く、とてもきつい訛(なま)りと特有の単語や表現があるのが面白いです。

では、これからどうぞよろしくお願いいたします!

 

この記事をシェアする
Writer
成澤 聡
成澤 聡
運営サイトはこちら
パン職人になってかれこれ20年余。2012年、縁あってオーストラリアに移住。2022年12月、仲間と共にベーカリーとコーヒーロースタリーが併設した店舗をオープン。マルチカルチャーなオーストラリアの文化と人々に刺激されながら、美味しくて、楽しくて、そしてサステナブルなパン作りを日々模索しています。オーストラリアはメルボルンから、パンにまつわるエトセトラはもちろん、日々のことなどをお届けします。
1
ARTICLE
2022.03.15
フランスにいったら役に立つ!かんたんフランス語講座 第11回『味の感想』
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
2
ペストリークイーン
ARTICLE
2024.04.16
パティシエールたちの情熱と創造の舞台「ザ・ペストリー・クイーン2025」国内選考会レポート
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
3
犬型のクッキー
ARTICLE
2024.02.13
店舗を持たない運営。SNSから広がった犬モチーフのお菓子が話題「Maison terrier(メゾン・テリア)」
shiori icon chefno編集部
エディター兼ライター シオリ
4
chefno
ARTICLE
2023.11.07
開業を目指すパン職人・パティシエに読んでほしい 開業直前パティシエールが先輩パティシエールに本音で質問しました!【前編】
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
無料会員を募集しています!
chefno®︎では、会員登録することによって、会員限定のコンテンツを視聴したり、 製パン・製菓のセミナー(無料・有料開催)に参加することができます。 ほかにもいろんな特典を考えております。みなさまの登録をおまちしています!