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2022.07.21

フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.13『資格取得から学んだより深いフランスのこと』

こんにちは。

パティシエ通信 by木村 翔 Vol.2」でご紹介しました、パティシエの国家試験「CAP Pâtissier (セ・ア・ペ パティシエ)」の結果発表が7月8日にあり、無事に合格しました!

今回は、なぜ今さら初級のパティシエの資格を取得しようと思ったのかをご紹介したいと思います。

私が高校生の時に「パティシエになる!」と学校の先生に伝えると「専門学校に行かなくていいの?」と問われました。高校卒業後は、すぐに菓子店で働くつもりだったのですが、先生からこの質問を受け少し不安な気持ちになり、父に改めて進路についての相談をしました。すると、父からはこんな意見が…

「専門学校に行かなくてもパティシエにはなれるし、お金を稼ぎながらパティシエの技術を習得できるうえに、接客、仕入れ、衛生面、場合によっては経営の仕方までも勉強できるんだから学校には行かなくていいよ!」

父の助言を信じ、結局専門学校には行かず、お菓子作りに関わる資格も取らず、パティシエの職に就き14年の月日が経ちました。

専門学校に入学するにはそれなりのお金が必要です。学校が必要ないとは思いませんでしたが、自分の育った環境や性格を考えると、私の選んだパティシエとしての道のりは、自分に合っていたと思っています。もしかすると、お菓子作りの基礎を学んできた職人からすると「あいつ何やってんだ」と思われるかもしれませんが、ある意味突飛で自由な発想ができているところもあります。

▲Valrhonaのコンクールに出場したときのミニャルディーズ

フランスは9月から新学期が始まるので、7月頭は毎年CAPやBac(バカロレア 高等学校教育の修了を認証する国家試験)、master(大学院の試験)などの合格発表が行われる時期です。そんな時期だったということもあり、今から2年程前のちょうど7月頃、フランス人の友人から私にこんな質問があったんです。

友人
「翔は、フランスでパティシエ関連の資格は持ってるの?」


「フランスどころか、日本での資格すら持ってないし、専門学校にも通ったことないよ。資格より経験が大事でしょ?」

友人
「いやいや資格でしょ。」


「じゃあ、資格を取りたての新人パティシエと、10年以上のパティシエ経験者ではどっちがスキルが高いと思う?」

友人
「え!?もちろん資格を取った新人パティシエでしょ?」

資格が重視されるフランスでは、このように捉える人も実際にいるのだなと感じました。私は、今までフランス人のシェフやお客様から「資格なんていらないよ」と言ってただくことも多く、資格を重視する友人の言葉にモヤモヤしていました。

モヤモヤする気持ちを抱えたまま、新型コロナウイルス蔓延が始まり、夏のバカンスをフランスで過ごしていました。せっかくならバカンスを充実したものにしようと思い、5週間の休みのうち2週間をトゥールという街にある語学学校「TOURS LANGUES」に行ってフランス語を学びました。

ここは、外国人向けにフランス語が学べる語学学校です。日本人はもちろん、世界からフランス語を学びに学生がやってきます。カリキュラムによっては語学だけでなく、パティスリーやフローリストなどの専門家のもとで研修することもできるんです。

TOURS LANGUESの校長の言葉がすごく心に響いたのを今でも忘れられません。

「パティスリーのテクニックは、日本でも学べるし、日本の材料でも作ることは可能です。日本でフランス人シェフが行う講習会に参加して、フランス人シェフの説明を日本語訳された内容で理解することもできるでしょうが、それは上辺だけの内容になってしまいます。フランス語を理解して、フランスの歴史を知って、フランスで生活してこそ本来の理解が得られると思うよ。」

▲TOURS LANGUESの校長と

校長のその言葉を聞いた時に、資格を取得したいと言うよりも、よりフランスのことを理解するために勉強するいい機会だと思い「CAPを受けてみよう!」と思ったのです。なぜなら以前の記事でも記した通り、卓球、理科、数学、英語、フランス語、歴史、地理、衛生学、お菓子作りなどの試験を全てフランス語で行わなければいけません。これに合格するとフランス語や歴史のこともより深く知れる気がしたからです!

私の場合は、3年以上フランスでのパティシエ経験があるので、VAEという実技免除の試験を受けることができたため、CAPのCandidat libre(国籍は問わず、国内の学校に通った経験がなくても受けられるコース)というコースを選びました。

お菓子作り以外の科目は、正直ちんぷんかんぷんで、休みの日にはTOURS LANGUES のオンライン授業に参加して試験対策をしました。試験対策とはいえ、日常で使えるフランス語がたくさん学べて、より一層フランスを知ることができ、それだけでもフランスが好きになりました。

私のパティシエの道のりが皆さんに参考になるかは分かりませんが、フランス菓子を本気で知りたい、学びたいと思った時の参考になれば幸いです。

フランス語を勉強したい方、留学を考えている方は以下のインスタグラムも参考にしてみてください。 TOURS LANGUESの日本人向け相談窓口のような役割のサイトです。
https://instagram.com/franceetmoi_jp?igshid=YmMyMTA2M2Y=

 

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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