こんにちは。
気がついたらもう5月が終わり、メルボルンでは街路樹が紅や黄色に彩られて、秋真っ盛り。例年に比べて気温が低く、葉の色づきが一段と鮮やかに感じます。季節の訪れが感じられる自然を横目に、僕は日付を忘れるほど忙しい毎日を過ごしています。
さて今回は、オーストラリアの労働環境についてお話ししたいと思います。
法律と働くことへの意識
オーストラリアは、慣習や文化はもちろんのこと、法律においても労働者が充分すぎるほど護(まも)られている国です。雇用主は、詳細に定められた労働基準法(FairWorkAct)のもと、労働時間や勤務形態、給料体系、有給休暇などを決めなければなりません。この法律を守らなければ、雇用主には厳しい罰則や罰金が課せられます。この法律のおかげで、労働者は自分の最低賃金を把握することができ、定められた労働時間内で働き、有給休暇をきっちりと消化することができます。
ワークライフバランスが充実した社会に
ベイカーとして雇われていた時は「労働基準法はなんて素晴らしい法律だ!なんてすばらしい国だ!今まで僕はどんだけ働きすぎていたんだろう!」と、正社員として仕事をしながらも、ワークライフバランスが充実した毎日を過ごしていました。
では、ワークライフバランスが充実する法律とは実際どういうものなのか、実体験に基づいてご紹介します。
〇給料について
職種や経験年数、所有する資格などによって細かく最低賃金が決められています。自分がどの給与体系に当てはまるかはオンラインで調べられるので、最低賃金がどれくらいの額かが把握できます。
また、土日祝日の勤務については、平日の給与額に上乗せした額がもらえます。たとえば、土曜日は平日の1.25倍、日曜日は1.5倍、祝日においては2.5倍!といった具合で上乗せされるので、時給で換算してみると、かなりの上乗せ額になることがわかると思います。オーストラリアでは、「お金を稼ぎたければ、週末に働け!」というのが常識なのですが、だからかといって、土日祝日に働きたがる人が多いかというとそうでもありません。これはオーストラリアらしい考え方なのかもしれませんが、多くの方が家族と過ごす時間を大切にしており、休みを最優先に考えている気がします。
〇勤務時間について
労働時間は、週に38時間から長くても40時間が基本です。週4日勤務、たまに5日の勤務の時もあるといった感じです。日本のパン職人の場合、最近でこそ週休2日のところもあるようですが、週1日しか休めないということもざらにあるので、週4日勤務というのには驚かれるのではないでしょうか。
〇有給休暇について
有給休暇は、年間で取れるのが4週間と定められています。オーストラリアでは、バカンスとしてまとまった休みをとるのが当たり前なので 僕も雇われベイカーだった時は、年に一度、最低2週間くらいは日本に帰っていました。体調が悪ければ、年間で10日間付与される病気休暇がありますし、子どもが産まれた同僚は父親でも育児休暇を2週間取得していました。
僕の住むメルボルンがあるビクトリア州では、7年以上同じ会社に勤めると、長期勤務者のための有給休暇制度(Long Service Leave)が適用され、なんとその取得可能日数は6週間もあるんです。以前働いていた職場で、インド出身の同僚がこの長期休暇を取って、家族4人でインドに一時帰国していました。
誰かが休むことで、仕事上の負担はもちろん生じますが、お互い様であることは誰もが承知していることであり、それが当たり前の社会なので、さほど気まずい雰囲気になることはありません。日本と比べて、休みが取りやすい空気であることは確かです。
〇年金について
オーストラリアでは、年金を雇用主が全額負担する年金制度(Superannuation)があります。たとえば、正社員が週30時間以上勤務すれば、その週の給与額の10.5%に当たる額を会社負担で指定の年金口座に給料とは別に振り込んでくれます。諸条件はあるものの、普通に仕事をしていれば、給料も休みもきちっともらえ、おまけに年金まできちんと積み立ててくれる、本当にありがたいことです。
労働者としては、とても働きやすいオーストラリアですが、気を付けておきたいのが、労働者の足元を見て法の目をかいくぐり、労働搾取している“ブラック企業”も多くあることです。就労可能なビザの提供を餌に、不当な条件で移民希望者を雇う雇用主がいるのも事実です。いずれにせよ、法律違反であり、処罰の対象であることは変わりありませんので、そういったところは摘発されると思いますが、雇われる側もしっかりと事業者を見極める必要があります。
今回は、雇われている側の目線でのお話をしました。後編では、従業員を雇う側(オーナー)目線からみたオーストラリアの労働環境についてお話しします。