皆さま初めまして。
先日こちらのサイトchefno の記事でご紹介していただきました源波慎一郎と申します。この度、新たにパティシエ通信を担当させていただくことになりました。
私の経歴に関しましては先日公開された記事ですでにご紹介いただいているのですが、フランスからのパティシエ通信ということなのでフランスでのこれまでの職場にフォーカスして改めて少し自己紹介させていただきます。
初めてのフランスでの職場はドイツに隣接するグラン・テスト地方(旧ロレーヌ地方)のジャルニーにある「FRESSON(フレッソン)」というパティスリーです。(2004 年M.O.F.パティシエの故フランク・フレッソン氏のお店)
東京で育った私が、初めてJarny という町へ向かう電車に乗ったとき、 いつまでも川や山、草原の中を走り続ける車窓の風景に、言いようのない恐怖を感じたことを、今でも忘れられません。 憧れたフランス、夢に見たパリのオシャレなパティスリーやケーキ達とはかけ離れたスタートでした。
そんな田舎町にある「フレッソン」でしたが、パリと比較しても全くひけを取らない美味しいケーキが並んでいました。クリスマス、イースター、バレンタインだけではなく、週末に入るクロカンブッシュの注文など、フランスならではのパティスリーでの仕事を経験することができました。また、オーナーの協力のおかげでコンクールに挑戦し始めたのもここからでした。
▲結婚式用に製作した特大クロカンブッシュ
▲「フレッソン」のショーケースに並んだアントルメ
次に移ったのは、同じグラン・テスト地方(こちらは旧アルザス地方)ではありますが、カイゼルベルグという街にある、ビストロとガストロノミーレストランが併設されているホテル「Le Chambard(ル・シャンバール)」です。
▲フランスで一番美しい村に選ばれたこともあるカイゼルベルグの街並み
▲「ル・シャンバール」の外観
こちらは2007 年のM.O.F.キュイジニエで、ミシュラン2つ星を持つオリヴィエ・ナスティシェフのお店です。アルザスは白ワインの生産地としても有名で、街と街の間の至る所に葡萄畑が広がっています。同じパティシエという名のつく職業でも、ブティックパティシエ(いわゆるパティスリー)とレストランパティシエでは、作る商品の形態だけでなく発想も大きく異なります。このレストランで働いた4 年間では、今までどこでも経験したことのない、大自然の中で収穫した食材を使ったデザート作りや、目まぐるしく変わる季節の素材を使ったメニュー変更、ティータイムで提供するアルザスをテーマとしたケーキの商品開発など、新しい経験ができました。
▲丘から見下ろした葡萄畑とカイゼルベルグの街
最後に今勤務している「École National Supérieure de Pâtisserie(通称L’ENSP)」 です。以前は国立の製菓学校だったことから、今も名称にNational と名残を残しています。
製菓学校としては世界一の規模とのことですが、世界は広すぎて私自身では確認できないので、世界一の規模らしいということで。(笑)設備等の優劣はありますが、内容としては他の製菓学校と同様に、フランス人の若い世代のパティシエを育てる施設です。その他には、世界中からフランスのパティスリーを学びにやってくる方向けに、英語での授業コースも提供しています。アジア圏からも韓国・中国・インドネシアの方が来ていたり、アメリカや南米から来られている生徒もいます。
ここまで読まれた方はお気づきだと思いますが、私はパリで働いたことはたったの一度もありません。特別な理由があるわけではないのですが、始まりが地方だった事と、もうひとつは日本とフランスにおける文化形成の大きな違いが原因に当たるのではないかと思います。その違いとは、フランスでは文化の発展の仕方や人の集まり方が、日本のように大都市集中型ではなく、各地方・各地域が特性や特産物を生かして発展し、大都市に負けることのない何かを持っている。そしてそれがまた人を集めて発展していく流れができているということです。そして、フランスで長く生活していく中で、私も『パリ』という世界的大都市のネームバリューよりも、地方や職場自体の価値を重視するようになってきたからだと思います。例えは違うかもしれませんが、フランスのパティスリーやレストランのあり方は、少し日本の戦国時代の勢力図に似ているような気がします。いろんな地方にM.O.F.(Meilleurs ouvriers de France = フランスの最高レベルの職人)という称号を持った職人がいて、その土地や職人独自の色を持った料理やケーキなどの作品があり、その店がある地域自体の経済を活性化させいます。
話が逸れそうなので元に戻しますが、ここまでが私の簡単なフランスでの職歴です。次回は、少し時期はズレてしまうのですが、日本ではあまり(むしろ全然)聞いたことのない、一般的なものとは違った珍しいガレット・デ・ロワの紹介をさせて頂こうと思います。
ベーカリーパートナー編集部