ARTICLE
2022.06.21

「宗像堂」(沖縄)石窯で作られる“体と心が喜ぶパン”のひみつ

沖縄県にて2003年にOPENし、来年で20周年を迎える宗像堂。天然酵母のパイオニアとも呼ばれ、長年継がれた酵母で作られるパンは、全国からパン好きがたくさん訪ねて来るほどの人気。2017年に書籍「酵母パン 宗像堂 ~丹精込めたパン作り 日々の歩み方」(小学館)も出版。

今回は、沖縄まで取材に行き宗像さんご夫婦にお話を聞かせていただきました。「宗像堂」が作る酵母の奇跡と、パンをほおばったときに「うふっ」となってしまうような、美味しさの秘密を探ります。

 

酵母とパンと。エネルギーが集まる場所としての「宗像堂」


沖縄県宜野湾市。お店は那覇市からは約30分強ほどの外国人住宅街にあります。バス停から歩いていくと、汗も流れ出るような傾斜のある坂。そんな坂の上を登り切ったところに、白い平屋の建物「宗像堂」が。OPENからすぐに、パンを求めるお客さんで、既に列ができていました。

外にはイートインできるスペースも。外国人住宅を改装したお店で、風通しがよい場所にあり木々も生い茂って、とても心地よい風が吹きます。パンを食べるのにも最高の環境です。

本も出版されるほど、この人気のお店を開いたのは宗像ご夫婦。宗像誉支夫(よしお)さんは、福島県出身。琉球大学大学院で微生物の研究を。奥さまのみかさんは、奄美大島出身。民謡ポップスグループ「ネーネーズ」のマネージャーをするために沖縄へ移住されました。

 

焼き立てのパンが香る店内、雑貨と沖縄の美味しいがつまったラインナップ


店内は、続々と焼きあがったパンが並んでいきます。火入れは現在、週に3回で月・木・土曜日。その時の10時にお店へ行くと、窯で焼くところを見学することができます。

ミナ ペルホネンのデザイナー、皆川明さんデザインのパン用バッグが販売されていたり、沖縄の厳選された養蜂場の蜂蜜があったり、黒糖や沖縄食材を使ったカトルカール(フランス記パウンドケーキ)なども。“沖縄の美味しい”が詰まったパンはラインナップにも。

「まず沖縄の人に食べてもらいたい」と思って宗像さんが作られた黒糖を使ったパンがズラリ。黒糖メロンパン、黒糖マフィンは、口の中で広がる優しい甘さがたまりません。「収穫時期、貯蔵の状態で変わるので、黒糖を使うのが難しいながらも、パンに使うのがとても面白い」と話す宗像さん。宗像さんの美味しさのエネルギーが、ここにつまっています。

 

手づくりで作り上げた石窯で焼くパン


もともと陶芸をやっていた、宗像さん。なぜ石窯にしたのでしょうか? 伺うと、人間国宝の作家が薪窯で焼くものの質感の違いに“何かヒントがあるはず”と思い作ったのが石窯なんだとか。

当時は石窯の作り方を教えてくれる人もなく、宗像さんの友人が図書館で見つけてきた『石窯のつくり方楽しみ方』という本を手引きとして、仲間の力を借りて作ったんだとか。初代の石窯は、約5カ月で崩れてしまい、今の窯まで試行錯誤して5代目。現在の窯は約10年も続いているんだとか。

そんな石窯は、火を入れて余熱で焼くという焼き方。今は前日の夕方17時から18時ぐらいから22時ぐらいまで。朝は4~6時ぐらいの1日2回の回数で、火入れをしているそう。

それでは、そんな石窯で焼かれるとっておきのパンとは? とっておきを紹介していきます。

 

酵母の旨味がぎっしり。自社畑の読谷小麦を使ったパンやスイーツ系のパン、お食事系のパンまで


それでは、酵母の旨味がたっぷりと感じられるパンを紹介していきます。

まず紹介したいのが、食事系のパン。


まず奥に見えるのが、お子さんに絶大な人気の「ねこのしっぽ」。とってもかわいい形とネーミングで、酵母の旨味と自然な甘みがたまりません。

手前にあるパンは「黒糖チーズ」、そして奥に見えるソーセージのパンも黒糖。どちらも黒糖のやわらかな甘みと、チーズとソーセージそれぞれの塩気が絶妙。

そしてベーグルは、名前に「読谷(よみたん)」がつき、こちらは宗像堂さんが種まきから始めて、雑草取りや麦踏みなどをして手をかけて育てた小麦を使っています。むっちりした食感がたまりません。


宗像堂さんのパンは、小麦粉、リンゴ、長芋、人参、炊いたご飯、黒糖、三温糖、MRET WATER、活水器ディレカ、オリーブオイル、塩を使っていて身体の中から、健康を支えてくれるものばかり。

そんな中でもハード系パンはとても人気で、太バゲットは断面をよく見ると、酵母の材料のニンジンが時たま見え隠れしています。かみしめたときの旨味、甘みが筆舌にしがたいほどの美味しさです。写真左の沖縄県産アーサ入りバゲットも人気です。

読谷村産小麦の全粒粉を練り込んだ「読谷カントリーブレッド」(写真右)は、読谷の小麦を、もう少し食べやすくアレンジしたパンで、より柔らかくディナーのお供にも、朝食にもぴったりです。


続いてはスイーツ系のパン。「黒糖シナモンロール」は人気商品。黒糖の入った生地にシナモンとレーズンが入っていて、シナモンはほどよく香るのであっという間にペロリ。「黒糖マフィン」は、ソーセージなど塩気のある食事と合わせると絶妙に合います。

奥に見えるのは「バナナ・こくるれ(小)」“こくるれ”とは黒糖・くるみ・レーズンのことで甘味、酸味、そしてそれぞれの食感が口の中でぶつかりげいこする感じがたまりません。


最後はやはり食パンを。発酵の旨味がにじみ出るほど美味しく、パンの耳は特に旨味がじゅわっと。

 

イートインスペースで食べる、ランチのセットもおすすめ


日替わりで、ドリンクとスープがついたセットもあります。注文を受けてから焼き上げてくれるこの日のパンは、トマトとモッツァレラチーズのパニーニと、沖縄県産豚肉を石窯で焼いた自家製ハムをはさんだバゲットサンドの2種類。

ドリンクは自家製のジンジャーエール。スープは、じっくりことこと煮込まれたおいものスープで、身体の中からどちらも温まります。

イートインこそ、食べに来ないと味わえないのでぜひランチに利用してみてください。

宗像堂のパンは、お取り寄せも可能。

 

●About Shop
宗像堂
沖縄県宜野湾市嘉数1丁目20−2
営業時間:10:00~17:00
定休日:水曜日

この記事をシェアする
Writer
ufuマガジン
ufuマガジン
運営サイトはこちら
日本全国のカフェからパティスリーまで、「今一番美味しいスイーツ」を発信。美味しいトレンド情報はもちろん、有名なシェフをはじめとする作り手の想いや知られざるブランドのストーリーも発信中。
1
パティスリーKII
ARTICLE
2024.03.19
和歌山・紀の川市から。ここでしか手に入らない素材を使ったお菓子づくりを楽しむパティスリー「KII(キイ)」谷本シェフの思考
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
2
味覚と味蕾
ARTICLE
2023.06.13
教えて!専門家の皆さん!!美味しいものを作るために知っておくべき「味覚」について
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
3
ARTICLE
2024.01.09
インタビュー 老舗和菓子屋からパン屋へ パティシエ出身シェフが作る美しいパン ル・シュプレーム 渡辺 和宏
ベーカリーパートナー編集部
4
ARTICLE
2022.01.13
フランスにいったら役に立つ!かんたんフランス語講座 第4回『行く』
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
無料会員を募集しています!
chefno®︎では、会員登録することによって、会員限定のコンテンツを視聴したり、 製パン・製菓のセミナー(無料・有料開催)に参加することができます。 ほかにもいろんな特典を考えております。みなさまの登録をおまちしています!