こんにちは。
フランスで暮らし始めて6年目、母国・日本とここフランスでは違う点がたくさんあり、外国人の私には良くも悪くも毎日新しい発見があるのですが、最近改めて「やっぱり良いなぁ、フランス」と感じたことがありました。
今回はそのことについてお話しします!
先週末に、わたしが2016〜2019年の3年間暮らしていた、東フランス・アルザス地方に行きました。現在私の暮らす西フランス・ロワール地方からは800kmほどの距離があり、ざっくり例えると東京都から広島県くらいの距離です。
以前アルザスに暮らしていた時も物凄く感じていましたが、アルザスの方々はフランス語のアクセントが非常に特徴的で、パリ〜西フランスの発音と比べると、チャーミングで単語をひとつひとつしっかり発音されます。外国人にとってはとても聞き取りやすいのです。
アルザス地方を代表する都市、ストラスブール、コルマール、ミュールーズ( Strasbourg, Colmar, Mulhouse)などの都市を少し離れ近郊の街や村に訪れると、地元の方々はフランス語をベースにしながらも先祖代々継承されている「アルザス語( l’alsacien )」を混ぜながら会話しています。(ご老人同士の会話は100%アルザス語であることも多いです。)
隣国・ドイツ語の音に似た「アルザス語」は、隣で聞いていると意味は理解できませんが時々フランス語もミックスされていて、子守唄を聴いているようななんだか心地よい気分になります(笑)
「フランス」という国の一地方「アルザス」ではありますが、独特の文化を持ち、自国愛が強く、アルザス語を伝承していこうという熱い想いが生活の中からも伺えます。
こういった市民の自国愛を感じられる体験は、フランス中どこを探してもここアルザスを始めとする地方でしかできないのではと思っています。
ブーランジェールの私が今回アルザスを訪れて最も「やっぱり素晴らしいなー」と思ったのは、ここでしか作られない、食べられないパンやお菓子が存在することです。
2022年になった現在、自由に、便利に、世界中の情報が手に入る世の中です。
東京で本場顔負けの多国籍の料理やフランス発祥のパン・お菓子が食べられたり、パリで日本のお蕎麦が食べられたりと、食のグローバル化がとても進みました。
毎日多国籍に様々な食が楽しめること、それは大変素晴らしいことでもありますが、時に少しだけ寂しくもなります。個人的な意見ですが。
前置きが長くなりましたが、アルザスのブーランジュリーでは「プレッツェル」「クグロフ」などのアルザス地方を代表するパンを店頭に並べることは「必須」です。製造しないことはほぼあり得ません。
観光客向けに販売する狙いもありますが、もちろん地元の方たちからも愛されています。
そうです、アルザスの方たちは自分の地方発祥のものにとても愛着があり、誇りを持っています。
クグロフ、プレッツェル、タルト•フランベ、タルト•リンツ、フォレ•ノワールなどなど…
これらのアイテムは、パリや西フランスで見かけることはありませんし、実際ロワール地方で働くパン職人に聞いても「クグロフというものは知っているけど、作ったことも食べたことも無い」という回答が多いです。
私はこの状態こそ「素晴らしい」と感じるのです。
地方を代表する食べ物は、その現地に行かないと食べられない。クグロフもプレッツェルもフランス国内では西フランスや南フランスでは食べられないのです。
この時代に不便かもしれませんが、それぞれの地方がそれぞれの食文化に誇りを持って守り続けていく姿勢が見受けられます。
実際に私もアルザスにいた3年間は毎日クグロフをはじめとするアルザスにしか無いパンやお菓子を作っていました。しかしその後2019年から現在に至るまで暮らしているこのロワール地方では一切作っていません。
代わりにアンジェの名産品であるプルーンを使った夏だけのヴィエノワズリー「パテ・オ・プリュン」を作っています。そしてアンジェの地元の方々もこれが大好きです。
フランスのそれぞれの地方で見られる「地方食文化の伝承」や「地産地消」の考えが毎日の生活から感じられるフランス。
食に興味がある人、私の様な食いしん坊やフランス文化が好きな人を飽きさせることはありませんし、その素晴らしさを日本の皆さんと共有できることが私にとってとても嬉しいことです!
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