こんにちは。
突然ですが皆さんは「カヌーポロ」という水上の球技をご存知ですか?
カヌーポロとは、イギリス発祥のスポーツで、パドルと呼ばれる小型のオールで水をキャッチしながら専用の艇を自由に操り、5人1チームとなってボールを奪い合い、得点を競うゲームです。世界レベルになるとスピードもパワーも相まって「水上の格闘技」と言われています。
わたしは腰を据えてパン職人の道を歩むと決意する2004年までは、このカヌーポロの日本代表選手でした。カヌーポロに出会った青春真っ盛りの15歳の頃から、毎日明けても暮れてもカヌーの練習をした結果、技術向上だけでなく、忍耐力や精神力もついたと思います。
そしてその忍耐力と精神力こそが、現在のフランス生活でも多少なりとも役に立っているのではないかとうっすら思っています。
そんなわたしを育ててくれたカヌーポロの世界選手権がフランスで開催されると知り、わたしは先週末のお休みを利用して、北フランス Pas-de-Calais (パ・ド・カレ)県にある Saint-Omer (サン・トメール)という町にカヌーポロの世界選手権の観戦に行ってきました!
2年に1回行われるこの世界選手権は、各国で開催されています。 ポルトガル、ドイツ、ブラジルやカナダ、2004年にはなんと日本でも開催されました。 アジア圏で初めて開催されたこの日本大会は、日本選手団をはじめボランティアや地元の皆さんが一丸となり、それは素晴らしい大会でした。
今年2022年の世界選手権がフランスで開催されると知人から教えてもらった時は、わたしのなかでうずうずしていたカヌー熱を抑えることが出来ずに、気づいたら Saint-Omer までの往復チケットを購入していました。
わたしがフランスに初めて降り立ったのは、じつはパン研修や旅行ではなく、2003年のカヌー合宿の時でした。
当時の監督の教えで、「右も左も分からない若いうちに世界を見て来い」と背中を押され、20歳前後の選手6人だけでフランスの最北・Saint-Omer に武者修行に行ったことは今でも鮮明に記憶に残っています。
あれから19年が経ったいま、カヌー選手としてではなくパン職人としてこの地に再び立っていることはとても感慨深く、当時からずっと良くしてもらっている元フランス代表チーム選手達もそのことを喜んでくれています。
今大会は日本代表チームも試合に参加しており、昔馴染みのカヌー関係者にも会えたり、2003年のフランス合宿の時に一緒に練習をしたフランスの女子選手の1人が、今大会では審判として決勝戦でジャッジの笛を吹いていたりと、「時の流れ」を感じるのと同時に、今日まで繋がってこられた「縁」とは素晴らしいものだと再認識したのでした。
試合を観戦すると同時に、これまでの「縁」を振り返ってみて、ひとつ思ったことがあります。それは、日本にいながらもパティシエ、ブーランジェとして働くことは、すなわち「フランス」という国に間接的に触れているということ。
もしこれから渡仏を考えているパティシエやブーランジェの方が読んで下さっていたら、わたし自身の経験からお伝えしたいことがあります。
なかなか自分の思うように渡仏のタイミングが訪れず、もどかしくなってしまう時期があるかもしれません。でも、日本にいながらも身の回りにある「フランス」にアンテナを張って関わり続けることをどうか止めないで欲しいと思います。
フランス菓子・フランスパンを作る仕事に携わっていたり、フランスの食材を食べてみたり、フランス語を学ぶことや、絵画や映画を通してフランス文化を知ることなど、どんな些細なことでも「フランス」に関わり続けていれば「継続は力なり」で、自分のなかに財産として残ると確信しています。
そしてその「財産」は、実際に渡仏するときに、きっとあなたの心強い味方になってくれると思います。
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