近年のインフレの影響により、パン屋にとっての値上げは避けられない課題となっています。小麦・バターなどの原材料費は高騰し、さらに電気・ガスといったエネルギーコストも上昇。「もう限界…」と感じながらも、「値上げするとお客様が離れてしまうのでは?」と不安を抱えているお店も多いのではないでしょうか?では、実際にお客様はパンの値上げについてどう感じているのでしょうか?大切なのは、値上げの伝え方と、お客様が応援したくなるお店作り。本特集では、「どこまでの値上げなら許容されるのか?」をデータで分析し、実際にお客様が離れないための工夫を探ります。単なる「価格UP 」ではなく、「応援されるパン屋」になるための値上げTIPSを提案していきます!
アンケート対象
月に1回以上パンさんに行くパン好き主婦369人に追跡調査を実施
調査実施日:2025年2月
調査方法:インターネットリサーチ
調査元:株式会社グローアップ
目次
お客様の値上げに対する本音とは?
パン屋さんにとって、値上げは避けられない時代となりました。実際にお客様は値上げに対してどの様な反応を示すのでしょうか。
反して「行かなくなる」層は4.8%のみ「値上げ=即客離れ」は誤解!4.8%の「行かなくなる」層は値上げする際にあまり気にしなくてよい層かも!
「値上げ=即客離れ」は誤解?お客様の本音とは。
パン屋を経営するうえで、値上げは避けられない課題です。しかし、「値上げ=客離れ」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか? 実際のお客様が値上げについてどう考えているのか、アンケート結果をもとに分析しました。
まず、「行きつけのパン屋が値上げしたらどうする?」という質問に対し、約70%が「値上げの金額次第」と回答しました。つまり、値上げの方法次第では、お客様は納得してくれる可能性が高いということです。また、「行かなくなる」と答えた人は約5%とごく少数派。値上げ=即客離れとは限らないことがわかります。一方で、「変わらず通う」と答えた人も約20%程おり、一定数のお客様は値上げ後も変わらず購入し続けることが予想されます。これはお店自体に強いファン層が一定数存在していることがわかるので、お店のパンの金額以外の部分で、方針を大きく変えなければ、今後も通い続けてくれることがわかります。
お客様にお伝えする際のポイント
・「材料費の高騰」だけではなく、パンの品質向上やお店の努力を伝える
・「値上げによって、お客様にどんなメリットがあるのか?」を明確にする
・事前にSNSや店頭で丁寧に説明し、不意打ちの値上げにならないようにする
値上げの理由を伝えることが値上げ後も通ってもらうカギ!
パン屋の値上げに対する消費者の意識をさらに深掘りしてみましょう。「パン屋が値上げをする際に理由を知りたいか?」という質問では、約60% が「知りたい」と回答しました。「どちらでもよい」と答えた人は35% 程度で、特に気にしない層も一定数いますが、「知りたくない」と答えた人はわずか5.8% 。
つまり、お客様の多くは「価格が上がること自体」よりも、「その理由を納得できるか?」を重視していると言えます。消費者はなぜ値上げの理由を知りたがるのでしょうか。日々の買い物の中で、消費者は価格変動に敏感です。特にパンのように日常的に購入する商品は、「なぜ値上げしたのか?」を気にする人が多く、その理由が分かれば受け入れやすいという心理があります。理由が分からないまま値上げが行われると、「ただの値上げ」だと感じられてしまい、不信感を抱かれることもあります。しかし、明確な理由があれば、お客様との信頼関係を維持しやすくなります。
「値上げの理由を知りたい」と答えた約60%の人は、単に値段だけで購入を判断するわけではなく、お店の方針や商品の価値を理解したうえで購買行動を決めたいと考えている可能性が高いです。よって、消費者への伝え方も単に「値上げします」だけでは納得してもらえないことが分かります。
実際にどの程度の値上げなら、許容される?
お客様は、実際いくらまでなら値上げに許容できるのか。食パンを基準にして値上げ金額の上限を聞いてみました。
・全国的に20円~30円の値上げは許容度が高め
・+50円以上の値上げにも許容する層は一定数いるが、付加価値が必要かも
「どこまでの値上げなら許容される?」食パンを基準に分析!
今回のアンケートでは、値上げ許容範囲の質問を「食パン」に限定して行いました。その理由は、食パンはほとんどのパン屋が扱っている基本的な商品であり、お客様にとっても価格比較がしやすいからです。菓子パンや総菜パンは店舗ごとに特徴が異なり、価格の基準が曖昧になりがちですが、食パンであれば「普段の価格と値上げ後の価格」を具体的にイメージしやすく、消費者がどこまでの値上げなら納得できるのかを測る指標となります。
では、具体的にどの程度の値上げなら受け入れられるのでしょうか?アンケートの結果、「+20円〜+30円」の値上げは比較的受け入れられやすいことが分かりました。特に、「+20円の値上げ」は約30% 、「+30円の値上げ」は約24%と、消費者の許容範囲のボリュームゾーンになっています。これは、近年の物価高騰の影響で、「多少の値上げは仕方ない」と考える層が一定数いるためと考えられます。
一方、「+50円以上」の値上げとなると、お客様の心理的ハードルが一気に上がる傾向が見られました。例えば、「+50円の値上げ」を受け入れると回答したのは約21%にとどまり、「+60円」以降の許容率は急激に低下しています。つまり、+50円を超える値上げを行う場合は、「なぜこの価格にしたのか?」という明確な説明や、価格上昇に見合う付加価値の提示が必要不可欠になるでしょう。
例えば、以下のような付加価値の提示あれば、お客様の納得感を高めることができます。
①品質の向上を伝える。価格が上がることでどのような価値が増えるのかを明確にすることが大切です。例えば、「より高品質な小麦粉を使用」「発酵時間を見直し、さらにしっとりとした食感に」といった情報を伝えることで、値上げに対する納得感が生まれます。
②ボリュームやサービスの変化。価格が上がるなら、それ相応のお得感がほしいと考える消費者も多くいます。そこで、「1斤のサイズを少し大きくする」「ポイントカードの還元率をアップする」など、値上げとともに消費者がメリットを感じられる工夫をすることで、心理的ハードルを下げることができます。
③ストーリー性を持たせる。「ただ値上げする」のではなく、そこにストーリーを加えると、消費者の共感を得やすくなります。「地元の生産者を応援するために原材料を変更」「国産バター100%使用で環境にも配慮」といった背景を伝えることで、「この値上げには意味がある」と納得してもらいやすくなります。
応援したい店になろう値上げが受け入れられるための工夫
「単なる値上げ」に終わらせず、お客様に納得してもらい、さらに「応援したくなる店」として継続的に選ばれるための工夫を考えていきます。
今まで通りの値段で購入できるという選択肢が必要。
また商品のグレードアップ等の理由での値上げなら消費者は納得しやすい。
店員の対応やお店の雰囲気などお客様は商品以外でもお店選びをしている。
「応援される店」になるための値上げの工夫
パン屋にとって値上げは避けられない選択ですが、それをどう伝え、どのような工夫をするかで、お客様の受け止め方は大きく変わります。アンケート結果からも、お客様が値上げを受け入れやすくするポイントが見えてきました。
まず、お客様が求めるのは「すべてのパンが一律に値上げされるのではなく、変わらず買えるものがあること」です。看板商品や食パンなど、日常的に購入されるパンの価格を据え置くことで、「この店ならまだ通える」と感じる安心感につながります。価格維持が難しい場合は、セット販売などで実質的な負担を減らす工夫も有効でしょう。
また、お客様は「値上げの理由」にも敏感です。ただ「原材料費の高騰」と伝えるだけではなく、「国産小麦を使用し、より風味豊かに」「発酵時間を見直し、しっとり感をアップ」といった具体的な説明があると、値上げを前向きに受け止めてもらいやすくなります。さらに、お客様が「応援したくなるパン屋」の特徴として、「こだわりの商品がある」「店員の対応が気持ちよい」「お店の雰囲気が良い」などが挙げられています。特に、スタッフの対応やお店の雰囲気は、価格以上に「この店で買いたい」と思わせる大切な要素です。値上げの際には、価格だけでなく、接客やお店の魅力を改めて強化することが、リピーターをつなぎとめるポイントになります。また、「値上げ=負担増」と感じさせない工夫も重要です。ポイントカードの還元率アップや、一定額以上の購入で特典を付けるなど、価格上昇とともに「ちょっと得した」と思える施策を取り入れることで、お客様の満足度を高められます。加えて、期間限定キャンペーンやイベントの開催も、値上げに対する心理的なハードルを下げる方法のひとつです。「新価格導入記念」の試食会や、特別セットの販売など、値上げを新しい楽しみにつなげることで、ポジティブな印象を与えられます。
「値上げ=仕方がないもの」と捉えられるのではなく、「それでもこの店を応援したい!」と思われることが、長く愛されるパン屋の条件です。