・消費者アンケート対象
月1回以上パン屋さんに行くパン好き主婦1008名のうち444名に追跡調査
・同業者アンケート対象
ベイクポートの「職人のホンネ」に回答した製パン製菓職人112名
目次
パン屋さんの人手不足事情と抱える課題とは?
BAKEPORTの「職人のホンネ」に寄せられた声から判明したパン屋さんの人手不足事情について考えてみます。
パン屋さんも人手不足に悩んでいる
「最近、人が本当に採れないんです」――これは、BAKEPORTの「職人のホンネ」に寄せられた声の一つです。パン業界における人手不足は深刻さを増しており、実際に行った「職人のホンネ」のアンケートでも「人手が不足している」と答えたお店は78%にものぼりました。
その原因として挙げられたのは、「労働環境が厳しい 」「採用しても定着しない」「求人を出しても応募が来ない」「賃金が低い」といった声。要するに、「来ない・続かない・つらい」という三重苦が、多くのパン屋の現場を悩ませているのです。
課題を大きくわけると、
①求人に応募が来ないのであれば、このお店で働きたいと求職者に思ってもらう必要性
②採用しても定着しないのであれば、新人が業務に適応しやすい環境を作る必要性
③職場環境が良くないのであれば、既存従業員も働きやすいと感じられる環境を作る必要性
これらの課題に対して、どのような対策ができるのでしょうか。
ひとつは、「既存の人員で回せる仕組みをつくる」ことです。課金する対策としては、効率化機械の導入や一部工程の外注化が有効です。一方で、無課金でもできる方法として、製法の見直しで時短を図ることや、誰でも扱いやすいレシピにすることで省力化を目指す店舗も増えています。定休日を増やして労働負担を軽減するなど、働き方の見直しも効果的です。
もうひとつは、「新規人材を確保すること」です。こちらも課金対策としては、時給アップや求人広告の出稿、外部人材(業務委託など)の活用が挙げられます。対して、SNSでの発信による採用や、既存スタッフや業界関係者からの紹介といった無課金でも取り組める方法もあります。
人材確保の難しさは、今後ますます高まっていくと予想されます。だからこそ、「働いてみたい」「ここなら続けられそう」と思ってもらえる環境づくりが、今のパン屋に求められていると言えるでしょう。
この特集では既存人材をうまく活用している事例や、新規人材獲得に成功している事例を紹介します。またパン屋さんに通うパン好き主婦にも、どんなお店で働きたいかのアンケートをとっているので、お店の求人戦略の参考にしてくださいね。
人手が足りなくてもできる工夫 なるべく業務効率化するには
人手が足りない現場でも工夫できることがあるのではないか、「職人のホンネ」や取材先のシェフから伺った工夫を考えていきます。
現場の声から見えてきた業務効率化アイディア集
人手不足でも現場を回す工夫は可能です。たとえば、冷凍素材や既製品フィリングの活用、原料の見直しで仕込み時間を削減する店舗も増えています。レシピを簡素化し、成形やトッピング工程を減らすことで、誰でも一定の品質を保てるようにする工夫も有効です。
一部のパンを包餡するのではなく「見せる」成形に変えたことで、包餡技術が未熟なスタッフでも作れるように工夫する事例もあるようです。製法そのものを見直し、発酵時間や仕込みのタイミングを調整して作業をまとめる時短術もあります。
複数店舗を持つ店では、セントラルキッチン化による集中製造で業務効率を高めることができます。1店舗を製造拠点にし、他店に冷凍生地などを供給するやり方もあります。また機械などの設備を整備することが大切です。新規機械の導入だけでなく機械の入れ替えもすることで効率改善につながります。現場ごとの工夫が、持続可能なパン屋づくりの鍵になっています。
人材定着に関わる15要素
働き手の視点でその職場のパン屋さんで働き続けるかどうかを考えるときに考えるポイントを15 要素まとめています。
お客様があなたのお店の従業員に⁉求められるお店像とは
パン好き主婦のアンケートによると、パン屋さんで働くことに興味を持っている人がいることが判明しました。どんなお店で働いてみたいと思うのでしょうか。
待遇よりもお店の雰囲気を気にしている
パン好き主婦を対象としたアンケートで、「パン屋さんで働いてみたい」と感じたことがある人は過半数超えの55.9%にのぼりました。「身近なお店で募集が出ていたら気になる」と思うお客様がいそうです。
お店の未来の仲間はお客さまの中にいるのかもしれません。「パン屋さんで働いてみたい」と感じる要素として最も多かったのは、お店の雰囲気が良いことや、店長・スタッフの人柄の良さでした。待遇よりも、日常的に接する空気感を重視する人が多いことがわかります。
やってみたい業務については、「製造補助(65.7%)」が最多で、レジや販売(37.9%)、POPやSNS作り(24.2%)、新商品のアイディア出し(26.6%)などにも興味が集まりました。
求人広告だけでは伝わらない、このお店で働いてみたい と思わせる日々の雰囲気づくりこそが、実は採用の第一歩なのかもしれません。