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2026.08.25

フランスからつづる!パティシエ通信 by 源波慎一郎 Vol.4「パティスリーだけじゃない、私の仕事について」

chefno パティシエ通信

皆さま、ご無沙汰しております。
季節も夏真っ盛りとなり、日本では暑く過ごしづらい日が続いているかと思います。

今年の6 月はヨーロッパ全体が熱波に見舞われました。 私が暮らしているフランスのオーヴェルニュ地方、特に山間の地域では、一週間猛暑が続いたかと思えば次の一週間は肌寒い日が続いたり、突発的に大雨が降ったりと、安定しない気候で少し過ごしにくい時もありました。

さて、今回のテーマは、これまであまり詳しく説明してこなかった、私の日々の仕事や学校で提供している授業のコースについて、概要ではありますがご紹介できたらと思います。

私が勤務している学校、École Nationale Supérieure de Pâtisserie(通称ENSP)は、1984年に国立の製菓学校として設立された学校です。 2007 年にはアラン・デュカスグループの製菓学校となり、École Ducasse(エコール デュカス)と呼ばれることもあります。ÉcoleDucasse には主に校舎が2つあり、一つはパリ、もう一つは私が住んでいる街Yssingeaux(イッサンジョー)にある校舎になります(記事トップの写真が、Yssingeaux 校舎の外観です )。 パリ校は主に料理人に向けたコースが充実しており、Yssingeaux 校は元の学校の成り立ちもあり、パティスリーのコース専門で授業を行っています。

Yssingeaux 校では、フランスのパティシエ国家資格であるCAP のコースに加え、3 年制のDSAP(Diplôme Supérieur des Arts Pâtissiers)のコースがあります。その他にもインターナショナルクラスとしてFrench Pastry Arts Diploma があり、さらに海外のパティスリースクールのカリキュラムの一環として、2~3 ヶ月間のペストリートレーニングコースを受け入れることもあります。

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▲3年制のDSAPプログラムの生徒と、Desserts regionals(郷土菓子)の週に作成したお菓子

また、フランス語で行われるコース、英語で行われるコースそれぞれに、ショコラトリー、グラスリー、ブーランジュリーのコースも用意されています。

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▲8ヶ月のDAPプログラムのグラスリーの授業で作成したアントルメグラッセのビュッフェ

いくつかのコースでは学校での授業に加え、1 ヶ月から最大6 ヶ月の研修期間が設けられており、生徒は自身の希望するパティスリーやホテル・レストランなどで研修を行うことができます。取得する資格によっては一定期間の企業研修が義務付けられていることもあり、その研修期間を全うできるかどうかが資格取得の可否を左右することもあります。

ここまでが学校が提供しているコースの、大体の内容になるのですが、ここからは私が日々どのような仕事をしているかを紹介します。
現在私が主に担当しているのはフランス語コースと英語コースのパティスリーの授業です。基本的に全講師は毎週担当するコースやクラスが変わるので、週によってはショコラトリーやグラスリーのクラスを担当することもあります。パティスリーの授業といっても、授業で制作するアイテムの種類はとても広く、焼き菓子、生菓子、ヴィエノワズリー、ウェディングケーキ、飴細工、チョコ細工、前回ご紹介したクロカンブッシュなど多岐にわたります。

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▲外部講師によるプロフェッショナルブーランジェ向け講習会のビュッフェ

各コースの授業はまずベーシックなアイテムの作成から始まります。基本技術を使うアイテム、クラシックなお菓子や焼き菓子などのシンプルなものから始まり、複雑な構成のものや現代的な凝った絞りや様々な凝固剤を使用したものなど、徐々にレベルを上げていけるようなプログラムになっています。

アイテムのラインナップの中には、これまでの経験の中で私自身作ったことのないアイテムが含まれていることもあり、そのようなアイテムをその週の課題の中に発見した時は、少し冷や汗をかくこともあります。もちろん授業で生徒に教える前に、あらかじめ自分自身で試作をしたり、すでに何度もそのアイテムを作ったことがある講師に作業手順、ポイントなどを聞き、生徒にしっかりと教えられるように準備をして授業に臨みます。

▲DSAPプログラムの生徒と、1週間を通してさまざまな基本の生地を使って制作したお菓子のビュッフェ

授業は実技だけではなく、製菓理論の講義も行っています。もともと自分の目の前で起きている材料の状態の変化や、なぜこのような結果になるのかを考えるのが好きなので、製菓理論について述べるのは得意だったのですが、これをフランス語や英語で生徒に説明し理解してもらうとなると、なかなか一筋縄ではいきません。実際、現場で使うフランス語や英語の単語以上に、専門用語をしっかりと理解していないと説明できない部分が多く出てきます。そのため、外国人講師としてしっかりと各言語で説明できるよう、講義の授業に関しても自分自身の予習や準備がとても大切になってきます。
かなりざっくりとではありますが、私の仕事については紹介できたかと思います。今まで私が働いてきたパティスリーやレストランの現場の仕事と大きく違うのは、生徒が今まで作れなかったものを作れるようになったり、分からなかったものが分かるようになったりする、人の成長そのものが仕事の成果であるということです。これはお菓子作りに関してだけの話ではなく、例えばクラスの中には人より仕事が早い人・遅い人、自己中心的な人、人より緊張してしまう人・逆に緊張感がなく授業中でもふざけてしまう人など、生徒それぞれの個性をよく観察し、時にはリーダー的な生徒に周りの補助をお願いしたりしながら、クラスの全員がバランスよく成長できるように授業をオーガナイズすることがとても大事になってきます。

ここまでで、おそらくご覧になっている日本の読者の方の中には私の語学力がとんでもないレベルなのではないかと思われる方もおられるのではないかと思うのですが、実際のところフランスの大学などに通われている方などに比べたら語彙力の範囲はかなり限定的ですし、文法なども間違うことは多々あります。英語に関して言えば、大学卒業以来ほとんど使う機会がなく最近になって改めて勉強をしなおし始めたところです。

日々困ることも多々ありますが、コミュニケーションは言葉以外にもジェスチャーで補うこともできますし、外国に行くと多くのネイティブではない人が違う言語圏で生活しているので、ある程度の単語や文法を習得しておけばあとは場数をこなしながら学んでいくしかありませんし、失敗も成長のための栄養になります。特に英語に関しては、授業に関連する単語や言い回しを事前にかなり予習して臨んでいます。さらには、生徒たちにちゃんと理解できたかを確認しながら授業を進めていて、毎回「伝わってよかった」と心の中で安堵しています(汗)。

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▲DSAPプログラムの3年生の生徒と、飴細工とチョコレート細工の合同ビュッフェ

約2 年間勤務する中でいくつもの問題を抱えたこともありますが、周りの協力を得ながらここまでやってくることができました。生徒だけでなく自分自身も成長する機会をたくさんもらえる環境なので、これからもより良い授業を行えるように頑張らなければと思います。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!!
À bientôt!!

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Writer
源波 慎一郎
源波 慎一郎
フランスにきてもうすぐ10年、パティシエになってまもなく20年になります。 今もお菓子作りに対する情熱は冷めず、若いパティシエの卵たちと経験・知識を 共有するためにフランスの製菓学校で講師として勤務しています。 フランスのお菓子にまつわるお話や特徴的な文化のお話などをご紹介していきたいと 思っています。
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