こんにちは。
先日南フランスの、とある小さな街を訪れました。今回はそのお話です。
皆さんご存知「タルト・トロペジエンヌ」発祥の地、Saint-Tropez (サントロペ)からおよそ30キロ北上したところにあるLa Motte(ラ・モット)という街。人口3000人にも満たないこの小さな街は、南フランス独特の、赤褐色の小さな建物がぎゅっと詰まって立ち並ぶとてもキュートな街で、どこを切り取ってもすべての風景が絵になる魅力的な街です。周りは広大なワイナリーに囲まれていて、地元でつくられたロゼを実際にいただくと、すっきりした甘さでとても美味しかったです。
ここにはわたしが2009年にSaint Laurent du Var (サン・ローラン・デュ・ヴァール)という街の「Boulangerie Pâtisserie LE PALAIS DU SUCRE (ル・パレ・デュ・シュクル)」というお店で1年間、大変お世話になった当時のオーナーシェフが暮らしていて、今回はシェフとそのご家族に会いに行きました。
※お父様の代から40年間続いた「LE PALAIS DU SUCRE 」は2015年で一旦閉店し、現在は全く別のオーナーさんが同名でお店を経営されています
当時私は、オーナーシェフでパティシエのJean-Jacques CÉVA (ジャンジャック・セヴァ)さんと、そのお父さんでありM.O.F パティシエのCharles CÉVA (シャルル・セヴァ)さんにとても可愛がっていただきました。
私はブーランジェールですが、飴細工の引きかたを教えてもらったり、フランス菓子のことや南仏の文化、言葉、暮らしなど、仕事以外のこともたくさん面倒を見てくださいました。当時、ワーキングホリデービザを利用して初めてフランスで働いたあの1年間は、この方々がいたからこそとても充実した日々だったと今でも思います。
そんな有り難くも貴重な経験が背景にあるので、Jean-Jacquesさんに会ったときは当時の素晴らしい思い出がよみがえって感慨深くなりました。嬉しいことにJean-Jacquesさんも、これまで何人も受け入れた日本人ワーホリ職人のなかで私は特に印象深かったそうです。(良い意味でだといいのですが笑)
お父さんのCharlesさんは残念ながら 2018年に他界してしまいました。それでも私の心のなかには今でもずっと、当時25歳の若造の私に「人生とはなにか」を教えてくれたCharlesさんがいます。
「仕事はとても大事。でも人生で最も大切なものは家族だよ、芽衣(わたしです)。日本のお母さんには毎日でも連絡しなさい」と、当時仕事のことしか考えていなかった私の頭を柔らかくしてくれたのがCharlesさんでした。
定年でお店を売却したJean-Jacquesさんは、現在ではこの街でゆっくり暮らしています。
今回は6年ぶりに再会したので、思い出話はもちろんですが、これから自分のお店を持とうとするわたしにフランスでの経営についていろいろと教えてくれ、私の開業するパン屋さんの名前についても一緒に考えくれて、長い時間「う〜ん」と唸っていました(笑)
わたしがお世話になった2009年から10年以上経った今でもこうして良い関係でいられるのは本当に有り難いことです。そしてJean-Jacquesさんは「LE PALAIS DU SUCRE」でずっとお店入り口の取っ手部分として使われていためんぼうを「芽衣の開業するお店の扉に使いなさい」と、渡してくださいました。こんな誇らしい事はありません。
「LE PALAIS DU SUCRE」は残念ながら2015年に閉店してしまいましたが、私がJean-JacquesさんとCharlesさんの熱い想いと優しさを受け継ぎ、このフランスでの自分のお店作りや商品に反映していきたいと強く思った今回の訪問でした。
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