こんにちは。
つい先日のお話です。フランス全国ブーランジェ連盟のドミニク・アンラクト会長が、兼ねてから掲げてきた「バゲットをユネスコ無形文化遺産登録へ!」の目標が遂に成し遂げられました。これは快挙で、「バゲット」そのものに留まらず、「Les savoir-faire artisanaux = アルティザン(職人)の技術」と、「La culture de la baguette de pain =フランスのパン文化」がユネスコの無形文化遺産に登録された!という事なのです。
以前の「ブーランジェ通信Vol.10」の中で少し触れた、フランスにおけるパン職人の危機。その課題解決の糸口は未だ見つかっていません。
しかし、この度文化遺産に登録された事は、若い職人のモチベーション向上や、パン離れ傾向にある消費者達の関心を集め、世界をも巻き込んでフランスパン文化を盛り上げていこうという大きなきっかけになります。
「フランス全国ブーランジェ連盟(Confederations Nationale de la boulangerie et Boulangerie-Pâtisserie Française)」が開催する「全国バゲットトラディションコンクール」で、私は2017年に賞を頂きましたが、その頃の自分は恥ずかしながら同連盟が既に文化遺産登録に向けて動いていることを全く知りませんでした。
2018年にエリゼ宮に招待されたアンラクト会長が、壇上でマクロン大統領に対し「ユネスコ無形文化遺産登録申請のお願い」と題したスピーチをした瞬間、私はことの大きさを理解し、フランスにおける「パン」とは「文化」のひとつなのだと実感しました。
あれから4年。様々なコンクールが開催される度に、アンラクト氏は「パン・バゲット・パン職人の永続」を熱心に語りました。ラジオをはじめとする色々な媒体に赴いては署名を呼びかけ(私も署名させていただきました)、今年2022年11月その努力が実り、遂にユネスコ無形文化遺産登録が成し遂げられたのです。
小麦粉・酵母・水・塩、そして職人の技術の5つの材料で作られるバゲットは2つとして同じものはありません。その技を、その概念を、これからずっと先の未来にも繋げていける役割を果たせることは、。1人のパン職人としてこんなに幸せな事はありませんし、これは一種の芸術とさえ思います。
日本でもフランスでも、世界のどこでも、パンに携わっている皆さんとこの想いを今こうして共有出来ることに感謝します。
Vive la France !! Vive la Baguette !!(フランス万歳!バゲット万歳!)