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2022.12.09

フランスからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 芽衣 Vol.45「バゲットがユネスコ無形文化遺産へ登録されました!」

こんにちは。

つい先日のお話です。フランス全国ブーランジェ連盟のドミニク・アンラクト会長が、兼ねてから掲げてきた「バゲットをユネスコ無形文化遺産登録へ!」の目標が遂に成し遂げられました。これは快挙で、「バゲット」そのものに留まらず、「Les savoir-faire artisanaux = アルティザン(職人)の技術」と、「La culture de la baguette de pain =フランスのパン文化」がユネスコの無形文化遺産に登録された!という事なのです。

Boulangerie-Pâtisserie Française) 会長のドミニク・アンラクト氏

▲フランス全国ブーランジェ連盟(Confederations Nationale de la boulangerie et Boulangerie-Pâtisserie Française)会長のドミニク・アンラクト氏

以前の「ブーランジェ通信Vol.10」の中で少し触れた、フランスにおけるパン職人の危機。その課題解決の糸口は未だ見つかっていません。

しかし、この度文化遺産に登録された事は、若い職人のモチベーション向上や、パン離れ傾向にある消費者達の関心を集め、世界をも巻き込んでフランスパン文化を盛り上げていこうという大きなきっかけになります。

「フランス全国ブーランジェ連盟(Confederations Nationale de la boulangerie et Boulangerie-Pâtisserie Française)」が開催する「全国バゲットトラディションコンクール」で、私は2017年に賞を頂きましたが、その頃の自分は恥ずかしながら同連盟が既に文化遺産登録に向けて動いていることを全く知りませんでした。

2018年にエリゼ宮に招待されたアンラクト会長が、壇上でマクロン大統領に対し「ユネスコ無形文化遺産登録申請のお願い」と題したスピーチをした瞬間、私はことの大きさを理解し、フランスにおける「パン」とは「文化」のひとつなのだと実感しました。

あれから4年。様々なコンクールが開催される度に、アンラクト氏は「パン・バゲット・パン職人の永続」を熱心に語りました。ラジオをはじめとする色々な媒体に赴いては署名を呼びかけ(私も署名させていただきました)、今年2022年11月その努力が実り、遂にユネスコ無形文化遺産登録が成し遂げられたのです。

▲毎年1回開催される全国バゲットトラディションコンクール。一般客も観覧できる中開催されるこの大会の目的は、パン職人の仕事・パンの文化に触れてもらうこと、職人同士を切磋琢磨させてフランスパン業界を盛り上げること、などがあります

▲なんとバゲットがユネスコ無形文化遺産に登録された事を受け、私の写真がフランスの新聞に掲載されました。名誉な事です…。素晴らしきパン文化を、日々のお客様をはじめ、フランス・日本中の方々にお伝えできる様に務めていきます

小麦粉・酵母・水・塩、そして職人の技術の5つの材料で作られるバゲットは2つとして同じものはありません。その技を、その概念を、これからずっと先の未来にも繋げていける役割を果たせることは、。1人のパン職人としてこんなに幸せな事はありませんし、これは一種の芸術とさえ思います。

▲一人一人考えや性格が違う様に、同じ材料を使っても職人によって全く違うバゲット。これぞ「Les savoir faire artisanaux アルティザン(職人)の技術」。その「唯一無二」のパンをこれからも愛情持って作り続けていきたいです

日本でもフランスでも、世界のどこでも、パンに携わっている皆さんとこの想いを今こうして共有出来ることに感謝します。

Vive la France !! Vive la Baguette !!(フランス万歳!バゲット万歳!)

 

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成澤 芽衣
成澤 芽衣
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2017年 フランス全国バゲットトラディションコンクール 優勝。 現在はフランスでフリーランスのパン職人として活動する傍ら、日本でのイベントや、東京にあるベーカリーでパンの監修をさせていただいております。 フランスから私なりの視点で、パンのこと、普段のことなどなど。 生のフランス情報をお贈りします。
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