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2022.01.19

ここはコインランドリー?それともドーナツ店? 新たな収入を得る併設型店舗の魅力に迫る

今回は、ベーカリーやパティスリーとは異なる業種のお店が併設された、新しいスタイルの「併設型店舗」についてご紹介します。

ここ最近、異なる業種のお店が併設された新しいスタイルの併設型店舗が、少しずつですが全国で増えてきました。
本来の利益とは別に、併設された店舗からも収益を生み出すことができ、さらに違う目的で来店されたお客様を呼び込むことができる事から、相乗効果が高い運営スタイルだと言えます。

今後、
「独立して店を開業したい」
「そろそろ2店舗目を構えたい」

と新たに店舗を構えようと思われた際に、一つの選択肢としてこのスタイルを参考にしても面白いかも知れません!

 

異業種でも併設型にすることで新たな相乗効果が?

今回は、その好例として北海道帯広市にあるドーナツ専門店「もくもく堂」さんをご紹介します。
同店には、「IDOBATA Laundry」というコインランドリーが併設されており、コインランドリーの待合場所で飲食が可能です。
洗濯物が洗い上がるのを待つ間に、もくもく堂さんでドーナツや飲み物を買って、ランドリー内のスペースで飲食する事が可能なんです。

一見関係ないと思われそうな業種でも、併設型にすることで、それぞれの店舗を利用するお客様にとってもメリットがあり、運営側としても収益源がドーナツ店とコインランドリーの二つがあるというのも大きなメリット。

一見するとコインランドリーととわからないおしゃれな外観

「IDOBATA Laundry」は、白を基調とした広々として清潔感のあるコインランドリーで、洗濯が終わるのを待つ間にのんびりカフェタイムを楽しむことができます。
よくあるコインランドリーとは見た目が全く異なるので、もくもく堂のドーナツを目的に訪れた人が、初めてランドリーの存在に気づくということが多いそう。

それもそのはず、こちらの併設型ランドリーは、2016年の創業以来、全国で100店舗以上のランドリーを展開しているBaluko Laundry Placeやパートナー店舗の出店を手がけてきたOKULABがプロデュースしているからです。

たかが洗濯だと思うなかれ、OKULABが提案するのは、“洗濯がもっと楽しくなる”をコンセプトとした、上質な時間を提供するランドリーなのです。

洗濯機はもちろん洗剤にまでとことんこだわっており、必要に迫られて利用したという人が一度体験するとすっかりファンになってリピートしてしまうのだとか。

2021年6月4日にお店がオープンしてから、およそ8ヶ月。ランドリー併設型のカフェにしたことで、集客面や売上にどのようなメリットがあったのかをお伺いしていきます。

 

気になる運営面や集客傾向は??

お店にはどのような方が訪れているのでしょう?

ランドリーを利用される方は、主に20代後半から30代の小さなお子さんがいる方ですね。
あとは、お布団を洗濯するために、年配の方もよく利用されています。
ドーナツ店に来られる方は、若い人から年配の方まで幅広いです。

洗濯目的で来られた方がドーナツを食べながら待ち時間を楽しんでもらえるように店舗設計をしたのですが、実際オープンしてみたら地元にドーナツ店が少なかった為か、ドーナツ目当てで来る方のほうがずいぶんと多いようです(笑

ランドリー内には居心地のいいスペースがたくさんあります

オープン当初はお店の外にまでずらりと長蛇の列ができ、なかにはまとめ買いをする方も多く、600個のドーナツが午前中にすべて完売してしまうような状況でした。
最近は、製造数を増やしたこともあり、15時〜16時ぐらいまではお店を開けられています。

多くのお客様がドーナツ目当てに来店いただいたおかげで、同じ建物内にランドリーが併設されていることが認知され始め、ランドリー利用者が徐々に増えてきました。
でもまだまだ、ランドリーの利用者は少なくドーナツ目当ての人が9割ですので、ランドリーをPRする活動は必要不可欠です。

ドーナツの種類も豊富でたくさん買われる方が多いそう

ドーナツ大人気ですね。ドーナツのこだわりポイントや、どの辺りから来られる方が多いのかを教えてください


ドーナツは札幌にあるベーグルとドーナツの専門店のふわもち邸が監修していて、その名の通りふわふわもちもちした食感が特長です。
食材には、じゃがいもや北海道産小麦などを使っています。

また、ドーナツは沢山購入される方が多い印象があり、手土産として、そして冷凍保存出来ることから、ご自宅用としても購入されています。

ランドリー利用者は3キロ圏内に住んでいる方がほとんどです。
一方ドーナツ店は、テレビで紹介されたこともあって、札幌や釧路と遠方から来られるお客様もたくさんおられます。

 

お店の内装ですが、随所にこだわりを感じられてとてもおしゃれですよね。店舗設計は、どのように決めたのでしょう?

もくもく堂の店舗設計もドーナツの監修をしてくれている「ふわもち邸」が担当し、内装を北欧テイストにしつつも、ところどころに和のエッセンスを取り入れています。

ドーナツを買ってすぐに扉の向こうにあるランドリー兼カフェスペースへ移動が可能

また、店名の「もくもく堂」が雲を連想させるので、カウンターは空色の目地に半円形のタイルをあしらった雲をモチーフにしたデザインに。
あとは、カラフルなドーナツの色味が引き立つように、極力色味を抑えたシンプルな内装を心がけました。

特にこだわったのがドーナツラックで、ドーナツが美味しそうに見えるようにショーケースの中にライトを入れているんです。

店舗に入ってすぐに目に飛び込んでくる、ライティングにこだわったショーケース

ランドリーの方は、こちらのイメージをお伝えした上で、施工会社の方にお任せしました。
「IDOBATA Laundry」という名前の通り、地域の方々が男女問わず気軽に集まって井戸端会議を楽しめるようなランドリーになってもらえたらという想いを込めてデザインしました。
その象徴としてお店の中心部に、真ん中をくり抜いて木を囲むようにデザインされた、ドーナツ型の大きなテーブルと、カラフルなテキスタイルの椅子を置きました。

「IDOBATA Laundry」のシンボルとなっているドーナツ型の巨大テーブル

また洗濯の待ち時間にパソコン作業ができるように、コンセントを完備したカウンターや4人掛けテーブルも配置しています。さらにお子様連れのお客様にも滞在していただけるようにと、キッズスペースも設けています。

コンセントを完備したテーブル。PCやスマホを充電しながらドーナツを食べて洗濯の洗い上がりを待つことができる

ランドリー奥に設置された北欧調のテーブル席

ここはもともとはコンビニの跡地で家賃はそこまで高くない場所だった分、外装と内装にはお金をかけられたので、競合となるお店との差別化をはかるために、圧倒的にお洒落なお店にしようと思い今回のようなコンセプトになりました。

 

併設型店舗を運営してみて感じたこと

開店してみてよかったと思うことはなんでしょう?

帯広にない運営スタイル(ランドリー併設)の店舗を作れたのはやはりよかったと思います。
競合店との差別化もできますし、ドーナツ店とランドリー双方向からの集客ができるのは売り上げアップと販促効果もありますしね。

それに、需要があるエリアだと思い選定したこの場所も良かったと思います。
大手のドーナツ店も車で20分ぐらい離れているのと、個人の飲食店も2〜3店舗ぐらいしか店舗周辺にはないので開店当初から多くの方に来店いただいいております。

もちろん、ドーナツの監修をしてくださったふわもち邸さんのネームバリューのお陰で、オープン当初から話題になったのも集客面でとても大きかったです。

 

逆にもっとこうすればよかったということはありますか?

初めてのランドリーカフェの運営でしたので、沢山あります!強いて言うならば、ドーナツ店とランドリーとの仕切りを取り払いたかったですね。これは保健所の方から仕切りがないとダメだと言われてしまったので仕方がないのですが、その結果今のような、もくもく堂とランドリーの間に扉がある設計になっています。

扉の奥がもくもく堂の店先

あとは、もくもく堂が入ってすぐショーケースがある作りなのですが、店舗の窓からショーケースが近すぎて、日差しが強い日はドーナツのチョコレートが溶けるというのは予想外でした。

 

併設型店舗を考える際のポイント!そしてもくもく堂の今後は

今後、同じような併設店を考えられている方に、土地探しのポイントや集客の上でアドバイスがあれば教えてください

郊外の場合、ランドリー目的で来る方はほぼ車でいらっしゃるので、洗濯機の設置台数と同じかそれ以上の駐車スペースが必要だと思います。あとは、集客する上では、住宅街に近い場所がいいでしょうね。

ランドリーの客足は天気に左右されるのだろうと思っていたのですが、実際は晴れているときでも乾燥目的で利用される方が多いですね。
ただ、やはりランドリーには設置工事にもかなり資金投資が必要なので、その点は考慮して検討される方が良いと思います。

 

もし2店舗目をオープンされるとしたら、こんなことがやりたいなどありますか?

イートインスペースをちゃんと設けたいと思います。借りる場所によってどうしても制約が出てしまうようなのですが、今回のような店舗同士の仕切りをなくして、もっと広々とした空間のお店にしたいですね。

あとは、ブランドロゴを入れたランドリーバッグやTシャツなど、お洒落なグッズを作って販売したいです。2店舗目を作るならば、そういった販売スペースも設けられるように設計したいですね。

 

取材を終えて

ランドリー併設型のカフェは、一見すると関連性のないまったく異なる事業ではありますが、空間の有効活用と洗濯待ちをする人たちのすきま時間にフォーカスしたことが、一つのポイントだと感じました。

まだまだ販促が足りないと取材時におっしゃっていましたが、それぞれのお店に訪れた人が、もう一つの店舗も利用するといった相乗効果の兆しを感じることができました。

今後、ベーカリーやパティスリーなどの出店を考えられている方は、今ある商品を上手に生かしながら、異なるタイプのお店を併設することで新たな収益源を作ることはできないかと考えてみるのも一つのやり方かもしれません。

郊外店の場合は空いているスペースの有効活用にもなりますし、併設することで話題性が上がります。
そして、新規でお店を利用してくださる方がそれぞれの店舗で増えれば、その相乗効果で集客面でも大きなメリットに。

忙しい子育て世代の方が、日常を少し離れてホッと一息つくためにカフェを訪れたり、誰かと話をしたいお年寄りが、お布団の洗濯がてらに井戸端会議を楽しめたりするような、地域の憩いの場として活用してくれるのが、店主が理想とするお店の在り方だそう。

利用する人たちの気持ちに寄り添いながら、とことんこだわったお店づくりをすることが、ファンを増やして人気店となる第一歩なのだと感じました。

ぜひお店にも足を運んでみてくださいね。

 

●About Shop
もくもく堂&IDOBATALaundry
公式インスタグラム
北海道帯広市東7条南11丁目1−4
【TEL】】0155-67-0700
【営業時間】10:00〜18:00
【定休日】 なし
 
●店舗プロデュース
株式会社OKULAB
公式サイト

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Writer
ワタリドリ製作所 矢作 ちはる
ワタリドリ製作所 矢作 ちはる
運営サイトはこちら
ワタリドリ製作所 代表。 株式会社リクルートにて、編集、商品企画、プロモーション事業に従事した後、出版社にてビジネス書の編集を経て独立。 渡り鳥が軽やかに国境を越えて旅するように、各地を飛び回りながら、ヒト・モノ・コトに関わるその土地ならではの魅力を発掘&発信する活動をしている。 書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆・編集をメインに、オウンドメディアの編集長としても活動中。著書は『石の辞典』(雷鳥社)、『世界の絶景1000』(英和出版社)共著。 地図は読めないけど、街歩きがすき。
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