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2026.10.30

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会レポート

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

10月14・15・16日の3日間にわたり、インテックス大阪でパンの世界大会の日本代表を決める「第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会」が行われました。
日頃のベーカリー業務やお店の経営に忙しいなか腕を磨き続け、みごと予選を勝ち抜いた6選手が、大阪、兵庫、宮崎、埼玉、茨城、東京と、全国から出場しました。それぞれが日本代表の座をかけて技を競い合った大会の2日目と表彰式の様子をご紹介します。

全国、フランスからもパン職人が集結

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

会場に到着すると、大会2日目の3名の出場者がそれぞれのブースで黙々と競技に集中していました。どの選手もほかの大会で優勝経験のある実力者たちで、高い水準のなかでしのぎを削っていました。

栗原淳平シェフ

▲栗原淳平シェフ(ぐるぐる)

奥裕樹シェフ(ベルドール)

▲奥裕樹シェフ(ベルドール)

須貝文智シェフ(ザ・ペニンシュラ東京)

▲須貝文智(ふみと)シェフ(ザ・ペニンシュラ東京)

「第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会」出場者
須貝文智(ザ・ペニンシュラ東京)
奥裕樹(ブーランジュリー ベルドール)
栗原淳平(株式会社ぐるぐる)
池田匡(Boulangerie Gourmand)
本多伸也(PANSHARE)
佐藤彰洋(アシェンテ)

この大会を運営するのは、レ・アンバサドゥール・デュ・パン協会(以下、アンバサドゥール協会)。正統な製パン技術の継承と若手パン職人の育成を目的として、日々精力的に活動しています。フランス本部から世界各地で行われる予選大会に理事を派遣し、技術の向上に寄与しています。
競技ブースの隣に設置されたブースでは、アンバサドゥール協会のメンバーたちが協力し合ってたくさんのパンを焼きあげていました。これらのパンはトートバッグと一緒に販売され、その売上げが日本代表選手の支援に使われる仕組みになっています。
製パンブース内では、若手がほかのお店のシェフたちやM.O.F.シェフと一緒にパンをつくり、すぐ近くで技術を見ることができる絶好の交流の場でもあります。ここでの交流が技術の向上やさまざまなアイデアにつながっていきます。

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲M.O.F.パン職人の仕事を見ることのできる貴重な機会

「レスペクチュス・パニス」の普及

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

若手の育成や技術の継承と並んで、アンバサドゥール協会が掲げるミッションのひとつが、レスペクチュス・パニス製法の普及です。レスペクチュス・パニスとは、1キロの小麦粉に対してイースト1グラム、ルヴァンリキッド1グラム、低塩分で16℃~18℃の低温で長時間発酵させ短いミキシングでつくる、協会が提唱する古くからの製パン法。通常のバゲットなどと比べて酸化が抑えられ、小麦の旨味がより感じられるのが特徴です。

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲競技ブースわきではレスペクチュス・パニスの実演が行われました

競技も中盤にさしかかり、会場内が香ばしい小麦の香りに包まれていくなか、選手たちが焼き上げたバゲットやヴィエノワズリーなどの作品がブース前に並べられていきます。競技と並行して試食審査も行われ、審査員がパンの見た目や香り、味などを厳しくチェックし、採点していきます。

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▲栗原淳平シェフのパン作品

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲バゲット試食審査のワンシーン。ティエリー・ムニエ氏(左)とジャン=バティスト・ペッシュ氏(中央)

国際大会の経験が生かされたヴィエノワズリー

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲ムースの下にカシスのコンフィチュール、さらにチョコのパウンドが忍ばせてある

各選手の焼き上げたパンが次々とブース前に並べられていくなかで、筆者が興味を引かれたのが、須貝シェフのヴィエノワズリー作品でした。真ん中にぷよぷよとした真っ白なバニラムースが乗せられたビジュアルは、非常に斬新な印象を受けました。
須貝シェフは2025年にイタリアで開催されたSIGEPの世界大会に出場、ベストチャバッタ賞を受賞しました。そこでの経験が今回の大会に生かされているそうです。

須貝シェフ
「前回SIGEPに出させていただいた時に、僕はアプリコットとパッションフルーツのゼリーを乗せたヴィエノワズリーを作ったんですけど、他の国の選手たちの作品も見ることができてすごく参考になりました。国際大会を経験していくなかで、今までやってきたことをつなげていきたいというか、これまでの経験をしっかりとパンにも反映させていきたいなと思っています。なので今回は、前回のヴィエノワズリーからさらにブラッシュアップしたもので挑戦しました」

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲ほかのパン職人たちも興味津々

須貝シェフ
「注意した点としては重さの配分ですね。あくまでパンなので、一番の比重はパン生地に置きつつ、グラムの規定があるので、フィリングで使えるのがトータル30gぐらいを僕の中では想定していて。ムースみたいにしたいけど、生クリームを入れると比重が重たくなってしまうので、卵白を使って軽めに仕上げました。また、競技用として冷凍できるようにしたかったので、アガーとゼラチンの両方を使って保形性を保てるようにしました」

ピエスのテーマは「日本」

モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

コンクールの目玉といえるのがピエス作品です。パンとして焼成したものをパーツとして使うので、寸法や断面もぴったり、まっすぐというわけにはいきません。バランスが崩れないように強度を高めて、高さをだすにはどのようにすればいいか、どの選手も工夫を凝らしながら慎重に組み立てていきます。

今回のピエスのテーマはずばり「日本」。須貝シェフは祭りをコンセプトに、獅子舞をメインにしたピエスを組み立てていきます。須貝シェフにピエスのこだわりについてお聞きしました。

須貝シェフ
「獅子舞のたてがみは、トルコや中東地域のスイーツや料理に使われるカダイフを用いて表現しています。目玉の部分は外側から取り付けるのではなく、リアリティを出すためにまず穴をあけて、内側から目玉を接着しています」

外から接着するほうが作業も楽だと思いますが、手の込んだ作業を選んだのは何故でしょうか?

須貝シェフ
「職場のペニンシュラ東京にはペストリーのチームがあって、飴細工だったりチョコのピエスを作っているのを見てると、やっぱりパン職人としての自分の感性だけではわからないことも多いんです。『チョコだったらこれは内側からいれるよ』ということを教えてもらったりして、やっぱり勝ち抜くには新しい切り口を取り入れていかないといけないだろうなと思って」

モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲須貝シェフ(ザ・ペニンシュラ東京)のピエス作品。重力に逆らって提灯を吊るしたように接着するなど、挑戦的な試みも

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲池田匡シェフ(ブーランジュリーグルマン)のピエス作品

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲刀鍛冶をモチーフにした栗原淳平シェフ(ぐるぐる)のピエス作品

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲奥裕樹シェフ(ブーランジュリー ベルドール)のピエス作品

涙の優勝

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

今大会を制したのは、ザ・ペニンシュラ東京の須貝シェフでした。自分の名前が読み上げられると、須貝シェフはこれまでの長かった道のり、苦労を噛みしめ、顔を俯けて喜びの涙を流しました。
受賞後のコメントでは「泣いてばかりで『泣き虫須貝』と呼ばれていましたが、やっと嬉し涙を流すことができました」とこれまで支えてくれた協会のメンバーや家族への感謝を口にしました。

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲優勝した須貝シェフを讃えるアンバサドゥール日本協会の理事長の安倍シェフ(左/ブーランジュリーパリゴ)

今大会、審査員として参加されたM.O.F.パン職人のティエリー・ムニエ氏に、大会の所感をお伺いしました。

ムニエ氏
「今回は本選と若手ブーランジェの大会ともに6選手が出場していますが、すでに皆さん勝者といえるくらい素晴らしいパンを作る職人ばかりです。すでに高い水準に達していて、なおも日々成長を続けています。大会における私たちの役割は彼らを更なる高みに引き上げることです。

課題のひとつになっているレスペクチュス・パニスですが、核となるのはルヴァンです。酵母は自然の生き物で、生かすも殺すも職人たち次第です。発酵段階においては、例えば空調の風ひとつで表面が乾いて発酵を妨げます。状況に応じてどう対処していくかは職人の経験が問われます。若手の人たちはたくさんパンを味見してコツをつかんでどんどん経験を積んでいってほしいですね」

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲出場者たちを讃えるティエリー・ムニエ氏

第11回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会

▲すべてを出し切り晴れ晴れとした表情の入賞者たち(左から栗原シェフ/株式会社ぐるぐる、須貝シェフ/ザ・ペニンシュラ東京、池田シェフ/ブーランジュリーグルマン)

ヴィエノワズリー部門でも優勝を果たし、完全優勝の須貝シェフは、フランスで行われるモンディアル・デュ・パンの世界大会と、クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ヴィエノワズリーにも出場予定です。2つの世界大会に向けての意気込みをお伺いしました。

須貝シェフ
「ずっと目指してきたモンディアル・デュ・パンの世界大会と、新しく始まる大会の最初の日本代表になれるというチャンスをいただけたんですけど、やっといまがスタートラインだと思うので、ここからもう一度、強豪日本を取り戻していけるように、自分に妥協することなく頑張りたいと思います」

須貝シェフインスタグラム:https://www.instagram.com/sugaifumito/

【最終結果】

第11回モンディアル・デュ・パン 日本代表選考会
優勝:須貝文智(ふみと)(ザ・ペニンシュラ東京)
準優勝:栗原淳平(株式会社ぐるぐる)
第三位:池田匡(たすく)(ブーランジュリーグルマン)
ヴィエノワズリ―部門賞:須貝文智(ザ・ペニンシュラ東京)

第9回最優秀若手ブーランジェコンクール
優勝:矢野青空(そら)(大阪ステーションホテル)
準優勝:河野あかり(株式会社Zopf)
第三位:山田祐也(コネルヤ)

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Writer
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
chefno編集部
編集長&映像制作 コウヘイ
映像制作とフランス語関連の記事担当。18年のフランス在住経験あり。フランス生活で得た気づきやエスプリを生かして面白い&センスの良いコンテンツづくりを目指します!好きなお菓子はダントツでタルトタタン。
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