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2022.03.10

ベーカリーの救世主!?本物のパンを使ったランプ「パンプシェード」で廃棄パンに新たな未来を

株式会社PANTHEM 代表
森田 優希子さん
パン屋で働いていた時、廃棄になるパンを見るのが耐えられなかった。 私にとってのパンは、ただおなかを満たすだけのものじゃない。パンには、ハッとするような美しい瞬間があって、手にした人の心をあたためる不思議な魅力がある。 アーティストとして、そんなパンの魅力を発信するクリエイティブレーベルを運営しています。
2006~2007:「パンプシェード」の原点となる(アイデア)が生まれる
2008:京都市立芸術大学版画学科卒業
2010:パンプシェードの開発スタート
2016:「モリタ製パン所」開業、「パンプシェード」ブランド立ち上げ
2021:株式会社PANTHEM(パンセム)創立
運営サイトはこちら

食品業界において、永遠の課題である食品ロス。

農林水産省が2019年に調査した推計値によると、
1人当たり約45kg/年もの食品が廃棄されていると言われています。
いざ数字で見ると、本当に廃棄される食品が多いのが分かります。
出典:農林水産省「食品ロスとは」引用

食品ロスに関してはベーカリー業界も例外ではなく、日々売れ残ったパンが廃棄される事実があります。
そしてコロナ禍という状況も影響し、店舗によっては更に廃棄が増えてしまっているという悲しい現実もあります。

昨今のベーカリー業界では、冷凍技術を使った製法の発展によって生産性の向上を図るなど、その日の状況に合わせた生産が可能になりつつあり、廃棄ロスを減らす取り組みが行われています。

また、廃棄となってしまうパンを集めて販売するネット上のサービスなども、少しずつではありますが増えてきています。

業界全体でも様々な策を練って取り組んでいる“食品ロス”という課題に対し、今までとはまた違ったアプローチで、廃棄されるパンに新たな息を吹き込むアーティストがいます。

それが、本物のパンを使ったランプ「パンプシェード」を製作する森田優希子さんです。

今回は森田さんに「パンプシェード」が生まれるに至った経緯や想いを伺いました。

 

ランプづくりの原点ともなるパンとの出会いは

パンの街で知られる神戸に生まれ、パン作りが好きなお母様のもと幼少期からパンに触れる機会は多かったという森田さん。
京都で過ごした大学時代、ベーカリーでアルバイトをしたことでさらにパンに強く惹かれるようになったそう。

森田さん

それまでは、パンを食べるのも作るのも好きな、いわゆる『パン好き』ではあったものの、それ以上の特別な想いがあった訳ではないんです。
でもアルバイト先で、日々奮闘するパン職人と触れ合い、同じレシピでも気候の変化によって毎日違った表情を見せるパンに、単なる『パン好き』を超えた魅力を感じ始めたのがこの頃でした。

森田さんは当時大学で美術を専攻。
このアルバイト経験からパンという存在に心躍らせる日々が続き、森田さんなりにパンを何か作品に活かせないかと考え始めたのが、本物のパンでランプを作る「パンプシェード」誕生への第一歩でした。

 

日々創作を続け みつけた「パンプシェード」が出来るまで

大学時代は版画学科を専攻していた森田さん、作品のモチーフとしてパンを取り入れてみたものの、なかなか自身がイメージする表現にならなかったそう。

森田さん

アルバイト先で廃棄されるパンを持ち帰っては、草木の中でパンを撮影してみたり、パンから発生する色んな種類のカビを観察してみたり、思いつく限り色んな事を試しましたがしっくりこず。やっぱり、パンの魅力はパンの形でしか表現できないよな…と感じていました。ある日、フランスパンの中身をくり抜いてクラスト(表皮)だけを残してみたんです。そしたらたまたまそのフランスパンに西日が差し込んで、パンが内側からキラキラと輝いて!私が表現したいパンの魅力と初めて波長が合ったんです!

これが「パンプシェード」の原型が誕生した瞬間だったそう。
その後、大学を卒業し京都の企業に勤めてからも、創作活動は継続。
どのようにすればパン全体を綺麗に光らせる事ができるか、本物のパンを使う事で発生するカビ・虫・割れなど、たくさんの課題を一つずつクリアしていきました。

森田さん

創作活動を続けていくなかで、挫折してしまいそうな時もありましたが「私が作らなくて誰が作るんだ」という想いがどんどん強くなっていきました。

そんな強い想いを糧に、日に日に作品としての精度が向上していったのがこの頃。
同時に森田さんの作品が欲しいと言う方が多くなりはじめた事が後押しとなり、7年間務めた会社を退職。拠点を神戸に改め、正式にパンでランプを製作する「アーティスト」としての活動をスタート。

2016年には「パンプシェード」ブランドを立ち上げ、今では作品に使用するほとんどのパンを廃棄から賄うなど「持続可能なビジネス」としてのパンプシェードがいよいよ本格的に稼働し始めました。

 

丁寧な手仕事が織りなす精度の高い製品づくり

森田さん

現在パンプシェードのアトリエでは約10名のスタッフが全て手作業で製造しています。一つの作品を仕上げるのに2週間くらいかかり、製造工程はパンの種類によってそれぞれ細かく異なります。なかでも一番難易度が高いのは、一番の人気商品でもあるクロワッサンのランプです。

クロワッサン全体が綺麗に光るクロワッサンの「パンプシェード」

chefnoスタッフの「クラスト(表皮)を専用の液体樹脂で固めてから中身をくり抜くのでは…」という予想は外れ、くり抜いてから樹脂で固めるそう。
湿度管理された専用の部屋でじっくりと乾燥させたクロワッサンを、卵を持つように優しく手で包み、大切にストックしているクロワッサンの破片で、破れた部分を補修しながらのくり抜き作業。
パンプシェードは手間と時間をかけ丁寧に作られている事で、国内はもとより海外の顧客も多いとの事。

クロワッサンが破損しないように丁寧にクラムをくり抜く

大切にストックされた補修用のパンのパーツ。制作工程で破損したパンも部品として流用することで無駄にしない

 

「パンプシェード」を通して伝えたい事

森田さん

パン職人がパンを作るのと同じように、私もアーティストとして違う角度からパンを作っています。学生時代にアルバイトをしていたベーカリーで、パン職人が大切に作ったパンが、一定の時間が過ぎると廃棄されてしまう光景を毎日のように目の当たりにしていました。頭で理解できても心が理解出来なかったんです。味としての期限を過ぎてしまったパンでも、私たちがランプにすることで新たな作品(パン)として命を吹き込むことができます。パンはもちろん食べる為にありますが、その魅力は味に留まりません。更に広がったパンの魅力を伝える事が出来たらという想いで活動しています。

取材終盤には、食品ロス削減にかける想いを今までになく力がこもって語られている様子がとても印象的でした。

 

取材を終えて

「廃棄ロスが発生」→「パンプシェードがパンを買い取る」→「製品化して販売」→「ユーザが購入」。

このサイクルは単にパンを作品にしたいという考えだけではなく、パン業界でのサスティナブル(持続可能)な活動の一つなのではないかと感じました。

元は薬局だったという現在のアトリエ。
もともとあった薬局の「実験室」をそのまま残し、作品の幅を広げるべく今も日々パンを使った製品づくりへの実験を重ねる森田さん。

アート作品としても多くの支持を得ているパンプシェードは海外からも発注が多く、その製品づくりに欠かせないパンは、皮肉にもまだまだ足りないとの事。

もし廃棄ロスになるパンがあれば、ぜひ連絡が欲しいと言う森田さん。
ベーカリーの皆さん!パンプシェードさんとタッグを組み、ぜひ廃棄ゼロのベーカリーを目指しませんか!

●廃棄ロスパンにお悩みの場合は以下よりご連絡を!
PAMPSHADE by Yukiko Morita(株式会社PANTHEM)
兵庫県神戸市兵庫区西多聞通1-3-6
連絡先:info@panthem.jp
HP:公式サイトはこちら

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Writer
chefno編集部
エディター兼ライター M
chefno編集部
エディター兼ライター M
輸入商社の営業部で働きながら、編集部ディレクター・ライター修行中。一歩踏み込んだ情報発信が目標です。バタークリームと杏ジャムがあればご機嫌な甘いもの好き。
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