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2022.08.02

フランスにおける古典菓子のエスプリを今につなぐ 時代を越えて変わらぬ基礎と共に進化し続けるパティスリープラネッツ江古田店

定番のいちごムースとピスタチオクリームを使ったケーキ、旬の素材を使用したお菓子が季節ごとにならび、色鮮やかなショーケースが出迎えてくれます。

今回は、季節のフルーツをふんだんに使ったケーキや、チョコレート、焼き菓子、アイスクリームに至るまで、日本にいながらフランス仕込みの本格派洋菓子が楽しめる「パティスリープラネッツ」についてご紹介します。

「パティスリープラネッツ」は、2001年に大泉学園町に本店、2018年に江古田に支店をオープン。今回訪問したのは、西武池袋線江古田駅から徒歩5分ほどの、武蔵大学の門前に面した通りに位置するパティスリープラネッツ江古田店。本場フランスの味を求めて次々とお客様がやってきます。

オーナーシェフの山本光二氏は、日本のパティシエ業界を牽引する存在の一人。都内のフレンチレストランやホテルでの修行後、洋菓子や古典菓子を本場フランスで学びたいと渡仏。在仏時は、世界的コンクールで上位入賞を果たし、帰国後はレストランウエディングを展開する「ひらまつ」の製菓統括シェフに就任しました。

1999年には洋菓子界のワールドカップ「クープドュモンド・ドゥ・ラ・パティスリー」日本代表にも選ばれ、チョコレート部門で世界2位の座に。まさに世界も認めた技術とセンスにあふれるお菓子を生み出す職人です。

「最初から完璧なものはできないから、試行錯誤しながら作っていかなくてはいけない。お店をもつことは、あくまでスタート。続けていくためには時代に合わせて変化・進化が必要」と、語るシェフの哲学が色濃く反映されたお店づくりをのぞいてみましょう。

▲オーナーシェフの山本光二氏

 

お菓子作りの原点は古典菓子

江古田店の広い間口は壁で仕切られており、左側の扉へ進めば生菓子や焼き菓子、右側の扉を進めばチョコレートとアイスクリーム、という2つのエリアで構成され、販売する商品がすみ分けされています。

まずは左側の扉、生菓子や焼き菓子をメインに販売しているエリアへと進みます。ケーキの数は大小合わせて30種類ほど。定番のケーキに加えて、季節限定品も並びます。フランスで洋菓子を学んだシェフは、古くから脈々と受け継がれているフランスの古典菓子の考えをとても大切にしているそう。

「かつてはスポンジ生地一つでもお菓子とされていた時代があって、そこにクリームを足したり、ジャムを重ねたりして、ケーキというものが誕生しました。現代の洋菓子も、古典菓子をベースに作られたと捉えて、基礎を大切にしながらすべてのお菓子を作っています。」と話す山本シェフ。
フランスの古典菓子の世界に触れ、学ぶうちに深く感銘を受け、現在もシェフのお菓子作りの原点となっているといいます。

▲お店のスペシャリテの「アルルカン」

サクサクとした触感のクランチが含まれている「アルルカン」は、濃厚なチョコレートムースたっぷりのケーキ。チョコレートに強いこだわりがあるシェフだからこそ作り出せる、カカオの美味しさがギュッと凝縮された深い味わいのチョコレートムースは、一度食べると虜になります 

▲「ケイクプラネッツ」はお店の看板商品

店名を冠した「ケイクプラネッツ」。中にはオレンジやりんご、クルミなどがぎっしり詰まったスパイスたっぷりのケーキ。シンプルな見た目ですが、ずっしり食べ応えがあります。香り豊かな紅茶と一緒にいただくのがおすすめ。 

生ケーキだけでなく、焼き菓子も充実しています。店内に並ぶマドレーヌやクッキー、フリアンなど、ギフトとしても喜ばれている商品です。素材の風味を感じられる味わいで、古典菓子を学んだシェフならではのクラシックな趣が感じられます。

▲懐かしい味わいのマドレーヌクラシックなどの焼き菓子

 

素材選びと組み合わせ

続いて、山本シェフが特に力を注ぐチョコレート菓子が並ぶ右側の扉のエリアへ。

定番のボンボンショコラに加え、こだわりの洋酒を使ったもの、和のテイストを取り入れた変わり種の柚子山椒のボンボンなど、常時10種類ほどのチョコレート菓子が並びます。

「チョコレートは、カカオ豆の産地・ロースト温度や時間よって酸味や苦み、スパイシーさに個性がでます。それぞれの素材が上手く融合するように、ペアリングしながら構成を決めていきます。これからの季節、夏場は柑橘系のチョコレートが多く並びますが、同じ柑橘類でも、柚子には柚子、レモンにはレモンに合うチョコレートと言った具合にセレクトしています」

チョコレートと旬の素材や新たな素材との組み合わせは無限大。ここに来れば他では味わえない新たな出会いや発見がありそうです。

▲様々な風味のチョコレートが並ぶ。ラインナップの変化も楽しめるので、来店するたびに発見がある

チョコレートの隣では、アイスクリームも販売しています。開業するにあたり、「生菓子や焼き菓子」と「ボンボンショコラ」に加えて「アイスクリーム」の3つが揃ってこそパティスリーの仕事だと考え、アイスクリームも作ると決めていたという山本シェフ。

「アイスクリームの製造でこだわっている点は、使う素材ごとに1つずつ配合を組み立てていることです。各フレーバーの素材をアイスクリームベースに混ぜていく方法より、使う素材の持つ味・風味・香りを引き出せると考えているからです。アイスクリームの配合は、水分・糖分・乳脂肪分のバランスが取れていることがとても重要です。種類ごとに1から配合を組み立てるのは手間ですが、一番おいしくなる配合を考えて作っています。地元の養蜂場で採れたハチミツを使った「江古田ハチミツ」や、フランス産のゲランドの塩を使った「塩バニラ」、「沖縄さとうきび糖」や、季節限定の「とちおとめ苺」、「サクラ」など素材選びにも力を入れてユニークなフレーバーのアイスクリームを作っています」

▲「江古田ハチミツ」のアイスクリーム

 

変化と進化

2つのエリアで構成されるパティスリープラネッツ。本店、江古田店ともに、内装の壁紙はシェフ自身が選んで貼ったそう。

「クラシックすぎず、明るいイメージ。お客様が店内に足を運びやすい雰囲気を大切にしたいと考えて店づくりをしました。私が作るケーキのイメージに合わせた明るい色合いの店内にしたいと考えた時、黄色という色がしっくりきました。ですが、今後、自分の作りたいお菓子のイメージが時と共に変化して行けば、内装もそれに合わせて自由に変えてもいい!今とは全く違う重厚でクラシックな印象の店内にうまれ変わっているかも知れないくらいの気持ちでいます」と、変化・進化への柔軟な姿勢がうかがえます。

▲生菓子・焼き菓子販売エリアは、白を基調とした店内に黄色のアクセントが映えます

▲チョコレートとアイスクリーム販売エリアにも黄色が配されています。奥はイートインスペース

また、シェフはよくお菓子作りをファッションに例えて、「お菓子の素材は洋服と同じだ」とスタッフにも伝えているといいます。 

「例えば、クローゼットから今日の気分に合ったTシャツを選ぶとき、この前はデニムを合わせたけれども、今日は違うボトムスを合わせてみようといった具合に、組み合わせを考えますよね。また、去年良いと思った組み合わせが、今年はなぜかしっくり来ないと感じたり、また10年経ってよく見えたりするなんてこともあります。そんな時は、そこにスカーフをつけてみよう、とか、ベルトを足してみよう、などアレンジを加えて変化を楽しむ。そんなファッションと同じように、お菓子作りにおいても素材を時代と共に変化させていく、進化させていくというのを大事にしているんです」と、シェフの哲学が後身たちにも脈々と伝えられているのがわかります。 

フランス古典菓子のようどの時代においても変わらない味のベースとなる“基礎”を大切にしながらも、時代に合わせて少しずつアレンジをし、お菓子もお店も進化させていくこと。パティスリープラネッツのお菓子に懐かしさと新しさを感じるのは、こうしたシェフの哲学がお菓子の一つひとつに凝縮されているからだと感じました 

 

●About Shop
パティスリープラネッツ
大泉学園本店
住所:東京都練馬区大泉学園町5-8-20 1F
TEL:03-5933-1233
 
江古田店
住所:東京都練馬区栄町9-13 1F
TEL:03-6914-6415

各店舗の営業時間や定休日は公式サイトよりご確認ください。
URL:公式サイトはこちらから

 

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Writer
ワタリドリ製作所 矢作 ちはる
ワタリドリ製作所 矢作 ちはる
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ワタリドリ製作所 代表。 株式会社リクルートにて、編集、商品企画、プロモーション事業に従事した後、出版社にてビジネス書の編集を経て独立。 渡り鳥が軽やかに国境を越えて旅するように、各地を飛び回りながら、ヒト・モノ・コトに関わるその土地ならではの魅力を発掘&発信する活動をしている。 書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆・編集をメインに、オウンドメディアの編集長としても活動中。著書は『石の辞典』(雷鳥社)、『世界の絶景1000』(英和出版社)共著。 地図は読めないけど、街歩きがすき。
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