みなさん、こんにちは!
今年もチョコレートの祭典、「第28回サロン・デュ・ショコラ」が10月28日から11月1日の5日間、パリにて開催されました。
トップの画像は毎回イベントで展示される、チョコレートを使った巨大なオブジェ。今年はホテル・ルテシア・パリ( Hôtel Lutetia PARIS )のニコラ・ゲルシオ(Nicolas Guercio)シェフの作品で、ホテルのマスコットの犬、ルルを200体配置した塔を創作。
このリアルな犬はもちろん全部ショコラで作られたもの。今年ホテルで販売するブッシュ・ドゥ・ノエルも、クッションに座るルルのデザインだそうです。
アルチザンのショコラティエの出展が減少傾向にあり、パティスリーの出展が目立ってきたサロン・デュ・ショコラですが、MOFショコラティエやビーン・トゥ・バーのブースなど、まだまだチョコレート好きには魅力的な一大イベントです。パティスリーのブースも華やかなお店ばかりで、さらにワークショップやコンクールなどイベント目白押しのサロン・デュ・ショコラを、現地スタッフがレポートします。
目次
今年も大盛況のサロン・デュ・ショコラ
世界38か国から230の出展者が約2万平米のポルト・ドゥ・ヴェルサイユ見本市会場に結集。会場はショコラを取り囲む熱気でいっぱいです。
メインフロアの中央ステージでは、チョコレートを使ったドレスのファッションショーやカカオ原産国の民族舞踊などが連日行われ、イベントに華やかさを添えていました。さまざまな販売スタンドが立ち並ぶなかから、注目のショコラティエをご紹介します。
ヴァンサン・ゲルレ(Vincent Guerlais)
まずは、「ヴァンサン・ゲルレ(Vincent Guerlais)」 のブースから。
2018年より、ピエール・エルメ氏や青木定治氏など、名だたるパティシエ、ショコラティエたちが所属する、洋菓子職人協会「ルレ・デセール(Relais Desserts)」の会長を務める、世界のトップ・ショコラティエのひとりです。
さっそくボンボンショコラのアソートを購入。
マイルドなブラックチョコレートに包まれているのは、アールグレーや爽やかな酸味のあるグリオットチェリー、深みのあるエチオピア産コーヒーのガナッシュなど。
パッションフルーツのガナッシュをミルクチョコレートでコーティングしたボンボンショコラも酸味の余韻が心地よく残る一粒。フルール・ドゥ・セル(大粒の天日塩)の上品な塩味の効いたサクサク感のあるプラリネのボンボンなど、一つひとつがどれも個性的で、完成度の高いものばかりでした。
ヴァンサン・ゲルレHP:https://www.vincentguerlais.com/
ボーマニエール(Baumanière)
今回が出展2回目という三つ星レストラン「ボーマニエール」では、シェフパティシエのブランドン・デアン(Brandon Dehan)氏自らブースに立ち、来場客の方たちに丁寧に対応されていました。
ショーケースに並ぶのは、お店のあるプロヴァンス地方をコンセプトにしたアソートボックスや、セミの形をした独創的なショコラなど。
こちらではカカオの実がプリントされた洗練されたパッケージがおしゃれなボンボンショコラのアソートボックスを購入。
カリカリとした食感の、塩味の効いたピスタチオのプラリネの上にキャラメルがのったミルクチョコレートコーティングのボンボンは、最後にオレンジフラワーの風味が感じられ、幾重にも味わいが広がります。
ひまわりやとうもろこしのプラリネのボンボンも、同じく塩味が効いていて、粒の食感と香ばしさが楽しい一粒です。
ほかにも、シナモンのアクセントがしっかりと効いたミルクガナッシュにブラックチョコレートコーティングのボンボンなど、一粒一粒にちょっとしたエッセンスを加えた上品な数々です。
ボーマニエールHP:https://www.baumaniere.com/gastronomie/la-chocolaterie-baumaniere-provence/
その他のショコラティエ
MOFの「ローラン・デュシェーヌ(Laurent Duchêne)」は、霧島茶に特化した新作などを披露。抹茶とフランボワーズのパートドゥフリュイや、日本産のゴマのプラリネなど。炒った大豆をコーティングした抹茶のチョコボールは懐かしさを感じる味で、ついポリポリ止まらなくなりそう。ショコラティエールの京子夫人と共に手掛けるショコラの数々には、日本の素材が使われることが多く、今年も安定の完成度でした。
ローラン・デュシェーヌHP:https://www.laurentduchene.com/
初出展のブランド 「テール・ドゥ・フェーブ(Terre de fêves)」は、もと二つ星レストランで経験を積んだ若きショコラティエ―ルがプロデュースするチョコレートのブランド。
試食してみたプラリネ・ショコラは、トンカ豆の風味がストレートに効いた爽快なインパクトのある一粒でした。
テール・ドゥ・フェーブHP:https://terredefeves.com/
「OAKAO(オアカオ)」のスタンドでは業界の牽引役でもあるベテランMOFショコラティエ、パスカル・ブルンステイン(Pascal Brunstein)氏の姿を発見。彼は、2年前に彼の息子が立ち上げたこのブランドのショコラをプロデュース。近年注目度の増しているオーガニックのシリーズも出しています。
ポップなパッケージの新商品は薄くて丸い形のショコラ。中はキャラメルペーストなど6種類。口どけのよい薄さと中のペーストのバランスがとても良く、素直に美味しいと感じました。
OACAO HP:https://www.oacao.fr/
その他、会場内には日本のショコラティエのブースがいくつか見られました。
土屋公二シェフの「テオブロマ」(ウマミをテーマにしたショコラの新作を発表)や、辻口博啓シェフの「ル・ショコラ・ドゥ・アッシュ」(沖縄の食材を使ったショコラを提案)、静岡の「キャトルエピス」、パリからは「レ・トロワ・ショコラ(Les Trois Chocolats)」が出展。
さらに、オープンからわずか一年半でミシュランの一つ星を獲得したレストラン「Pages(パージュ)」のオーナーシェフ、手島竜二氏の手がける、今年京都にオープンしたばかりのスイーツ店「Atelier Pages(アトリエ・パージュ)」も出展し、こだわりのショコラがお披露目されていました。
アトリエ・パージュHP:https://atelier-pages.com/
パティスリーの台頭
生粋のショコラティエ達の参加が近年減っている中、存在感を放っていたのがフレッシュなパティスリーのブースの数々です。本来はチョコレートの祭典ですが、いろとりどりの美しいプチガトーがショーケースに並んだブースは見た目も華やかで、ついつい吸い寄せられます。
トリアノン パラス(Trianon Palace)
クリヨンやリッツなどの最高峰のホテルでシェフパティシエを努めてきた実力派、エディ・ベンギャネム(Eddie Benghanem)氏がシェフパティシエを務める「トリアノン パラスは、コンテンポラリーな息吹を感じさせる芸術的なプチガトーがずらり。ミニマルで洗練されたフォルムの中にどんなサプライズがあるのか、期待して購入してみました。
ブラックチョコレートのプチガトーは、マダガスカルのショコラの酸味と3層の濃厚なショコラのテクスチャーとのハーモニーが効いた贅沢な一品。
ミルクチョコのプチガトーは、カカオ60%のミルクチョコレートを使用したライトなムースに、そば茶の香ばしさとカリカリとした食感のビスキュイを利かせた一品。どちらも、風味とテクスチャーが印象に残る、見た目だけでなく味覚と食感を刺激してくれるプチガトーでした。
アルノー・ラエール(Arnaud Larher)
アルノー・ラエールのブースでは、サロン・デュ・ショコラ限定のショコラのクイニーアマンとフランが人気。
本場ブルターニュ出身のシェフが作るクイニーアマンは、何層にもしっかり焼きあがった生地が香ばしく、甘味が抑えられた口当たりのやさしい美味しさです。
ほかには、ニナ・メタイエ(Nina Metayer)の「デリカティスリー(Delicatisserie)」ではイベント限定のガトーショコラをはじめ、可愛らしい洗練されたフォルムのケーキなどに行列が絶えませんでした。
スターシェフ フィリップ・コンティチーニ(Philippe Conticini) とパリで最古のパティスリー「ストレー[Stohler]」のシェフを経て独立した ジェフリー・カーニュ(Jeffrey Cagnes)のコラボも話題。創作的なパティスリーと焼き菓子がずらりと並ぶスタンドも、デモンストレーションも黒山の人だかりでした。
フィリップ・コンティチーニHP:https://philippeconticini.fr/
ジェフリー・カーニュHP:https://jeffreycagnes.fr/
ビーン・トゥ・バーの拡がり
「ビーン・トゥ・バー」という言葉が珍しくなくなってきた近年、カカオ原産国のブースが集まるエリアでは、コートジボワール、ウガンダ、ペルー、ベネズエラ、マダガスカル、そして、ハワイ、インドネシアと、国際色豊かな原産国のブースが並んでいました。
自主ブランドでのタブレットチョコレートの出展も年々増えており、パッケージデザインもカラフルで年々改良され、原産国での労働者搾取などの社会問題解決の側面からも、注目の集まっている分野です。
カカオがチョコレートになるまでの工程を実演を交えて紹介しているブースなどもあり、来場客の皆さんが興味深く話に聞き入っていました。「生のカカオって白いんだ!」と驚いている方も多く、カカオやそれを生産している原産国を知る上でも実りのあるブースでした。
フレンチパティスリー・ショコラトリー コンクールで日本代表が優勝
イベント期間中、会場では「パン・オ・ショコラ コンクール(Master du Meilleur Pain au Chocolat) 」(フランス各地方の候補者42名が参加)や、話題のシェフたちが審査員として参加したアマチュアのパティスリー コンクールなど、チョコレートやパティスリー に関連する様々なコンクールが開催されました。
そのなかでも注目は、世界から8か国の代表が参加した、第2回 国際フレンチパティスリー・ショコラトリー コンクール(Trophée International de la Pâtisserie Chocolaterie Française)。このコンクールは、昨今インスタ等で見栄えを優先したパティスリーが拡散しているなか、基本の伝統的なレシピと技術に立ち戻った創作を、という呼びかけから始まりました。
競技は3日間行われ、選手とコーチの2人1組で、シャルロット・オ・ショコラ、サントノレ、エクレア2種、マカロンなど、様々なお菓子を製作し、審査されます。
日本からは、「アテスウェイ」のスーシェフの松川氏と、コーチとして同じくアテスウェイの川村シェフが代表として参加。
最初の種目の日本代表チームが手際よく作ったシャルロット・オ・ショコラを提示した時には、審査員から拍手が沸き上がりました。
結果は見事に優勝。師匠と弟子のお二人の、安堵感と嬉しそうな表情が見てとれました。
アテスウェイHP:https://www.atessouhaits.biz/
取材を終えて
開催期間は雨と曇り空が多く、屋内開催のイベントを選ぶ方が多かったのか、最も混雑した午後の会場通路はまるでラッシュアワーのようでした。
注目のシェフ達を始めベテランシェフによるデモンストレーションや、トークイベントなども多く開催され、業界トップや期待の星たちが、連日たくさん集うショコラの祭典は、業界にとって大きな意義のあるイベントです。
フランスを中心とする、トップのショコラティエ達が少なかったことに少し物足りなさを感じましたが、イベント満載の会場やパティスリーの華やかさは楽しく、いろいろ目移りしながら、さらなる好奇心につられて回っていると、あっというまに一日が過ぎていきました。
お気に入りを見つけて買い占めた余韻で、すっかり満足して会場を後にしながら、来年こそは、ショコラのトップリーダー達に会場でまた会えることを期待します。