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2023.11.09

オーストラリアからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 聡Vol.07『オーガニックベーカリー・LoaferBread が教えてくれたベーカリーができること』(前編)

lofer breadの外観

こんにちは。

今までのレポートで何度かご紹介しました僕の前の職場「LoaferBread(ローファーブレッド)」について、前編・後編にわたってお話ししたいと思います。

前編の今回は、LoaferBreadの概要についてご紹介です。

はじめに、どんな場所にお店があるかをご紹介します。

メルボルンの中心地から北に5km弱に位置するFitzroy North(フィッツロイ ノース)という住宅街にお店はあります。周囲には大きなスーパーやカフェ、レストラン、パブや商店があります。

メルボルンの地元スーパー

▲地元にしかない大型スーパー。品揃いも豊富で多くの地元民が訪れます

また、学校や図書館といった教育・公共施設、Edinburgh Garden(エディンバラ ガーデン)のような大きな公園もあります。

エディンバラガーデン

▲お店の近くのエディンバラガーデン。広くて気持ちの良い公園です

このように、生活するには便利なエリアで、いつも多くの人が行き交う活気のあるところです。メルボルンの中で僕が一番好きなサバーブ(街)の一つでもあります。この街のメインストリートの St Georges Road (セント・ジョージズ・ロード)には、トラムが走っており、道路脇には多くの店があります。

セント・ジョージズ・ロード

▲トラムのレールが道の真ん中にあり、道路脇にはさまざまなお店が

このメインストリートを一本入ったところにLoaferBread はあります。

lofer bread

▲外のウィンドウから今日のパンのラインナップが見られるようになっています。行列ができても、外から商品が選べるのはいいですね

お昼時や週末は、店の前に行列ができるほど地元住民に愛され、メルボルンのパン好きなら誰でも知っている人気のベーカリー。では、続いてどんなお店なのかをご紹介していきます。

お客さんも多いことから、さぞかし店内は広々していると思いきや、とてもコンパクトな作りなんです。コンパクトである分、販売員や厨房で働くベイカー達とも距離が近く、まるで親戚の家に遊びに来たような感覚でコミュニケーションが発生するのが、こちらのお店の良いところでもあります。この親近感のある居心地の良さがいつでも感じられるのが、人気店であるひとつの理由かも知れません。

lofer bread店内

▲コンパクトな店内。販売員とお喋りしながらパンを選ぶ方も多い

lofer bread店内

▲店舗外から見えていたパンの陳列棚(写真右)レジ奥の棚にもパンが並びます

コンパクトなのは、店内だけでなく厨房も同様です。コンパクトな厨房にも関わらず4、5人のベイカーが所狭しと動き回り、数多くの商品を作っています。

先述のとおり、お客さんは老若男女、地元の方がメインです。店の周辺に住んでいるお年を召したご夫婦、お店のすぐそばにある小学校の子供たち、いつも同じ席でコーヒーとクロワッサンを食べているおしゃれなおじさま。遅い朝ごはんを食べにくる近所のシェアハウスに住む学生さんとそのお友達、犬の散歩の途中でバゲットを買いにくるおばあちゃん、出勤前の腹ごしらえをするワインバーのシェフなどなど。LoaferBreadが、日々のルーティーンの一部になっている方が多い気がします。

毎日来る常連さんが多いこともあり、来る前から何を買うか決まっている方がほとんどです。もちろん、その日の店内に並ぶ商品を覗きながら「今日はこれにしようかな!」と悩まれている方もいます。流行りのパンがたくさんあるわけではありませんが、その波に乗らなくてもしっかりと顧客を掴んでいる印象です。

さて、同店の人気の理由は、お店の可愛らしさや親しみやすさはもちろんありますが、やはりどのパンも美味しいことに尽きます。ラインナップとしては、サワードウブレッド、クロワッサン、サワードウバゲット、ジンジャーマンクッキー、具材豊富なサンドイッチ、旬のフルーツを使ったデニッシュ、オーストラリア定番アイテム ソーセージロール、またホットクロスバンズのような季節商品やオーツ麦をお粥状にして生地に練りこんだオーツポリッジブレッドなどなど。どれをとっても飽きのこない味わい深さがあり、飾り気はないですがどこか懐かしい味がします。このお腹も気持ちも満足させてくれるパンたちは、「ああ、また食べたいなぁ」と思うはずです。

オーツポリッジブレッド

▲オーツポリッジブレッド

多数のラインナップがありますが、看板商品は、フランス人も唸らせる本格的なバゲットとクロワッサンです。

バゲット

▲看板商品のサワードウバゲット

しかし、僕が個人的に愛してやまないのがCardamon Scroll(カルダモンロール)です。カルダモンロールはカルダモンと砂糖を練り込んだスウェーデン発祥の菓子パンで、コーヒーにもよく合います。同店のカルダモンロールは、カルダモンの香りがしっかりとしており、とても絶妙な生地感が特徴です。一度食べたら忘れられない味だと思います。

カルダモンロール

▲癖になる味のカルダモンロール

数々の商品がありますが、この商品を製造する際に使用されているほぼすべての食材がオーガニックのものです。しかも極力お店から近いエリアもしくはオーストラリア国産の食材を使用しています。今でこそ、気候変動や消費活動に対する知識と関心が高まり、SDGsが浸透しつつあり「サステナビリティ」のワードを聞いても理解ができると思いますが、その言葉すら一般的でない頃から、同店では持続可能を意識したビジネスをしています。食材選びはもちろん、お客さんへの啓蒙活動やお店で働く従業員の労働環境に至るまで、それを配慮した運営をしています。

▲お店の黒板に書かれたLoafer Breadの理念

そんなLoafer Breadならではの活動があります。それは、「レモンとパンの物々交換」。毎年、レモンの収穫時季にお客さんが自分の庭で採れたレモンをお店に持ってくると、パン一斤と交換してくれます。

大小のレモン

▲レモンの時期にお客さんが持ってきてくれたレモン。形も不揃いなのがまたいいですよね

レモンはサンドイッチのサラダになったり、レモンタルト用のレモンカード(スプレッド)になったりします。

前編はここまで。
次回後編では、Loafer Breadのオーナーであるアンドレアにインタビューをしてみましたので、さらに同店の深掘りをしてみたいと思います。

❑お店情報
Loafer Bread
サイト:https://www.loaferbread.com
インスタグラム:https://www.instagram.com/loaferbread/
フェイスブック:https://www.facebook.com/p/Loafer-Bread-100047713645676/

 

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Writer
成澤 聡
成澤 聡
運営サイトはこちら
パン職人になってかれこれ20年余。2012年、縁あってオーストラリアに移住。2022年12月、仲間と共にベーカリーとコーヒーロースタリーが併設した店舗をオープン。マルチカルチャーなオーストラリアの文化と人々に刺激されながら、美味しくて、楽しくて、そしてサステナブルなパン作りを日々模索しています。オーストラリアはメルボルンから、パンにまつわるエトセトラはもちろん、日々のことなどをお届けします。
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