「注文をオーダー表に記入し、ポストに投函して商品を受け取る」まったく新しい販売形態のベーカリーが、コロナが猛威をふるっていたさなかの2020年11月に兵庫県にオープンしました。非接触での販売スタイルが、業界でも話題となっています。
木のぬくもりがある小さな山小屋の雰囲気と、歩道に面したつくりが生み出す解放感を併せ持ったお店の、ついつい、足を止めてしまう秘密は一体何なのか。
違った運営スタイルに挑戦するパン屋さん「サイドフィールドブレッド」の横畠シェフにお話を伺いました。
目次
オーナー夫妻は共にパン職人~子供に見せる職人としての姿~
兵庫県神戸市の灘区。公共施設や公園が整備されている閑静な住宅地に、『サイドフィールドブレッド』はオープンしました。
オーナーシェフは、株式会社ドンクで17年間勤務された横畠 健さん。
ドンク時代から変わらず持っている信念は、“みんなで美味しいパンを作って、お客様に喜んでいただく”。
パンへの強い想いを持ちながら、職人として研鑽を積まれ、独立前の5年間は単身徳島県に勤務されていました。店長職を経験し、5年間家族と離れて過ごすうちに「元々パン職人として働いていた妻と、また一緒にパンづくりをしていきたい。そして子供たちに、パン職人としての姿を見せたい」と、独立開業の想いを強くしたと振り返ります。
コロナ禍でのオープンが生んだ新しい販売スタイル
開業を決意したのが2018年の春ごろ。コロナが姿を現す1年半以上も前のことです。当然、現在のスタイルのお店になるとは想像もしていなかったそうです。
「当初考えていたのは、従来のお客様がトレーを持ってパンを選ぶセルフスタイルのお店でした。開業された先輩たちのお店のデザインを手がけた、デザイン会社“atelier FISH”の山下さんに依頼し、店舗設計の打ち合わせを進めていた最後の段階でコロナが流行しはじめたんです」
飛沫によるコロナ感染リスクを下げる目的でデザイナーから提案されたのは、お客様が買いたいものをオーダー表に自ら記入し、それをポストのような窓口に投函。スタッフがショーケースからパンを取って受け渡しをするというまったく新しいスタイル。お客様との対話も極力排除した、完全非接触のスタイルを取り入れることが、当初は不安だったそうです。
「対面販売のベーカリーは日本でも見かけますが、提案された販売スタイルのベーカリーは、見たことも聞いたこともなくて不安でした。お店がスタートする前はまったく想像もつかなかったですし、実際にオープンしてからも正直手探り状態でした。例えば開業当初は、連続してオーダー表が流れてくると、スタッフが、オーダーを受けた順番が分からくなり、お客様にパンを渡す順番が変わってしまうという問題がありました。その問題を解決するために、オーダー表を入れた順番に注文が受けられるように、ポストの傾斜にも微調整を加えています。お店が外に向かって完全に開かれていて、お店の中と外を区切る扉がないので、外気温の影響を直接受けます。風が強い日や大雨の日など、天候によってどんな影響を受けるのか、事前に話してシミュレーションはしていましたが、それでも不安でしたね。」
オープン後のお客様の反応と地域交流
シェフの不安をよそに、お店は順調にスタートし、今では客足の絶えない人気店となっています。開店1週間後くらいには、常連さんと初めて来店されたお客様とのほっこりする一幕があったそう。
「本当にこの地域の人達は、人柄が温かいと思っています。都会に近いのに、他人事にしないというか。オーダー方法がわからず困っている人には、その前にいるお客様が教えてくれるという場面もあり、開店当初は特に助かっていましたね。年配の方にも受け入れられるかどうか不安だったのですが、“こんなんできへんわ、見えへんわ”などの苦情がでることもなくて驚きました。それどころか、ドアもなくお店が外に開かれているので入りやすいとの声をもらいましたね」
売り場のすぐ後ろには厨房があり、通りからもパンを作っている様子がうかがえます。それに加え漂う焼き立てのパンの香り。お客様がついつい足を止めてしまう秘密はこれでした。
取材中も、ベビーカーを押して入店される方がいらっしゃいました。子連れのお客様のなかには、店内が狭くて込み合っていると、一人で扉を開けてベビーカーごと入店することを躊躇されるケースもありますが、そんな心配はいりません。
「車椅子の方がおひとりで来られたことも何度もあります。ドアのないオープンなスタイルにしたことで、いろんな方に気軽にパンを楽しんでもらえる。そのことが分かったときはとても嬉しかったですね」
ファミリー層向けのマンションの1階が店舗ということもあり、雨の日でもマンションの住人が来店されることも多く、売り上げに影響があまり出ないことも嬉しい誤算だったとか。またこの日は、オーダー表をポスト投函したがる子連れのお客様を何人も見かけました。
地元で愛されるベーカリーとして、地域との交流も生まれています。コロナの影響で従来の校外学習が制限されている小学校から依頼を受けて課外授業を実施。リモートでパンの機材や製造工程を解説し、パンができるまでをわかりやすく紹介されました。早くも地域に溶け込んでいる様子が、授業を受けた子供たちからの感謝メッセージからも伝わってきました。
横畠シェフのこれからの目標
現在は厨房3名、販売2名のスタイルでお店を運営。ショーケースには70種類以上の商品が並びます。
「手間のかかるパンも多いですが、お客様のことを考えると手は抜けない。とにかく喜んでもらえるように意識しています」と語るシェフに今後の目標を伺いました。
「修業時代に勉強してきた食事パンをもっと充実させて、パンを日常的に食べる人を増やしたいです。そのためにも、もっとお客様とのコミュニケーションを増やさないといけないと感じています。例えば、いまドイツパンを販売しているんですけど、ドイツパンのようなライ麦の多いパンだったらこんな食べ方がオススメだとか、大きなパンはこんな風に保存したらよいとか。お客様のなかには、パンに詳しい方も多くて驚くこともあるのですが、普段利用してもらえる方を増やして、お客様の子供たちが大人になった時も、自然にうちを利用してくれるというのが理想です」
開業されてから、全て順調に進んでいるように見えますが、「いまの自分があるのは、職人仲間や業者さん、修業先のドンクさんやイスズベーカリーさんのおかげ」と語る横畠シェフ。
「技術面だけではなく、人間的にも素晴らしい方々の指導があったからだと感謝しています。そこでいただいた力をまだ、半分も発揮できていないのが現状で、本当に課題だらけです。パンにしろ、接客にしろ、足りていないものは少しずつプラスしていき、良いと思っていることも常にアップデートしていきたいです」
日々、自分が作るパンに真摯に向き合い、お客様が食べているシーンを思い描きながら、謙虚に語るシェフの横顔がとても印象的でした。
お話を伺った後、非接触型システムのオーダーを実際に体験してみましたので最後にご紹介させていただきます。
非接触スタイルベーカリーオーダー方法まとめ
①パンを吟味する。手書きで温もりのある説明文を参考に、じっくり選びましょう。②オーダー表に商品番号と希望数を記入。
迷いに迷い、オーダーに時間がかかったため、購入希望のレーズン食パンが売り切れてしまっていましたが、残念に感じたのもつかの間、なんとあと10分でまたレーズン食パンが焼きあがるとご案内されました!
10分待つことを即決し、焼き立てホカホカのレーズン食パンを手にして、とても幸せな気分になりました。店員さん呼び出しの道具としてかわいらしいミトンが吊るしてあったり、オーダー中に商品が売り切れてしまったときは、次の焼き上がり時間や別のおすすめ商品を紹介してくれたりと、お客様との交流を生み出す工夫が至る所にありました。
まとめて一度にパンを焼成するのではなく、こまめにたくさんの種類が焼きあがるように工夫するなど、手間を惜しまない姿勢も、街に早く溶け込んだ理由の一つではないかと思えた出来事でした。
神戸にお越しの際は、是非皆様も新しい非接触スタイルのベーカリー「サイドフィールドブレッド」を訪問してはいかがでしょうか?
新しい体験と、美味しいパンの両方が得られることを保証します!!
●About Shop
サイドフィールドブレッド
兵庫県神戸市灘区岩屋北町5丁目2-21
電話:078-585-8240
営業時間:8:00~18:30
定休日:日・月曜日
公式Instagram:公式アカウントはこちらから
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