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2022.05.19
フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.4『ワーキングホリデーで経験した苦い思い出があるから今がある』前編

みなさん、こんにちは!

「渡仏してフランスでパティシエをしたい!」「フランスで開業したい!」そんな夢を抱いている方へ。今回から、3回にわたり私がワーキングホリデーを活用して渡仏した経験についてお伝えしていきます。

私がまだパティシエを始めて間もないころ、自分ならばフランスで通用すると思いワーキングホリデーを利用して渡仏しました。そこで受けた洗礼は、フランスでパティシエをすることの難しさ、フランス人の技術力の高さを見せつけられたこと。それらが良い意味で、自分がフランスで働くうえで気合を入れ直すきっかけになったと思います。 

今回は、私がワーキングホリデーを利用し、初めてフランスの小さなレストランで働いた時のことをお話します。

以前の記事で、私が日本でパティシエを始めた数年後にフランスでパティシエをする目標を立てたことをお話しました。その頃からだったと思いますが、自分が作ったケーキをショーケースの端から端まで並べ、どの商品も「自信を持っておいしいよ!」と言えるようになりたいと想い始めたんです。

その想いがより強くなり始めたのは、⻘森県で働いた時からです。当時働いていた店は、地元でも有名な繁盛店。その店のシェフの元で働けていることに、誇らしくも感じていました。実際、友人から「あそこで働いているの!すごい!」ともてはやされたこともありました。その当時の自分は気づいていなかったのですが、すごいのは自分じゃなくてその店のシェフなのに…繁盛店にいると、なんか勘違いしちゃう自分がいたのは事実です。

自信がついてきた私は、ワーキングホリデーのビザを取得しました。フランス西部のポワチエという街から車で一時間ほどの小さなレストランが出していたパティシエの募集をみつけ、そこで働くことになりました。

▲私が働くことになったポワチエのレストラン

無事にフランスでの働き場所が決まり、当時働いていたお店のシェフにそのことを伝えると、「しっかり技術を身につけておかないと、フランスに行ってもただ皿洗いして終わるだけだぞ」というシェフからの厳しい言葉をいただきました。それを聞いてから、今のままではまずいかもと思い始め、シェフに懇願してフランス対策をすべく急いで基礎や応用技術を学びなおしました。少々突貫ではあったかもしれませんが、渡仏の準備も何とか整い、日本で10年間働いて得た大量のルセットを辞書代わりに「よしやってやるぞ!」という気持ちで渡仏しました。

正直…その時はそこそこフランスで通用すると思っていました。

ですが実際は、日本との材料の違い、フランスと日本の材料の違い、フランス人と日本人の味覚の違い、レストランとパティスリーの仕事の違いなど。まったく思い通りにはいきませんでした。

渡仏して働いていたレストランは、地方にあるお店でしたので、競合のレストランも少なく常連客が多い店でした。それもあってか、その店のシェフキュイジニエは「お客様が毎日来ても飽きないように!」という気持ちが強く、毎週料理やデザートメニューを変えるんです。

私は、毎週変わるメニューに対応するため、日本から持ってきた大量のルセットをどんどん使うことに…しかも毎週変わるメニューに加えて、ミニャルディーズ(食後の焼き菓子)で提供するお菓子3種、さらにイベントがある時期はスペシャルメニューが更に追加されるんです。
次の写真は、めまぐるしく変わるメニューに対応すべく、週替わりでレシピを変えて提供したミニャルディーズ用のマカロンです。

日本で準備したルセットがあれば、フランスでも順風満帆だと思っていましたが、そのストックは約3ヶ月で使い切ってしまいました。

フランスでの洗礼を受け、少し自信を失っている時ですら、シェフは容赦なく追い討ちをかけてきます(笑)

その時の唯一の楽しみと言えば、お昼ご飯を食べる事でした。でもね、そんな時でも衝撃を受けるんですよ。店の料理人が毎日まかないを作ってくれるんですが、料理人ってデザートも作れるんですよね…しかも、私が作るデザートよりもアーティスティックで、全体的に動きがあってうまいんですよ。

もうそれはそれは、ショックでしたね。パティスリー出身の私なんか、お皿にソースで線をつけているだけでしたからね。

▲お皿に線を入れただけのケーキ…

まかないを作ってくれた料理人から「せっかくレストランで働いているんだから、ケーキじゃなくてデセールを作りなよ」と言われ、見よう見まねで作ってお客様に提供してみました。お客さんからは「きみのデザートは美味しいけど、何をたべているのかハッキリしない。なんか、食感がなくて面白くないんだよ」と厳しい言葉をいただき、今までのこともあり、更に追い打ちをかけられた気分でした。

私は、ワーキングホリデーが終わったら、青森県に帰って親父の店を継ごうと考えていましたが、この厳しい経験をしてから「このまま帰ってうまくやれるのか俺?」と思う日々が続きました。

渡仏するまでは、日本で学んだお菓子づくりの技術を存分に発揮する場所を探していたはずなのに、ワーキングホリデーでの経験から、まだまだ学びが必要だと痛感しました。

せっかくのワーキングホリデー、たった1年間という限られた時間しかありません。自分の力を発揮するつもりでフランスに来ましたが、この機会に、せっかくの時間を自分の学びにあてたいと思い、オーナーシェフに相談し、新しい修業先を探すことになったのです。

この続きは中編で!

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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