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2022.06.02
フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.6『ワーキングホリデーで経験した苦い思い出があるから今がある』後編

こんにちは!

さて今回は、私のワーキングホリデーでの実体験についてお送りしてきたエピソードの最終回です。

前回の記事では、“ジャン・フランソワ・フーシェ氏が経営するパティスリーで修業することが決まるまで”についてお話しました。 今回は、フーシェ氏のもとで修業した際のお話をさせていただきます。

さーて、私はシェルブールにやってきました!
はじめてフランスのパティスリーで働くことになったのでとてもワクワクしています。

シェルブールは、地方ということもあってか、生産者や近所のお店が身近な存在で、近くにあるお花屋さんが突然現れて「今日採った花を持ってきたからケーキに使ってよ~」とか、チーズ屋さんがきて「うまいチーズができたから使ってよ~」といって大量のチーズを持ってきてくれたりするんです。その素材をすぐに使って、焼き菓子やケーキの製造をするというのが日常でした。

地方の人の温かさを感じつつ、必死に技術を習得していると、日本に比べてケーキや焼き菓子、チョコの作り方がとてもシンプルかつ発想が自由であることに気付き始めました。

それは、恐らくオーナーであるジャン フランソワ フーシェ氏の考え方が色濃く出ているからでしょうね。私はフーシェ氏と出会いで、ガチガチに凝り固まった頭のなかの常識をぶち壊してくれたと感じています。

フーシェ氏には「このケーキはこうでなければならない!!」なんて考えは恐らくないと思います。

それを感じたのが、ある日フーシェ氏とケーキの構成について話をしていた時のことでした。フーシェ氏がテーマにしたのは“自然”。そのテーマに沿って出された構成はまさにぶっ飛んでいました…
生地には乾燥した虫をパウダー状にして配合し、生クリームには木を入れて沸かし、香りを出すためのセンターのジュレには、柑橘のフルーツを皮ごとコンポートにしていました。その発想から生まれたロールケーキが次の写真の物です。

「ケーキに虫!?」と思われた方もいると思いますが、フーシェ氏にかかれば、テーマに沿っているものであれば、虫だってレシピの構成に仲間入りするんです。
先ほどのロールケーキでは虫のパウダーを使用していましたが、次にお見せするケーキでは、虫がそのまま使われています(笑)


もちろん、食用の虫で、栄養価も高く注目されている食材のひとつです。

フーシェ氏の独創的な発想には終わりがなく、あるケーキの仕上げには、まさかのカリフラワーやきゅうりなどの野菜を使用していました。

この発想のすばらしさを間近で見られること、そしてなにより試作を何度も繰り返し、納得のいくデザインに仕上げるストイックな姿勢はとても勉強になりました。

フーシェ氏の驚くべきところはまだまだあります。それは、発想力だけでなく、発想から構成に落とし込むスピードが驚くほど早いことです。それを目の当たりにしたのが、私がフランスで働きだした11月のことでした。フランスで人気のパティスリーでは、9月くらいからクリスマスケーキの構成やデザインを考え始めます。フーシェ氏に「今年のクリスマスケーキの構成を教えてもらえますか?」と聞くと、「いや、まだ決まってないよ」と回答するんです。11月ですよ(笑)でもそこでフーシェ氏はおもむろにホワイトボードにクリスマスケーキのデッサンや構成を描き始めて「今年のクリスマスケーキの構成が決まったよ!」と言いました…早すぎるでしょ(笑)本当にその時、この人は天才だと思いましたね。

▲フーシェ氏が、ほんの数分で考えたクリスマスケーキ

デザインはもちろんですが、その構成がすごかった。バニラ、レモン、ノワゼット、しめじ??あのしめじですよ…おそるおそる、試作品を食べてみると、それがめちゃくちゃうまいんですよ!

フーシェ氏の発想力や味の構成は本当に素晴らしいの一言です。そして、それだけでなく仕事の進め方の面で勉強になることもたくさんありました。

厨房では、シェフ、スーシェフ、私の三人のパティシエで製造をしていました。私が全てのパーツ(ケーキに使うクリームや、生地、パンの生地など)を作り、スーシェフの指示のもと他のパティシエが一気に組み立てをしていきます。フーシェ氏のレシピはとてもシンプルで、パーツの仕込みどんどん進められるんです。なので、製造作業が非常に効率的で三人しかパティシエがいないのに、毎日あっという間に約800個(一種類につき)もケーキが製造できるんです。恐らくシェフは、発想したすぐに頭のなかで製造の流れも理解して考えていたんです(驚)

そんな素晴らしいフーシェ氏の店では、3ヶ月間(残りのワーキングホリデーの期間)お世話になりました。私が修行した期間が、ちょうどノエルとガレット・デ・ロワの時期ということもあり、作業内容の密度が高く、とても勉強になりました。

 

そして、私は修行を終え、シェフになるためにパリに向かうのでした。

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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