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2022.09.30

フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.21「おもてなし精神ではなく、とりあえず待つの精神で!」

こんにちは。

フランスに戻ってきて早、1か月が経ちました。

夏のあいだ5週間もお店を閉めていたので、9月に営業を開始してからお客さんが来てくれるか不安ではありましたが、例年以上にお客様が来てくださりホッとしています。バカンス明け、順調な滑り出しだと思っていると…急に嫌なことがいろいろと起きたりするものです。

私は現在フランスに住んでいますが、あくまで外国人。住むため、働くためにはビザが必要です。ビザ更新の時期が近づくたびに、ため息をつく回数が増えるような気がします(苦笑)

私のビザがあと1年で切れる(更新日)ことを、最近ふと思い出しました。あれ??そういえば住所変更を3月に申請したのに、変更後の滞在許可書が届いてないな…。滞在許可書の住所変更が済んでいないと、ビザの更新ができないんです。少々心配になり、ビザの更新のため、île de la cité(シテ島)に向かいました。

▲シテ島にあるパリの警視庁

ビザ更新をする際に訪れるのが、パリの警視庁なのですが、あれ??いつもは入口の前にとてつもなく長い行列ができているのに、今日はなぜだか少ない??入口に近づいてみると、口喧嘩をしたら絶対に負けそうな受付のおばちゃんが、次々と外国人を蹴散らしていました(笑)

きっと私みたいに住所変更やビザの更新が上手くいかずに訪れた人も多かったのではないでしょうか。そのやり取りを盗み聞きしていると…

外国人A
「あのー、ビザの更新の仕方がわからないんだけど、どうやるか教えてもらえますか?」

おばちゃん
「(大声で)全部インターネットに書いています!!はい次の方!」

外国人B
「Hello!!!! ….」

おばちゃん
「(怒鳴り声で) ここはフランスです!フランス語話せない人は帰ってください!」

私の前に10人くらい並んでいたにも関わらず、良くも悪くもあっという間に私の番がきました!!!


「(もちろんフランス語で笑)半年以上前に住所変更したんだけど、変更後の滞在許可書がまだ届いていないんです。ビザの更新も近づいているのでどうなっているか知りたくて来ました」

おばちゃん
「当たり前よ!!住所変更は一年かかるんだから!」


「はぁ!?一年!?」(心の声)

多分、このまま続けても負けるので、とりあえず一年待つしか無さそうです(涙)

▲あのこわ~い受付のおばちゃんがいるとは思えないくらい素敵にライトアップされた夜の警視庁

フランスは自由で、すごく楽しいです。個人的には日本にいた時よりも世界各国の方々と出逢える機会も多く、そのため沢山の方に私のお菓子を食べていただき、評価をしていただけることも多いです。

日本だと、免許更新も住所変更も、市役所に行けば予約なしでその日のうちにささーっと終わりますよね。それに比べて、フランスは、住むためには少々過酷な国(私にとって)ではありますが、仕事をしたり、プライベートを楽しんだりするには最高の国です。

例え住所変更に一年かかっても、日本では当たり前にある素晴らしく親切なサービスのほとんどを失っても、自分の思いや意見を大声で発言できる度量のあるフランスが私は好きです。

とはいえ、日本には日本のいいところがたくさんありますし、日本の国民性やおもてなし精神は世界で賞賛され、決して他の国がマネができない価値があるモノだと思います。
日本のパティスリーで働かれている皆さんが良い例です。ケーキを買う際も、高級ホテル並みの接客と持ち歩き時間の確認後の保冷剤のサービス。箱詰めでは、ケーキの破損がなくなるような固定まで。フランスでは考えられないような接客を、皆さんは普段からしているんです!

話を元に戻しますね。フランスで暮らす時は、日本と同じ感覚でいるとやはり痛い目に遭います。あまり細かい事は気にしない私は、市役所でおばちゃんにいきなり冷たくあしらわれても、「うん。わかった。仕方ないか」と思ってしまうので、今のところ、私にはフランスが合っている気がします。まだまだこれからも、フランスで生活して行きたいと思います。

とりあえず、もうちょっと住所変更後の滞在許可証は待ってみます(笑)

C’est comme ça!

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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