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2022.05.12
フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.3『失敗は成功のもと。パータシュー大爆発から新しい発想が生まれたわけ』

みなさん、こんにちは。

今回は、日本でも大人気のシュークリーム。そのシュークリームづくりに欠かせないパーツのひとつ「パータシュー」についてお話します。

実は、私がこの記事を書くまでは「パータシュー」が誕生した歴史すら知りませんでした。それまでは、きっとフランスではこんな風に誕生したんだろうな~と、勝手に想像していました。

パティシエA
「おい!釜ん中見てみろ!お前のつくったビスキュイめっちゃ膨らんでるぞ!?ルセット間違えたんじゃねーか?」

パティシエB
「間違えてねーよ!うわ確かにやべー、めっちゃ膨らんでる…しかも中は空洞になってんじゃん。でもちょっと待てよ、この中にクリームつめれんじゃね!おれ天才かも!」

残念ながら私の想像は外れました。
「パータシュー」を使ったお菓子やシューの製法はフランスで発展し、現在のシュークリームの形になりました。フランスには、16世紀中頃にイタリアからパータ・シューが持ち込まれたとのことで、しっかりとした歴史のあるお菓子でした。


ごめん!シュークリーム。失敗から生まれたお菓子だと勝手に思って…

でも皆さん、私がこんな想像をしてしまうのには理由があるんです。
私が以前フランス人シェフのもとで働いていた時のこと、その職場で働いていたスタッフが、何か失敗をした時に、落ち込んだり、八つ当たりしたりすることなく「新しい発見だ!」と喜ぶんですよ。そんな光景をみていたら、私がさっき想像した話も何となく理解できるでしょ。

もし皆さんが、日本で自分の作ったビスキュイが失敗して膨らんでいたら、恐らくバレる前にそのビスキュイを抹殺しているでしょう(笑)口が裂けても「発見だ!」なんて言えないですよね…でもフランスではむしろその失敗をアピールします。フランス人は「本当に失敗を笑いやミラクルに変える天才だ!」と実感することが多いです。

本題に戻りこの「パータシュー」ですが、実は私にとっては苦い思い出のあるパーツのひとつでもあります。

私がパティシエとして働き始めた18歳のころ。青森県だけの流行りだったのか、シューロールというお菓子の名前をよく聞くようになりました。私はその当時、そのお菓子を食べたことも、見たこともありませんでしたが、詳しくそのお菓子の情報を調べたあとに、どこからその自信が来たのかは分かりませんが、なんか作れそうな気がしたんです。

一度やると決めたらやらずにはいられないタイプの私。先輩に何度も作り方に注意をされながらも、聞く耳を持たず作業を続行。やったことは非常にシンプルで、ロール用の鉄板にすり切りのシューを準備し、あとは焼くだけです。結果は…釜の中でパータシューが大、大、大爆発していました…その時は、もうこの世の終わりのような光景でしたね(笑)
その当時、僕が働いている店のパータシューのルセットにはアンモニアも入っており、その爆発力たるや、それはそれはとてつもなかったです。

その数年後、シューロールの生地は、パータシューにメレンゲを足して作るものだと知りました(笑) 

それ以外にも「パータシュー」の仕込みや絞りのことで先輩に怒られることもしばしばありました。だって、毎回形や大きさがバラッバラなんですもん(笑)そら怒られるか。でもさすがにこのままでは駄目だと思い、その失敗から私なりに考えたのが、シュー生地をセルクルに入れて焼く方法でした。

▲セルクルにシュー生地を絞る

これであれば誰が仕込んでも同じ大きさになるじゃん!少し手間ではありますが、ロスを減らすことができビジュアルも問題ありません。そしてシューの作り方を誰かに教えるときがあっても、この方法であれば説明しやすいし、形にブレが無い!まさに私にピッタリの製造方法でした。

▲セルクルでシューを焼けば、こんな感じでサイズは同じ!

あの「パータシュー大爆発」から14年。私は、青森県からフランス パリへと拠点を変えた今でも、失敗をしています(笑)

パリに来てからも、セルクルを使いシューを仕込んでいることに変わりはありません。

▲レ・トロワ・ショコラで販売するパータシューを使用した唯一のお菓子。セルクルを使用したシューを使用

いつも通りセルクルにシューをいれて焼いていた時のこと、焼成が終わり出てきたシューを見るとセルクルから生地がはみ出していたんです。失敗したな~と思いそのシューを食べると、なんかブリゼ(練り込みのパイ生地の一種)のような食感で美味しかったんです。

▲セルクルからはみでるシュー生地

そこで私の悪い癖が発動!あの爆発後に学んできた14年分の知識をぶち込めば、なにかできるんじゃないかと考えました。
すると何かに操られるかのように体が動き出し、試作が始まりました。
シュー生地をまず薄くのばし冷凍します。シルパンで上下を挟み、浮かないようにグリルで抑えて焼きます。


焼き上がりをみると、なんとフィユタージュ(折り込みのパイ生地)のような見た目になったんです!


それを見るなりこれはミルフィーユみたいにできるかもと思い、その生地を使い簡単ミルフィーユ風を作ってみました!!

それがこんな感じです!

ん~、なかなかいい感じのものができたな~と満足して、スタッフに食べてみて~と託し帰宅。

翌日にそれを食べたスタッフから感想を聞くと…「翔さん…これ次の日食べたら完全にパンのようでしたよ(苦笑)」

これは失敗だったか(笑)
私のお菓子づくりの旅はまだまだ続く。

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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