東京を始め大阪、京都、神戸まで。関西にもお店を構え、今最も勢いのあるブランド「デリーモ(DEL’IMMO)」。YouTubeは登録者が5万人を超え、SNSでも人気のショコラティエ江口和明シェフが率いるブランドです。店舗によって変わる、美しすぎるパフェに全国のスイーツ好きが虜に。パフェブームの火付け役でもある江口シェフが考える「パフェ論」と、上から見ても、右から見ても左から見ても美しくて美味しいパフェの秘密を取材してきました。
目次
レストランデザートにも通じる、注文を受けてから作られる“出来立ての美味しさ”
Q.「デリーモ(DEL’IMMO)」でパフェを始めようと思ったきっかけを教えてください。
江口シェフ「もともと、デリーモの売り上げの軸はずっと焼き菓子でした。日比谷店をやるようになって、パフェのグラスを変えてみたりとか色々してきました。でも当時赤坂で始めたころって世の中のパフェというものがファミリーレストランとか、ああいうところで出されることが多かったので、パティシエがお店でパフェをやること自体が批判されていた時代でした。僕も先輩たちにも色々言われましたよね(笑)。
Q.なぜそこまでして、パフェをやろう!と思ったのでしょうか?
江口シェフ「ケーキ屋って、例えば 10 時に OPEN しますよね。そして、ケーキ含め商品を完璧に並べる。その店の一番混む時間帯は何時? そう思うと朝 10 時にズラッと並べる意味はあるのかないのか? みんながそうしているからそうする、その考えはないと思いました。そもそも生菓子ってどんどん劣化するんですよ。
でもパフェってオーダーが入ってから作りますよね。そのほうが絶対に美味しいんです。だからケーキ屋が淘汰されていくんですよね。美味しさが全然違います。
とはいえ生菓子も扱っています。うちが生菓子をやっているのは、スタッフの勉強のため。ケーキで儲けようとかは考えていなくて、ケーキは作れた方がスタッフにとってもいいことなので。中途採用の子で技術はあるのに基本中の基本のクリームがたけない子とか結構いるんですよ。そういう子にとってプラスになると思っています。
それにケーキも朝一に並んでいないことが多いです、夕方に全部揃うことも多々あります、それはお客様に合わせて準備しているからです。」
素材と素材とが混ざり合う瞬間が美味しさのキーポイント
Q.この日比谷店の縦に長いパフェは、どのようにして生まれたのでしょうか?
江口シェフ「まず日比谷店を開けるときは、赤坂が手狭でそのあとの事業計画をもとにラボを作るという計画があったんですが、店舗を増やす理由はスタッフが楽になると思ったんです。
日比谷店だけのものが欲しいなと考えたときに、パフェっぽくないグラスを探しました。私の作りたいお店のイメージを考えて、このグラスに行き着きました。これはビールやワインを飲むグラスなんです。今ではこのグラスを使うお店、すごく多いですよね? 面白くないな~と思っちゃいますが(笑)
話を戻すと、パフェは縦長が絶対いいと思っています。
僕の下町の言葉でねこまんまというものがあります。味が混ざっていく段階が美味しいと思っているんです。
パフェを食べる人は何からどう食べていけばいいのか?とか、色々な制約をかけられる方もいますが、“自由でいい”と思っています。
上から見ても横から見ても美しく見えるのは美味しさとつながっていて、“どこから食べられても美味しい”というのを意識して作っています。フレンチみたいに肉食べてから、○○を食べてとか、ソースをかけて~とかではなくて。」
美しさの秘密は、アイスとアイスの接地面
Q.360℃、パフェが美しくなる秘密はどこにありますか?
江口シェフ「アイスとアイスが接地しているところが中心になって、そこから盛り付ける素材が生えていると、すごくきれいに見えるんです。植物と一緒、自然のものと同じですよね。
視覚的な美味しさもすごく大事だと思っています。“わ~きれい”って思って食べるパフェと、すごい地味な見た目で入ってくるパフェ、どっちがおいしく感じるか。絶対、前者のほうが満足度高いですよね。
お客様の“美味しいと感じる味覚要素”は、味の部分って実は一番重要というわけではないと思っています。
ケーキを例に出すと、日比谷店ではケーキをイートインのランチにセットにできます。ケーキが出てきて、“わ~”となる味と、満員電車にゆられて帰って、家で食べるケーキとどっちが美味しいですか? レストランの価値って、そこだと思うんです。レストランって、接客してもらってシェフがいて料理の説明をしてもらって、至れり尽くせり。
デリーモでは、店舗数も多くシェフがいないので、価値としてパフェカード作って、シェフしか知らないような情報を公開し発信できるようにしているんです。」
パフェにおいて、最初に大事なのは“ストーリー”
Q.パフェを構成するうえで、大切にしている要素とはどんなところでしょうか?
江口シェフ「最初に来るのは、味ではなくて“ストーリー”です。私のお菓子作り全般の一般的な考えは、素材からチョコを合わせるパターンと、チョコに対して素材を合わせるパターンがあるんです。例えば、カカオ70%のビターなチョコレートが来たら、酸味を入れようかな、苦みを入れようかな、甘みを入れようかなと小さい中に何層も重ねていこうと。これはボンボンショコラでも同じです。
でもパフェはそうじゃないと思うんです。例えば、美味しいピエモンテ産のヘーゼルナッツがありました、でもそこに同じ産地のトリュフを合わせようとは思わない。それって誰がわかるの?という疑問が残ります。わかりやすい素材で、わかりやすさを伝えることが大事だと思っています。
またもう一つ大事なポイントがあって、人がイメージする空気感を表現することも大事です。例えば、マリーアントワネットをテーマにした時に、ピンクマカロンのって、かわいいカラーリングで……みなさんが思い浮かべるイメージの空気感をひろって表現する。今出している『ショコラティエ』というパフェは、“なんだか、チョコいっぱいだよね、本格的なんだろうな”と思わせる。サステナブルなチョコを組み合わせたり、付加価値はつけていくんですが、入り口はわかりやすさや、イメージって大事ですよね。
例えば相撲取りっていうパフェがあって、めっちゃスマートなグラスのパフェでてきたら超がっかりしますよね(笑)。事前期待を上回るほうが、サプライズになってより魅力が増すんですよ。」
●About Shop
パティスリー&ショコラバー デリーモ目白店
東京都豊島区目白2丁目39−1
営業時間:10:00~18:00
定休日:なし