さー!!いちごの季節になりました!!
いちごの季節が終わる前に、パリでシェフとして働き始めた頃に知った、忘れられない「いちご」に関するできごとをお話します。
パリで働き始めた頃の私は、まだまだ日本にいる時の感覚で「どうだ!これが日本のテクニックだ」という気持ちでケーキを作っていました。
いちごのショートケーキは、日本を代表するケーキです。ショートケーキのふわふわとしたジェノワーズは、その頃はまだフランスではあまり知られておらず、私が作ったケーキを食べたお客様からは「すごくふわふわで美味しい!」と好評でした。更には、フランスを代表するM.O.Fパティシエまで、私の作ったビスキュイを食べ「どうやって作っているんだ!今すぐ教えてくれ!」と言われ、そのシェフが働く最高級ホテルまで出向きビスキュイの講習を行うほどでした。
お客様や有名シェフにまで好評だったので、いちごの季節が終わった冬になっても、いちごのケーキを作っていました。すると、来店していただいたお客様から「どうして冬の時季にいちごを使うの?」と質問されることがありました。日本では、旬に限らず年中いちごのショートケーキを製造していましたし、クリスマスに至っては、一番いちごの使用率が高い時季だったと思います。なので「何でそんなことを聞くんだろう?」とあまり理解ができない自分がいました。
そして、冬も終わりに近づき、少し暖かくなってきた2月末頃。友人のフランス人シェフパティシエがお店を訪ねてきたときのことでした。
●友人
「翔、3月の新作ケーキはどんなものにする予定なんだ?」
●私
「冬後半だし、少し春めいてきたから、フルーツ屋さんにだんだんと赤いフルーツがでてくる頃だろ。いちごのケーキで新作考えようかな」
●友人
「おいおい!なんでまだ冬なのにいちごのケーキをやるんだ?」
●私
「少し暖かくなってきたし、春っぽくて良いかなと思ってさ」
●友人
「そんなの、だめだよ!」
●私
「だって、フルーツ屋さんにいちご売っているよ?」
●友人
「お前は全然わかってないよ!この時季にあるいちごがどうやって生産されているか分かるか?ビニールハウスで暖房使って、寒いのに無理やり生産しているんだよ!」
●私
「え?それの何が問題なの?」
●友人
「問題だろ。無理矢理この季節に生産したら、地球温暖化につながるだろ!いちごはわざわざ暖房使わなくても、暖かければ生産できるんだから」
●私
「じゃあ、なんでフルーツ屋さんにいちごが売ってんのよ?」
●友人
「お前みたいなやつが買うから、農家は売れると思ってつくるんだよ。売れなかったら、わざわざ冬に生産しないだろ」
という、やりとりがあったんです(笑)
フランスのいちごの旬は、4月から6月頃まで。いちごの種類によっては、初秋頃までがピークです。ざっくり言うと、気温が暖かい間はいちごの旬の時季と言えます。
今まで、売れるしお客様も喜んでもらえるからということを理由に「いちご」を使用したケーキを旬の時季に関係なく製造していましたが、友人からの地球温暖化につながるという言葉に「なるほど!」と思い、そこから少しずつ環境への意識も高くなっていきました。私がフランスに来て5年が経ちますが、パリはみるみる変貌していっています。すごい工事をしているなと思ったら、大通りの車の車線が半分になって、その半分が自転車専用道路になっていました。
市営バスがガソリンから電気仕様になっていることにも気付きました。
そして、スーパーなどで有料化されていたレジ袋(プラスチック製)は販売がされなくなり、紙袋かエコバッグのみになりました。
コロナの影響で2021年末から2022年末に先延ばしになっていた、二酸化炭素の排出の削減するため、バーやカフェのテラスで暖房の禁止も少しずつ動きがあります。
昨今のフランスで環境への取り組みがより活発化しているなかで、パティシエとして何ができるのか? フランスでケーキを作っている以上、環境のことまでも考えなければ。
それからはと言うと、フルーツの旬の時季や美味しさについて調べるようになり、現在は、その時季に沿った旬のフルーツを使ったケーキを作ることを心がけるようにしています。
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