ARTICLE
2022.04.15
フランスからつづる!ブーランジェ通信 by成澤 芽衣 Vol.20『シラ・ユーロパン2022で開催されたパンとお菓子のコンクールで審査員をしてきました!』

こんにちは。

先日、パリで製菓製パン関連の展示会「SIRHA EUROPAIN (シラ・ユーロパン)2022」が開催されました。

元々この展示会は、今年の1月下旬に開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け3月下旬に延期となっていました。
この展示会を楽しみにしている方も多く、開催中の来場者数は例年と変わらない印象を受けました。その大きな理由のひとつは、会場内で開催されるコンクールがあるからなんです! 

開催される主なコンクールは3つあります。
①Coupe du Monde de la Boulangerie(クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー)
4年に1度開催されるいわばパンのワールドカップ。各地で予選が行われ、全世界から参加が認められるのはたった12カ国のみで、参加国からは代表選手が3人選出され、その選手をサポートする選手団が作られます。
本戦では、規定の品目を8時間以内に仕上げ、その技術・スピード・芸術性を競います。
このコンクールでは、過去に日本人選手も功績を残しており、この大会での優勝を目指している日本人も多いのではないでしょうか。

②Coupe Europe de la Pâtisserie(クープ・ユーロップ・ドゥ・ラ・パティスリー)
ヨーロッパの国々のチームがその腕を競うパティスリーの大会。
選手2名とコーチ1名で編成されたチームが、5時間のあいだに2つのアントルメ・グラッセ(氷菓)、12のシェア・デザート、7つのレストラン・デザート、そして飴とチョコレートそれぞれのピエスモンテを製作していきます。ピエール・エルメ氏をはじめとする審査員たちが見つめるなか、パティシエとしてのあらゆる技能や芸術性が試されます。

③Coupe de France des Écoles(クープ・ドゥ・フランス・デ・エコール)」
今年で8回目を迎える、フランス国内に数多くある製菓・製パンの専門学校が参加する、いわば「パンとお菓子の甲子園」。学校で選ばれた生徒たち3名が1つのチームとなり、先生のサポートを受けながら、与えられたテーマに沿ってパン、ヴィエノワズリー、パティスリーなどを5時間で製作し、技術を競います。

実は今回、この「Coupe de France des Écoles」の審査員をつとめることになりましたので、当日の様子を少しご紹介したいと思います。 

▲審査員のメンバー。右から2番目が私です

このコンクールでは、以下2つのカテゴリーで競技が行われます。
・エスポワール(Espoir ):レベル4受講の学生
・エクセロンス(excellence):レベル5受講の学生
両カテゴリーとも22歳以下で店舗での実務経験がある専門学校生になります。
専門学校生ではありますが、各県の予選を勝ち抜いてきた精鋭ばかりで非常にレベルの高い職人ばかりです。

さて本戦でのチーム構成ですが、それぞれ同じ専門学校に通う学生が以下のような担当に分かれます。
①ブーランジェ(Boulanger :ハード系のパン担当)
②トゥーリエ(Tourier :クロワッサン等のヴィエノワズリー担当)
③パティシエ(Pâtissier /:ケーキ&ピエス担当)

このようなコンクールで審査員をするのは今回で2度目なのですが、選手以上に緊張していたかもしれません。このコンクールの結果が彼らの今後の職人人生を左右するかもしれないので、私も審査に力が入ってしまいました!

コンクールでは、作品の見た目や味、アイデアはもちろんのこと、各チームの作業工程の組み方やチームワーク、衛生面など、隅々まで審査員がチェックし採点していきます。

▲審査員(中央女性)も含め選手もみんな真剣そのものです

▲チームワーク抜群のブーランジェとトゥーリエの2人。緊張感で張り裂けそうな雰囲気の中、お互い声を掛け合って、素晴らしい仕事ぶりでした

審査をしているなかで、印象に残った点がいくつかあります。
選手のなかで1番若い職人はなんと17歳!年齢を聞いたときは「まだ高校生!」と、とても驚きましたが、彼の集中力、コミュニケーション力、技術、そして作り上げるパンのどれをとっても素晴らしいもので「年齢とはただの数字に過ぎない」ということを感じました。
また、男性のパン職人が多いなか、ブーランジェール(女性パン職人)も活躍していました。

▲フランスでも最近はブーランジェールが増えてきています

そのブーランジェールは、溢れ出るパンへの熱意と集中のためか頬を赤く染めながら懸命に戦っており、その姿を見て目頭がとても熱くなりました。

そして、5時間にわたる競技が終わりました。

▲作品全てを作り終えてひと安心の笑顔を見せる選手たち。コーチの二人(両端)も肩の力が抜けてホッとしている様子です

審査員は、すべてのパンとお菓子を試食し採点をおこなっていきます。

▲審査用のパンを切り分けるチームのコーチ(両端)

▲丁寧に作られたパンの作品

▲完成度の高いお菓子たち。20歳のパティシエールが一生懸命作っていました

全てのパンとお菓子の試食と採点を終え、いよいよ結果発表のタイミングがきました!
表彰台に呼ばれた優勝チーム、準優勝チーム、みんな今日までずっと準備してきた努力が報われて本当に嬉しそうでした。

▲表彰式を終えての記念撮影。みんなとても素敵な表情をしています

試合中は眉間にしわを寄せて険しい表情でたたかっていた彼らも、大会を終えた安堵の気持ちと嬉しさで、無邪気に笑顔をみせている姿がとても印象的でした。

惜しくも4位になってしまい、表彰台のすぐ横で悔し涙を流していたブーランジェの男の子は、5時間の試合なかで幾度となくイレギュラーな状況に見舞われました。
私がその都度いれるアドバイスに素直に「ありがとうございます!」といって、遅れを取り戻そうと必死にパンを作る彼の姿に胸をつよく打たれました。
悔し泣きしている彼には、今後もパンを作って欲しいと思い「もっと自信持って良いんだよ、あなたの熱意と仕事は素晴らしいものですよ。」と声を掛けると「自分にはいつも自信が足りないって分かっている。でも先輩のあなたからそう言われてとても嬉しい。これからも頑張ります。」と答えてくれました。 
今回は成績がふるいませんでしたが、彼の様な素直で真面目な職人は、技術を重ねることで、より成⻑することを確信しました。また、私たちはこれからも彼らの手本であり続ける努力を怠ってはいけないと気づかされました!

 

フランスのパン業界は、残念ながら職人がどんどん減っている状況にあるようです。
そのため、全国のブーランジェ・パティシエ協会やさまざまな関連企業が、ブーランジェやパティシエという仕事の魅力や文化を若い世代に伝えることに懸命になっています。

私の力など微々たるものだと思いますが、今回のようなコンクールやそのほかに何か貢献ができることがあれば積極的におこなっていきたいと思います。

 

関連リンク

この記事をシェアする
Writer
成澤 芽衣
成澤 芽衣
運営サイトはこちら
2017年 フランス全国バゲットトラディションコンクール 優勝。 現在はフランスでフリーランスのパン職人として活動する傍ら、日本でのイベントや、東京にあるベーカリーでパンの監修をさせていただいております。 フランスから私なりの視点で、パンのこと、普段のことなどなど。 生のフランス情報をお贈りします。
1
ARTICLE
2021.11.11
パン屋が抱える5つの課題を解決できる、パンの自販機の魅力とは
chefno編集部
編集長 リョウ
2
ARTICLE
2022.09.15
第9回モンディアル・デュ・パン日本代表選考会レポート!
chefno編集部
編集&映像制作 コウヘイ
3
ARTICLE
2022.03.02
パンづくりとは我慢や苦労ではない。パン業界の古い慣習をなくしていきたい下町の人気店「メゾンムラタ」が語る効率化の重要性
吉村 智樹
4
ARTICLE
2022.05.04
「素材の自社加工」と「我が街のブランド化」で快進撃を続けるケーキハウス ツマガリ
吉村 智樹
無料会員を募集しています!
chefnoでは、会員登録することによって、会員限定のコンテンツを視聴したり、 製パン・製菓のセミナー(無料・有料開催)に参加することができます。 ほかにもいろんな特典を考えております。みなさまの登録をおまちしています!