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2022.09.14

フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.20「材料高騰から考えた対策」

こんにちは。

パティシエ通信vol.17では原材料の価格が上がっていることについて書きました。今回は、その状況と私なりに考えた対策についてお話します。

ロシアがウクライナに侵攻して間もなく、ウクライナで生産されているサラダ油などの価格が高騰しました。調味料等に使われている容器(ビン)などもウクライナ製造のものが多く、「マスタードやコンフィチュールがスーパーから消えるのでは!?」なんて噂までフランスで流れていました。

ウクライナからの輸入品のなかで、お店で使用頻度の高かった乳製品やオリーブオイルが不足したり、価格の高騰を危惧していました。ですが、幸いフランス国内の生産品でまかなえるものも多く、品不足もなく、価格もそこまで大きな変化はなく許容範囲という感じホッとしていました。

しかし、7月末からの1ヶ月間のバカンスを終え、日本から帰国すると…。乳製品まで価格が上がってきている!!というか材料だけでなく、様々な物の値段が上がっている!!折からの人件費の上昇も背景にありますが、 何よりもガソリン価格の高騰は非常に影響が大きいです。

パリの街も電気自動車が増えてきているとはいえ、材料を配送する業者さんが乗っているトラックの多くはまだまだガソリン車です。そりゃ材料も値段を上げざるを得ないですよね。

でもせめて国内生産でまかなえる乳製品だけは「値段上げないで」と思っていたのですが、じつはこの値上げの背景には、ロシア・ウクライナ問題とは別の要因がありました。 それは、6月からの雨不足により、牧草が順調に育っていないこと、牛に与える飲み水が不足したことです。その影響で牛の発育が遅れ、乳製品の出荷量が秋以降減少することが分かっているからです。これは困った…。

でも、ここで諦めていても仕方がありません。「乳製品の原価をおさえる方法はないか?」と考えました。さすがに牛乳や生クリーム、バターは私には作れないですし、絞っても出てこない(笑)ので、いつもは購入しているマスカルポーネチーズを、今回は自分で作ってみました!!

脂肪分35%の生クリームがメインのフランスでは、マスカルポーネチーズは、コクを出したり、クリームにコシを出したりするために、お菓子作りには欠かせない材料の1つです。そのマスカルポーネチーズの原材料を見てみると、殺菌した生クリームとクエン酸の2つの材料でつくられていました。

さっそく生クリームを沸かし、クエン酸(レモン汁でも可能)をひとつまみ。粗熱をとってからふるいに布をかぶせ、布の上にクリームを乗せて一晩冷蔵庫に置き余分な水分を取り除いたら完成します。

▲これは冷蔵庫に入れる前に布の上に乗せたクリームです

一晩おいて。コクのある美味しいマスカルポーネチーズが出来ました!ほんの少し手間はかかりますが、沸かして漉しながら冷ますだけ!

▲完成。画像だと伝わりづらいですが、水分が抜けてしっかりしたマスカルポーネチーズになっています

原価も半分以下に抑えられるので、自分で作るのもありですね(笑)

日本の生クリームは、生クリーム自体の粘度が少ないものが多いので、少し緩めのマスカルポーネチーズになるかもしれませんので、そこは調整してくださいね!

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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エディター兼ライター シオリ
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