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2022.12.27

フランスからつづる!パティシエ通信 by木村 翔 Vol.24(後編)『試作には時間をかけて理想のカタチに』

パリブレスト(プチガトー)

こんにちは。

前回は、私の普段の試作のスタイルについてお話をしましたが今回もその続きです。

今回は、パリブレストの試作をした時のことについてお話します。

私が初めてパリブレストを店に出したのは、今から2年前のこと。その時に店に来てくれたある料理人が、私のパリブレストを食べて「とても美味しかったよ!」と言ってくれたんです。味には自信がありましたので、嬉しい気持ちはあったのですが、実は心の中で「まだ理想のカタチにはなっていないんだよな~」と思っていました。そのお客さんには「見た目も含めた理想のカタチになるまでにはあと3年くらいかかるかもしれません」と答えた記憶があります。そう、前編の記事を見ていただいた方であればお察しの通り、私はケーキを理想のカタチにするまで何回も試作をします。

夏が終わり、秋になるころから並べているのがパリブレスト。今年もシーズン(秋)が近づいて来たときには「今年こそは納得するパリブレストにしよう」と意気込み、時間があれば試作をしていました。ここからは、その試作風景をご紹介します!記録として撮ったものなので適当な写真が多いですし、結局、納得できるものがまだ完成しておりませんが、お付き合いください(笑)

次の写真は、去年まで販売していたパリブレストです。

パリブレストの試作写真

これの何が納得いっていなかったかというと、全体的に茶色くて艶がないことです。味は美味しかったんですが…。ちなみに、パリで販売されているパリブレストは、伝統的なリング型が7割、オリジナルの型のものが3割くらいといった感じです。

次の写真の右側にあるものが、以前Vol.3『パータシュー大爆発』の記事を書いたときに登場したシュシュというお菓子です。シュシュのように、シューをセルクルに入れて筒状に焼いてみてはどうか?と試作したのが画像の左下の写真です。

パリブレストの試作写真

シュシュと同じくらいのボリュームを出せば、見た目がまとまるかと思いきや、ノアゼット(上の画像左上)をつけても何かしっくりきませんでした。

ならば、筒状のまま絞り、真ん中を空洞にして、プラリネの艶感とクリームの艶のない部分とバランスをとってみたら(下の画像左上)…。よし、絞りを二段にしてみよう(下の画像右上)…。これでもかと、三段目も絞るとほぼ変わらない印象になり微妙でした(下の画像左下)。

パリブレストの試作写真

それでは、シューを逆さにして絞ってみるか!(下の画像左上、右上)

パリブレストの試作写真
おっ!なんか少し可愛くはなりましたが、大きな変化はないですね(上の画像左下、右下)。しかも、食べづらそうなのでボツ。

さあ、どんどんいくぞ!
次は、キャラメリゼしたノアゼットをのせて(下の画像左上段、中段)…。シューの蓋を輪っか状に抜いて、プラリネでグラサージュのようにかけても(画像左下段)、うーん。

パリブレストの試作写真

まだまだ!
次は、クリームに白いグラサージュをかけたら(下の画像右上、左)、まずまずの感じかな。この調子で、茶色のグラサージュをかけてみると(下の画像右下)、なんだか微妙になってしまった…。

パリブレストの試作写真

疲れてきたけど、まだ頑張ります。
タルトリングにパータシューを絞って、回転台でクリームを絞り、溝にプラリネを!!これは、結構好きだったんですが、手間がとてもかかるので、継続して製造はできないかなと感じました。

パリブレストの試作写真

少人数で製造をしているので、継続できないと意味がないんです。そんな時は「手間がかかりすぎて、モチベーションが維持できるか??俺(笑)」と自分に問いかけるようにしています。まぁ~惜しいけどボツになりました。

そしてふと何でパリブレストにわざわざこだわっているんだろうと思ったんです。そもそも試作したものはパリブレストの形でもないし(笑)。「じゃあ私の好きなパリブレストとサントノーレを合体させてしまえ!」と思えてから、なんか気持ちが一気に晴れて、一発で納得できる出来栄えになりました。

パリブレスト(アントルメ)

▲パリブレスト(アントルメ)

パリブレスト(プチガトー)

▲パリブレスト(プチガトー)

この商品を食べて下さったお客さんからは「パリブレストもサントノーレも大好きだから夢のケーキね!」なんて嬉しいお言葉をいただき、フランス人にも愛されるお菓子になりました。

前編・後編にわたり私の試作のお話にお付き合いいただきありがとうございました~。

今回で2022年の記事のお届けはラストになります。
皆さま良いお年をお迎えください。

 

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Writer
木村 翔
木村 翔
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青森県三沢市出身。
日本で10年修行後、渡仏。フランスに移住して5年。
現在は、パリにある「LES TROIS CHOCOLATS PARIS」のシェフパティシエとして働いています。
フランスでこの職業に誇りを持ち、異国での“パティシエ人生”を楽しんでいます。
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