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2023.05.25

パリの食の祭典「テイスト・オブ・パリ(Taste of Paris)」現地レポート!

グラン・パレ・エフェメール

みなさん、こんにちは。

2023年5月11日から14日までの4日間、パリで、第8回「テイスト・オブ・パリ(Taste of Paris)」が開催されました。
このイベントは、パラス*・ホテルやミシュランの星付きレストランなどの高級ガストロノミーから、若手シェフの人気レストラン、さらにリアリティ料理対決番組「Top Chef」で注目を浴びたシェフなど、料理界のスターから若手まで約40名が参加する、まさしく食の祭典。一般向けのイベントとしては比類のない一大イベントです。
*パラス:五つ星よりもランクが上の最高級クラスの称号

というわけでchefnoフランス編集部はみなさんにパリの食の最先端をお伝えすべく、さっそく会場へ行ってきました!

フランス人の食への情熱を再認識させる盛況ぶり

会場となるのは、エッフェル塔が正面に見えるシャン・ド・マルス広場に面した10 000㎡のグラン・パレ・エフェメール。
中に入ってひときわ目を引くのは、中心部にある「ローラン・ペリエ」のシャンパン・バー。 すぐ近くのステージではバンドのライブが一日中、お祭り気分を盛り上げてくれます。

テイスト・オブ・パリ会場

▲「ローラン・ペリエ」のシャンパン・バーがお出迎え

入場料は24€で、会場内では専用のプリペイドカードに自分の好きな金額をチャージし、各スタンドにてキャッシュレス決済というシステム。
レストラン系のスタンドではスターター、メイン、デザート、それぞれ6-12 €というリーズナブルな価格設定です。一般来場者にとっては、なかなか行けないレストランの料理を10€前後のミニサイズで味わうことができる絶好の機会です。

テイスト・オブ・パリ会場

▲エッフェル塔を眺めながら一流の味を楽しめるVIPイートインスペース

各スタンドに立つシェフたちは、 調理を監督しながらも、列に並ぶお客様一人ひとりに自ら料理を配ったり、質問に答えたり、記念撮影も快諾と、時間を惜しまず丁寧に応対していました。

一流のシェフたちと触れ合える、レストランではなかなかない体験ができるところも、このイベントの魅力のひとつです。さすが美食の国フランスといったところで、ガストロノミーへの情熱と探求心溢れるあらゆる世代の人々が一堂に集まる一体感がありました。

イベントに華やかさを添えるパティスリー

数々の料理とともに、フランスのガストロノミーに欠かせないのがパティスリー。今年は、ブノワ・カステル(Benoit Castel )、ニナ・メタイエ(Nina Métayer)をはじめ、注目の7名のシェフが参加し、会場に2か所、日替わりのパティスリースタンドが設置され、たくさんの人で賑わいました。

まず向かったのは、話題の女性パティシエ、ニナ・メタイエのデリカティスリー(Délicatisserie)のスタンド。 2020年のブランド開始時は、サイト注文のみの形態でスタートし、翌年にはパリのプランタン百貨店にパティスリーコーナーとティーサロンがオープンしました。フェランディ料理学校で学び、「ル・ムーリス」、「ル・グラン・レストラン」、「カフェ・プーシキン」などで経験を積んだ実力派です。

ニナ・メタイエ

▲「デリカティスリー」のシェフ・パティシエール、ニナ・メタイエ

デリカティスリーからは、シェフの繊細な技術とセンスが詰まった3種類のスイーツが提供されていました。

[ラ・フルール] バニラムース、オリーブオイル使用のバニラビスキュイ、クラッシュしたピーカンナッツとプラリネ、 キビを使用したクランブル

ニナ・メタイエの「ラ・フルール」

▲「ラ・フルール(La Fleur)」

[ロリヴィエ] オリーブのプラリネ、オリーブオイル使用のカカオ・ビスキュイ、柑橘風味のビターチョコレートムース

ニナ・メタイエの「ロリヴィエ」

▲「ロリヴィエ(L’Olivier)」

[ユッピ フレーズ] (テイスト・オブ・パリ限定スペシャル)
いちごとポピーのコンフィ、ベリーとビネガーのジュレ、ヨーグルトアイス、ココナッツ風味のシャンティ、焼きメレンゲ

ニナ・メタイエの「ユッピ・フレーズ」

▲「ユッピ フレーズ(Youppi Fraise)」

明るく元気一杯のニナ・メタイエの笑顔は、周囲の人々をたちまち幸福にしてしまうようなオーラに溢れています。この日も笑顔を絶やさず、たくさんの来場者たちとお話したり写真を撮ったりしていました。

ほかのパティシエールたちとともに、料理業界での女性の地位向上のために活躍するニナ・メタイエ。そんな彼女に、日本でパティシエールを目指す女性の皆さんにメッセージをいただきました。

続いてはホテル「ル・ロイヤル・モンソー・ラッフルズ・パリ」のスタンドへ。

同ホテルのパティスリーでは、イズニーバターやタヒチ産バニラといった高品質な素材をぜいたくに使った「フラン・ロイヤル」が大人気。
「フラン・ロイヤル」の生みの親である同ホテルのシェフ・パティシエ、カンタン・ルシャ氏がテイスト・オブ・パリ限定で特別に披露したスペシャル・スイーツは、液体窒素を利用した製法で作るフランのアイス、[FlaN₂]。
クランブルとバニラ風味キャラメルソースがベース。その上に作り立てのフラン・アイスが乗せられ、さらにバニラ入りシャンティクリームでふんわりとシンプルに仕上げられたデザート。シェフのアドバイス通り、スプーンを容器の底からすくって食べると、それらが混ざり合って絶妙な美味しさでした。

「卓上ミキサーから白い煙を出しながら作る演出は、このイベント用に考案したんです」と楽しそうに話しながら、シェフは自ら次々とフラン・アイスを作っていました。

カンタン・ルシャ

▲卓上ミキサーでフラン・アイスを作るカンタン・ルシャ シェフ

▲「ル・ロイヤル・モンソー-ラッフルズ・パリ」の フラン・アイス「FlaN₂」

▲「ル・ロイヤル・モンソー・ラッフルズ・パリ」の フラン・アイス「FlaN₂」

フランは、卵と牛乳をベースとしたカスタードクリームをパイ生地に流し込んで焼いたシンプルなお菓子で、フランスの伝統的なスイーツ。

これまでは家庭のおやつのような位置づけで、ベーカリーで買える安価なお菓子という印象でしたが、いまでは有名パティスリーでも、素材にこだわった正統派のものや、アイデアの光る新しいフランが登場して、改めて魅力が再発見されているお菓子で、ちょっとしたブームになっています。

ロイヤル・モンソー・ラッフルズ・パリの他にもフランを再構築したスイーツを提供するスタンドがいくつかあり、なかでも注目されたのが、ハムやソーセージなどのシャルキュトリー専門店「メゾン・ヴェロ」が提供するオリジナルのフラン。

シャルキュトリー専門店らしく、パテのパイ包み用のパイ皮に包まれた、キャラメル入り角型のフランなんです。
カット前の外見は、どう見ても塩味系のパテ・アン・クルート。注文する際、「これ本当にスイーツですか?」とつい質問してしまいました。
食べてみるとほどよい甘さで、バニラの効いた生クリームの濃厚な味。 パテ・アン・クルートにあるゼリーの部分には、キャラメルソースが添えられています。 伝統的なフランより、もっちりとした食感が、しっかりとしたパイ皮とマッチしていて、バニラ・スティックのアクセントも素敵でした。細かく砕いたプラリン・ルージュが、優しいフランの色を引き立てると同時に、香ばしさも添えていました。

カンタン・ルシャ シェフの [FlaN₂]と共に、今回ユニークさが注目されたスイーツでした。

▲「メゾン・ヴェロ」の「フラン・アン・クルート」

▲「メゾン・ヴェロ」の「フラン・アン・クルート(Flan en crôute)」

そして会場奥には、重鎮レストラン、ポール・ボキューズのスタンド。

今年は、一流メゾンで修行した次世代シェフ達が多くクローズアップされているなか、重鎮ポール・ボキューズのスタンドには、MOFの称号を持つ4名のシェフが参加していました。
ポール・ボキューズ氏の精神性とノウハウを継承するMOF4名はこのイベントのために、氏へのオマージュを示す王道のフレンチメニューを提供していました。
そのうちの一品のデセールは、[ムッシュー・ポール]という名の正統派ババ・オ・ラム。

会場内に、進化した創作スイーツが多いなか、ここではしっかりと伝統へのオマージュが存在していることが印象的であり、感動的でした。

ババ・オ・ラム「ムッシュー・ポール」

▲ポール・ボキューズ氏へのオマージュとして制作されたババ・オ・ラム「ムッシュー・ポール(Monsieur Paul)」

他にも興味深いスタンドがいろいろ

ほかのスタンドでも、日本の食材であるシソを使ったプチガトーや、ムースとジュレをバンズではさんだハンバーガーのようなスイーツなど、楽しい創作性のあるスイーツが提供されていました。

フランス料理の最高峰のホテルやレストランのスタンドの他にも、地中海やアジア系のストリートフードのスタンドがフュージョン系のバラエティに富んだメニューを展開したり、各種飲料やスパイス、生ハム、チーズなど、さまざまな食材のスタンド約65件が出展し、会場を彩りました。

また、会期中は、ジャン・フランソワ・ピエージュやクリスチャン・ルスケールといった有名シェフたちによるマスタークラス、料理教室やカクテルのアトリエも開催され、多くの料理愛好家たちが真剣な面持ちで参加していました。

いろんなスタンドがあるなかで編集スタッフの興味を引いたのが、航空会社「エア・フランス」のスタンド。
カウンター席でファースト、ビジネスクラスで出される品が提供され、カウンターの中に立つ料理監修のシェフ達の説明を直接聞きながら賞味するという、贅沢かつ興味ぶかい企画でした。プレートとデザートで18€の予約制ということで、次回機会があればぜひ参加してみたいと思うスタンドでした。

テイスト・オブ・パリの様子

▲料理についてお客様に説明するシェフたちの姿

取材を終えて

今年の「テイスト・オブ・パリ」は、4日間で4万人を超える来場者で賑わいました。
参加しているシェフたちにとってはまさに嵐のような4日間と言えますが、参加者のほとんどが、パリと近郊に製造拠点を持つので、4日間の集中したオペレーションも実現可能にできるそうです。

それでもやはり、来場者の期待に応えたいという作り手の情熱があってこそのイベント。ガストロノミーに対する情熱と、その未来への意識の高さがうかがえます。

パリの一流シェフたちの料理やスイーツがお手頃価格で気軽に味わえる「テイスト・オブ・パリ」。みなさんも、5月にパリに来られた際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

「Tasete of Paris」ホームページはこちら

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chefnoフランス編集部
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