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2025.02.04

「ママ職人のためだけではない!? 産休・育休制度を従業員確保の救世主にするために」 女性も長く働ける製菓・製パン業界へ!vol.10

はた楽
はた楽代表佐藤東氏
社会保険労務士法人はた楽 代表
佐藤 東(ひがし)さん
京都府舞鶴市生まれ。
大阪市立大学法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。1999年から2011年までの12年あまり、人事コンサルティング会社で勤務し、人事評価・賃金制度設計、研修プログラム開発運営に従事する。ベンチャー企業の人事制度コンサルティングを提供する会社で執行役員を経て、2013年、人事コンサルティングやノウハウツールを販売する『株式会社はた楽』を設立。同年、「住み慣れた自宅で暮らし続けるための入浴介護サービス」を核とした、介護事業所(通所介護事業所)『株式会社プロキャリ・ライフケア』を設立。2016年に助成金申請とクラウドシステム運用に強みを持つ労務サービスを提供する『社会保険労務士法人はた楽』の運営をスタート。

パティシエ・パン職人の入り口とも言える製菓製パン系専門学校の学生さんは、約8割が女性です。これは筆者が学生だった20数年前から変わっていません。
それなのに、当時いっしょにお菓子を学んだ友人のなかで、現在も製菓業界で仕事を続けている女性は1人しかいません。
時代が令和になった今、製菓・製パン業界の労働環境もいくらか改善され、女性職人が生き生きと働ける場所になったのではと、期待をこめて現状を調べてみると、予想に反した答えが見つかりました。
なんと、就職してから半年後に行う離職調査(※出典元 辻調グループキャリアセンター調べ)によると、2021年度の女性の卒業生のうち、19.2%が仕事を辞めてしまっていたのです。
なぜ、女性が製菓・製パン業界で働き続けにくいのか?どんな理由で仕事を辞めることが多いのか?理由のひとつにライフステージの変化が挙げられます。結婚後、家事や子育てなどと仕事の両立について悩むことは製菓・製パン業界に限った話ではありませんが、早朝からの勤務や、長時間労働が多いこの業界では、生活の軸が変わっても職人として働き続けることが難しいのが現状です。
培ってきた技術と知識を活かし、生き生きと働き続ける女性職人たちが増えてほしい。すべての人が好きな仕事を長く続けることができる業界になってほしい。そして製菓・製パン業界の新人職人さんたちにも安心して夢を抱いて欲しい! との思いで続けてきた連載企画、今回は変化球でお届けします。

事業主の味方、社会保険労務士法人とは

古くから大阪の商業の中心地であった大阪市中央区北浜。水運に支えられて発展し、歴史的建造物が今もなお残る美しいエリアに、社会保険労務士法人「はた楽」さんはあります。社会保険労務法人とは、主に企業の従業員雇用や労務手続き、給料計算の代行を行う会社です。日常生活の中ではあまり聞くことのない、社会保険労務士法人という言葉。会計事務所や弁護士事務所のようなお堅いイメージしか湧かない筆者は、少し緊張気味に事務所を訪問しました。

はた楽

どんな方が主にどんな相談でこちらに来るのですか?

「法人化されている経営者の方はもちろん、従業員を雇われている個人事業主の方が、従業員の雇用、労務の手続き、お給料の手続きなどの事で質問に来られます。事業をされている方が人を雇用するうえで行う業務(労務)全般についてサポートするサービスを提供しています」

労務関連の質問で、今回のテーマ、産休・育休の相談は多いですか?

「はい、我々が力を入れているということもありますが、多いです。これまでの経営者からの質問は、女性従業員が出産されることに対しての産休・育休手続きの問い合わせが中心でしたが、最近では男性従業員の育休制度についての相談も増えてきました」

産休・育休制度の手続き代行に力を入れ始めたのはなぜですか?

「実をいうと、5~6年前に私自身が『はた楽』とは別に、もう一つ経営している介護事業サービスで女性従業員が産休・育休を取得することになって、必要に迫られたことがきっかけなんです。社会保険労務士の資格を持ち、人事コンサルタントとしての業務経験を通じて、常に人事・労務の領域に携わってきたにもかかわらず、中小企業経営者の立場になった時に産休・育休を取る従業員に対してどう対処すればいいかわからなかったんですよ。世の中の経営者の方にとっても悩ましい分野ではないかと思い、専門家としての知識と経営者としての経験を活かし、情報提供やサポートをすることが我々にできることだと思ったんです」

産休・育休制度について よくある質問 Q&A

産休・育休という言葉を聞いたことはあるが制度についてはよく知らない人もいるかもしれません。みなさんは正確な知識をお持ちでしょうか?筆者が製菓業界で働き始めた今から約25年前、周りの先輩たちや同僚の中で産休・育休制度を利用して仕事に復帰するパティシエール(女性)や、育休を取得するパティシエ(男性)に会ったことはありませんでした。しかし今ではそんな業界も少しずつ変わってきています。スタッフに安心して働いてもらうために、制度について正しい知識を身に着けてはいかがでしょうか。

産休・育休

産休・育休の違いは?

「産休は正確に言うと、『産前産後休業』というもので、子どもを産む女性の母体を守るために労働基準法で認められている制度で、女性しか取得できません。一方育休は『育児休業』というもので、子どもが満1歳(保育所に入所できない等一定の場合は最長満2歳)の誕生日を迎える前日まで認められている制度で、女性だけではなく男性も取得できます。近年、男性の育児参加促進を期待するために新設された制度もありますよ」

産休・育休中の従業員への給料は雇用主が負担するの?

「産休・育休中の従業員へは、雇用主側から給料が支払われないことがほとんどです。法律では労働者の権利として産休・育休について定められているものの、その期間内の給料の支払いについての規定はありません。産休・育休中の従業員は、国から(健康保険や雇用保険)給料の50~70%ほどに相当する手当金や給付金を受け取ることができます」

スタッフが国から給付金を受け取るために、会社側のサポートは必要なのでしょうか?

「給付金の申請には会社側が手続きをしないとけないものがあります。というのも、これらの給付額は対象者が就業時にもらっていた給料に対して算出されるからです。事業主が必要な情報を記入して支給の申請をすることで、雇用保険を財源としている育児休業給付金が支払われます。また、社会保険(健康保険)や国民健康保険に加入している人が出産した際に支払われる出産育児一時金も、受け取るためには本人、病院はもちろん、会社からの申請が必要です」

個人事業主と法人で申請できる給付金制度は同じ?

「ここまで出産に伴い申請できる制度について触れてきましたが、それらは雇用保険や社会保険(健康保険)が給付金の財源です。法人の運営では雇用保険と社会保険の加入は必須ですが、従業員が4人以下の個人事業主に対しては、社会保険の加入は任意となっています。個人事業主の方でも社会保険に入っていれば法人と同じものを申請できます」

そもそも、産休・育休って取ってもらわないといけないのですか?

「産休は出産のための休業制度で、労働者の権利として法律で定められているものです。出産する本人が希望すれば、事業所に規定がなくても本人を就業させてはならないと労働基準法で定められていて、雇用形態(正社員・パート)や勤続年数に関係なく取得することができます。その一方で、育休に対しては取得に対していくつかの条件(その会社で1年以上働いていることや育休後にその会社に復帰すること、勤務が週2日以下でないことなど)がありますが、条件を満たしている希望者の申し出を拒むことはできないと育児・介護休業法によって定められています」

『はた楽』さんが提供するサービスとは

ここまでスタッフのみなさんに安心して働いてもらうための産休・育休制度について教えてもらいました。とはいえ、国の制度変更にしっかりついていきながらスタッフがきちんと給付金を受け取れるようにサポートするのは大変だなと思った方も多いのではないでしょうか。そんな事業主の方をサポートしてくれるのが『はた楽』のサービス。年間契約不要でその都度の依頼で手続きを代行してくれるというのが嬉しいです。

はた楽

『はた楽』さんが産休・育休関連で代行してくれるサービスは主に2つです。1つ目は、産休・育休に伴う給付金をご本人がもらうために、会社がすべき手続きを代行してくれるもの。その際、会社が加入している保険の種類などもヒアリングされるので、どの給付金がスタッフの方に適用されるかがわかります。2つ目は、会社側がもらえる助成金を得るためのサポートサービスです。国からもらえるこの助成金については相談に来られるほとんどの経営者が知らないんだとか。

会社が受給できる助成金って一体どんなもの?

「10年以上前から設けられた制度で、国の目的は、産休・育休制度を利用する人が増えること。そのためには積極的な会社のサポートが不可欠です。労働者の仕事と家庭の両立を支援するための取り組みを行う中小企業のために設けられたのが『両立支援等助成金』というものです」

対象になる中小企業って具体的に言うとどんな会社ですか。

「業種によって細かく分かれているのですが、小売業では従業員が50人以下で資本金が5000万円以下の会社さんです。雇用保険に加入されていることが条件になります」

簡単に助成金を受け取ることができるのでしょうか。

「受給条件は細かく分類されています。1つずつ条件を満たせるかを確認して申請すれば、受け取りやすいものもありますよ。例えば、従業員の方が出産後に3か月以上の育休を取ることで申請できる助成金や、復職後に休業前の職務に6カ月以上勤務することで申請できる助成金などがあります。また、新たに代替要員を採用し、かつ育休をとった従業員が復職し、3か月以上勤務することで申請できる助成金もよく利用されています。その他にも国の支援は広がってきているので、気になる方は是非一度ご相談ください」

取材を終えて

働きやすい職場とは、『人間関係が良好でなおかつ安心して働ける環境』であること。
『はた楽さん』の産休育休手続きサポートを利用する事業主さんの多くは、『産休・育休を取られる従業員の人に、うちに戻ってきて欲しいから導入する』と言われるそうです。

“職人さんたちは、お菓子やパンに向き合い、技術を積み重ねる日々を過ごして自身の価値を高め、代替要員を採用するのにお金がかかるオーナーさんは国の助成金をうまく活用する”

こんな循環が生まれれば、人材不足に悩まされる業界の悩みを軽減できるのかもしれません。なぜなら産休・育休制度について知識を高めて備えておくことが、従業員にとっての安心に繋がると、筆者は強く感じたからです。女性職人が出産後も、希望すれば職人として働き続けることができる環境を模索されることで、従業員の定着率が上がり、働きたいと思う人も増えることに繋がる気がしてなりません。

【取材協力】

はた楽社会保険労務士法人はた楽
住所:大阪市中央区北浜1-3-14リバーポイント北浜9F
アクセス:地下鉄堺筋線「北浜駅」から徒歩3分
営業時間:9:30~17:30
定休日:土曜・日曜・祝日
対応エリア:全国
公式ホームページ:https://hata-raku.net/

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Writer
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
製菓業界に足を踏み入れて早20数年。読者目線の企画運営が目標です! 食べることと旅行が大好きな1児の母。サンマルク、カイザーゼンメルが大好きです♡
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