皆さんもご存じの通り、パン好きを自認する人たちの間で“ベーグル熱” が高まっています。SNSを見れば、ベーグルの専門アカウントが次々に現れ、週末にはベーグルを求めて買い歩く人も少なくありません。その一方で、全国のパン屋を対象にしたアンケートでは約65% の店舗が「ベーグルは販売していない」と回答。

その多くが「作るのに手間がかかる」、「オペが崩れる」、「うまくいかなかった経験がある」など、流行や需要の問題ではなく、“ 現場の都合” の話でした。しかし、実際に販売している店舗(全体の35%)に聞いてみると、約9割が「そこそこ以上に売れている」と実感しているのです。

目次
「ベーグル、難しそう!」ハードルを上げていたのは、○○!
「ベーグルは売れる」そう感じているパン職人は、実は少なくありません。それでも「うちはやっていない」と答えた人が、約65%。その理由を深掘りしてみると、“ 現場感” のある、リアルなハードルが見えてきました。


ベーグルは売れる。でも、お店が回らない
全国のベーグルを販売していないパン屋さんに行ったアンケートでは、「ベーグルを販売してみたいと思ったことがある」人が、実に42%。半数に上るほどにもかかわらず、実際に店頭に並んでいないのはなぜなのでしょうか。その理由を紐解いてみると、大きな壁はオペレーションの難しさにありました。「手間がかかる」「湯煎が面倒」「仕込みの流れに合わない」「ビジュアルにこだわると時間がかかる」「味に自信が持てない」など、どれも売れないことが理由ではなく、現場で作れる自信がないという課題が多く見られました。
実際、販売している店舗の多くは92%が「ある程度売れている」と感じており、「売れなかった」と答えたのはごくわずか。商品力や需要ではなく、“仕込みに組み込めるかどうか”こそが、ベーグル導入の分かれ道だと見えてきます。
しかし裏を返せば、その壁さえ越えられれば、やってみたい人は確実に存在しているということ。今回の特集では、そのハードルを一つずつほどきながら、パン屋だからこそ作れるベーグルとは何かを考えていきます。
店舗で“ヒット商品”を生み出す秘訣
お客様に愛されるベーグル戦略とは?
ベーグルは「こうあるべき!」と考えるほど、売れなくなることもあります。大切なのは、お店のオリジナリティを出すこと。今回は店舗の事例から、お客様に愛される商品づくりのヒントを探ります。実はSNSでも注目度が高いベーグル。まずは地域のお客様に“ お店ならでは” の味を届けるところから、始めてみませんか?
例1) 栃木県のパン屋さん
本場に近いベーグルを目指して販売を開始。しかし土地柄、高齢のお客様も多く、なかなか受け入れられず販売を断念しました。
そこで開発したのが、柔らかく食べやすいオリジナルベーグル「ペーグル」。名前もあえてベーグルと分けることで「うちだけの商品」として訴求しています。
「ただベーグルと同じ形ではつまらないと感じて、手に取ってもらいやすい形にしたい」という思いから、花を模した可愛い見た目にアレンジ。製法はケトリングをせず、よりしっとりした食感を追求しました。現在は「塩バター」「さつまいも」「塩バターキャラメル」の3種類を展開。ベーグルは苦手でも「ペーグルは好き!」というファンを増やすことに成功しています。
例2)山梨県のパン屋さん
当初、アレルギーを持つ子どもでも安心して食べられるベーグルを作ることからスタート。「離乳食が終わった子どもも食べられるベーグル」として多くの親子に支持されています。
現在は、生ハムを挟んだベーグルサンドや、自宅で育てたブルーベリーを使った夏季限定ベーグルが看板商品。自家製ジャムや採れたてブルーベリーも販売し、“ここでしか味わえない” 魅力を打ち出しています。
製法はケトリングを行わず、焼成時にスチームを多めにかけてボリュームを出すという製法。さらに生地は前日成形後に冷凍し、ドウコンで一晩寝かせることで、安定した仕上がりを実現しています。
また、パンにオリジナル焼き印を入れ、高級感を演出。工夫を重ね、リピーターを着実に増やしています。
\注目されてるからこそやってみる価値あり!/

①独自性を出しやすい
形・食感・ネーミングなど、お店ごとの“らしさ”を活かした差別化がしやすい。同じベーグルでも、お店独自のオリジナリティを出せる。
②製法の工夫でオペ負担を減らせる
今回紹介する2店舗は、どちらもケトリングを省略。オーブンのスチームで仕上げるなど、既存設備で対応可能なので導入しやすい。
③“ここでしか買えない”魅力をつくりやすい
季節商品や限定ネーミングとの相性が抜群。SNS映えも狙いやすく、ギフト需要にもつなげやすい。
パンライターたちと考える「パン屋のベーグル」

べイクポートアプリの人気コンテンツ、パンライター記事。全国のパンを食べ歩き、SNSでリアルな声を届けるパンライターたち。今回はその中から4名に集まっていただき“ 消費者代表” の目線で、ベーグルについて語ってもらいました。
ベーグルは好き?消費者のリアルな関心度
消費者はベーグルが好き?実際にパンライターの4人に聞いたところベーグルの投稿はやはり消費者からの関心が高く反応も良いそう。ベーグル人気は間違いなく高まっているようです。
トークテーマ1
パン屋でベーグルって売れるの?
「生地のおいしさを感じたい」
本格派のベーグルファンは「ぎゅぎゅっと詰まった独特の食感こそが魅力」と語ります。だからこそ専門店で買いたい、という声もありました。一方で「パン屋さんのベーグルはパン寄りでふかふかして食べやすい」という評価もあり、「子どもや一般層にはむしろ好まれるのでは」という意見も。
「いくらサンドやフィリングがおいしくても、生地がおいしくないと意味がない」
この声に象徴されるように、生地そのものの美味しさを打ち出せば、パン屋ならではの強みになることが見えてきました。
トークテーマ2
サンドか、練りこみか?
「冷凍できる練りこみが嬉しい」
SNS映えするのは具材たっぷりのサンド。しかし実際の購入シーンでは「練りこみ派」が多いことがわかりました。
「サンドは当日しか食べられない。でも練りこみなら冷凍できて、まとめ買いする」
「生地の美味しさを堪能したいから、シンプルな練りこみが好き」
編集部補足:冷凍対応=ストック需要を取り込むチャンス。練りこみベーグルは製造効率とも相性がよく、パン屋にとって導入しやすいスタイルです。
トークテーマ3
消費者が求めているのは?
「お惣菜ベーグル欲しいかも!」
「専門店は甘い系が多い。だからパン屋さんにはお惣菜ベーグルを期待したい」座談会ではそんな声が相次ぎました。たとえば、パン屋ならではの自家製フィリングや惣菜具材を挟んだベーグル。また「そのお店でしか買えない限定品」があると、消費者は思わず手に取りたくなるそうです。
編集部補足:惣菜パンのノウハウを活かせるのは、まさにパン屋の強み。甘い系とは違う切り口で“ ここでしか買えない” ベーグルを仕掛けられます。
トークテーマ4
どう伝える?どう売る?
「POPでこだわりを見せてほしい」
「粉やフィリングがどこのものか書いてあると、つい買いたくなる」「もちもち/ ふかふか といった食感が伝わるPOP があると選びやすい」座談会では、消費者が商品情報をもっと知りたいと考えていることが明らかになりました。ところが実際、POPや発信が弱く「名前と値段だけ」というケースも少なくありません。
編集部補足:こだわりをひと言でも見せれば差別化の武器に。POP やSNSでの発信は、味と同じくらい購買動機につながるのです。
chefno編集部