こんにちは。
今回は、前回の続きとして、昨年10月にベルギー代表として出場したパンの世界大会「モンディアル・デュ・パン」本番の様子をお届けします。
特に、ベルギーチームの競技中の様子や、印象に残ったシーンを中心にお話しします。
夢の舞台「モンディアル・デュ・パン」開幕!
今回の「モンディアル・デュ・パン」には、当初21カ国がエントリーしていましたが、ビザの問題などの事情により、最終的な参加国は17カ国となりました。それでも、第10回目という記念すべき大会であったことから、例年より多くの国が集まりました。
大会は4日間にわたって実施され、17カ国は3つのグループに分けられました。各グループの競技は2日間にわたり、競技時間は1日目が2時間30分、2日目が8時間30分と、非常に長時間に及ぶものです。
1日目の最初に「Respectus Panis(レスペクチュス・パニス)」と呼ばれる手ごねパンのデモンストレーションを実施します。これは観客の前で生地を手でこねる様子を披露するもので、こねる役はコミ(助手)が担当し、最低でも5分以上手ごねを続けなければならないというルールがあります。私たちコミにとって、この最初の5分は想像以上に体力を消耗する工程であり、その後に続く約2時間25分の作業を思うと、なかなかの試練でもあります。

▲手ごねで生地づくりを行う私
私たちベルギーチームの出場初日は2日目だったので、大会初日は、他国チームの競技を見学しつつ、流れを確認しました。
競技本番、想定外のハプニングも…
そしてついにベルギーチームの競技日がやってきました。
前日には最終確認を行い、万全の準備で臨んだつもりでしたが、本番では思わぬトラブルが発生。どんなに練習しても、計画通りにはいかないものだなと実感しました。それでもなんとか競技を終え、夜はチーム3人で夕食をとりながら翌日に向けた改善策を話し合い、気持ちを切り替えて1日目を終えました。
その夜は頭の中で作業の流れや修正点を考え続けてしまい、なかなか眠りにつけませんでしたが、これまでもコンクールの前日に眠れないことはよくあったので、特に焦りなどはありませんでした。翌朝シェフやコーチに尋ねると、2人も同じ状況だったようです。
2日目の競技開始は早朝5時。私たちは4時に起床し、緊張するなか本番会場へと向かいました。
序盤から作業が順調に進み、練習の成果が出せたと思いました。ところが最後に、飾りパンの組み立てに取りかかった際、パーツが完全に乾燥しきっていないことに気がつき、焦りつつも時間配分を考え、そのまま組み立てを進めました。しかし、それが裏目に出てしまい、時間内には完成したものの、競技終了後30分ほどで崩れてしまいました。競技終了後、作品は2時間以上状態をキープさせることがルールで求められているので、そこをクリアできず悔しい気持ちでいっぱいでした。

▲声を掛け合いながら、チームで飾りパンを組み立てている様子
一方で、ほかのパンやヴィエノワズリーは自分の納得のいく仕上がりとなり、その点については大きな手応えを感じていました。また、種目のひとつ「当日のくじ引きで6種類の中から選ばれるブリオッシュ」では、私が得意としていたクグロフがあたったので少し自信もありました。ただ、飾りパンが崩れてしまったことで、全体の評価がどうなるのかが不安なまま翌日を迎えました。

▲私の自信作 クグロフ

▲Pain du jardin(パンデゥジャルダン)。「お庭のパン」という意味で、セロリ、パセリ、ビーツとじゃがいも使った野菜のパン。
審査当日、審査員の方々が私たちのチームの評価について協議した結果、条件付きで全体の採点していただけることになりました。飾りパンが崩壊したため、80点満点中4点は必ず減点されるというルールが適用されることへの悔しさは残りましたが、それでも評価の対象として扱っていただけたことにホッとしました。
最終日に出場した7チームの競技も見学し、技術やペース配分など、学べる点はすべて吸収しようと目に焼きつけました。
全チームの競技が終わり、表彰式が始まるまでは会場全体に緊張感が漂っていましたがその一方で、他国の選手たちと交流できる時間でもあり、緊張の中にも楽しさがありました。日本チームとも交流ができ、とても嬉しかったです。
結果発表、大会を終えて
表彰式の時間になると、出場した全チームがステージ横に整列し、ついに結果発表の瞬間が訪れました。
上位6チームが次の大会「Best of」(ベストオフ)に進出できるため、結果は6位から順に発表されます。
結果を先にお伝えすると、惜しくも6位以内に入れず、最終順位は7位。あと一歩届かなかった悔しさが残る結果となりました。
上位6チームは、1位から順にオランダ、中国、フランス、マレーシア、台湾、スペインでした。

飾りパンが倒れていなかったら…と思うと悔しさが込み上げ、泣いてしまいました。
翌日、6時間以上かけてベルギーに戻り、大会で使用した道具類を学校へ戻しに行った際、最後に行った練習で制作した飾りパンがまだしっかりと立っているのを見つけ、思わず3人で笑ってしまいました。シェフの「こっちが立っていても意味ないんだよー」の一言に全員で大笑い。

▲コンクールから1ヶ月以上経った今も、その飾りパンは崩れずに立ち続けています…
今回のモンディアル・デュ・パンは、結果こそ悔しさの残るものでしたが、世界の舞台で戦えたこと、自分たちのパンが評価されたこと、そして何より多くの仲間と出会えた経験は大きな財産になりました。 教師として学校の授業に出ながら空き時間を練習に割いてくださったシェフとコーチ、はるばるナントまで応援に来てくれた家族や学校の仲間、応援してくださった全ての方々に感謝の気持ちいっぱいです。
ベーカリーパートナー編集部