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2022.06.07
働く従業員を全力でサポート。スペシャルティコーヒー専門店「LANDMADE」の独立支援の考え方

動画コンテンツ「“アルチザン”職人という生き方」で以前ご紹介した、兵庫県神戸市にあるスペシャルティコーヒー専門店「LANDMADE(ランドメイド)」。

動画はこちらから☞https://chefno.com/movie/artisan02/

2016年にお店をオープンされ、店内にはオーナー・焙煎士である上野さんの厳しい目利きで選定されたコーヒー豆が並びます。専門店という響きに敷居の高さは全くありません。お店の雰囲気は非常にオープンで入店しやすく、何と大人だけでなく子供たちもよくコーヒーを買いに来るそうです。 そして、お店のスタッフに目を向けると、働く従業員は上野さん以外全て女性スタッフです。そこには女性の働きやすさを追求したお店の運営方法がありました。

 

バリスタの抱える多くの課題に直面した修行時代

修行時代2年間バリスタとして勤務した経験のある上野さん。お洒落でスマートなイメージの強いバリスタという職業ですが、修行先で多くの課題を抱えている現実を目の当たりにします。

上野さん


今以上に当時もバリスタの知名度は低く、非正規雇用、低収入、サービス残業は当たり前。数少ない休日に自費で高価な豆と牛乳を買ってラテアートを練習する、そんな生活をするバリスタが大半でした。

同僚には女性のバリスタも多く、皆さん優秀な方でした。しかし結婚・妊娠・出産などライフステージの移り変わりが激しい女性にとってバリスタを続けることは難しく、辞めていく同僚が多くいましたね。とても残念に感じていました。

 

『女性バリスタが長く活躍できる職場』を作りたい

上野さん

うちはお客様ではなく、働く人を最優先にした”従業員ファースト”のお店です。営業時間は従業員のライフスタイルに合わせています。今は従業員全員が子育て中のお母さん。ですので、営業時間は11~17時、日曜日・祝日はお休みにしています。お子さんの事情で急遽お店を閉めないといけないこともありますが、それももちろんOK。家族の事情が最優先です。それがお店の良い雰囲気づくりにつながり、結果お客さまにも満足していただけるお店作りへ繋がっていると感じています。

現在はコーヒー豆の業務用卸および店舗での小売りを行っているLANDMADE。「女性バリスタに活躍の場を」という想いが強いLANDMADEですが、コーヒー豆の販売と従業員をサポートするのにどんな関係性があるのでしょうか。

上野さん

僕の本来の目標はもちろんカフェを開くことです。ただ、カフェだけで収益を上げようとすると、立地や拘束時間など制限が多い。そこで業務用卸をメインにした物販(豆の卸販売)で収益を生み出せる基盤を確立させてから、収益に頼らない営業時間の短いカフェをオープンしたいと考えています。そうすることで女性スタッフは、独身時代はカフェで長時間の勤務、妊娠・子育て期間中は物販で短時間の勤務など、それぞれのライフステージに合わせて働き方を柔軟に選択できる職場にしたいなと考えています。

女性バリスタ活躍の場=カフェとはいえ、カフェ単業での課題解決は難しい。そこで、コーヒー豆販売という収益基盤を安定させた後にカフェのオープンを見据える上野さん。従業員の生活や女性バリスタの活躍を支えたいという強い想いが感じられます。

▲販売や焙煎を行う女性スタッフ

 

『僕は従業員の独立を全力で応援します』

“従業員ファースト”をモットーに独自の発展を遂げるLANDMEDE。そのノウハウを習得し、独立を夢見る従業員も多い。お店では、独立準備と業務を両立できるよう全力サポートしているといいます。
LANDMADEでは、スキルアップだけでなく、独立資金を貯められるよう独自のシステムも取り入れている。

上野さん

業務時間内に、自分の技術向上の為なら何をしてもいい時間を1時間設けています。1日1歩でも独立に向けたスキルアップをして欲しい。コーヒーに関する技術や知識はもちろん、開業資金の借り方など自分がたくさん失敗しながら蓄積してきたノウハウは、独立希望のスタッフに惜しみなく伝えます。僕は従業員の独立を全力で応援します。
また、独立資金を貯蓄できるよう、スタッフがお客様に直接商品を販売できる仕組みを作っています。スタッフ自身がLANDMADEの商品を購入して知り合いに販売。利益はそのままスタッフに還元するというシステムを考えました。
この取り組み、はすべて業務時間内に行ってもらっています。収入を増やすために勤務時間を増やすのではなく、業務時間内で副業として行えるよう工夫しています。僕としても、自社農園からたくさん仕入れている豆の流通先の確保につながりますし、お店を知ってもらえる機会が増え、win-winな取り組みになっているなと感じています。理想は独立までに自分のお客様を獲得するまでに成長してほしいですね。

▲現在カフェ開業に向けて勉強しているという女性スタッフ。この日は、カッピング(コーヒーの品質の善し悪しを、同じ条件下において判断する作業)の勉強をされていました

 

女性の活躍・独立支援、「利益」ではなく「人」に全力なワケ


利益を度外視した従業員・生産者への想いがとても強い上野さん。そのルーツを伺うと幼少期の家庭環境が大きく影響しているようでした。

上野さん

私は、幼い頃に家庭環境で非常に苦労してきました。私の両親は小さな酒屋を経営していたのですが、売り上げが芳しくなく、父はその影響もあってか、お酒を毎晩飲んでいました。酒癖が悪く、時には酔っぱらって母親を殴ることもしばしば...。結局経営状態が悪くなり、私が高校一年の時に父親は蒸発し、その後は多額の借金のみが家に残ってしまったんです。幾度となく惨めな思いをしてきたなかで、自分の周りの人にはそういう思いをして欲しくないと考えるようになりました。
バリスタという職業で、社会全体の平均くらいの収入が十分得られるとスタッフとそのご家族の問題を軽減できるかもしれない。更には自分の取り組みで、コーヒー豆の生産者の方々の抱える問題も解決したいという想いがあります。

 

取材を終えて

「利益を度外視した」「従業員が働きやすい」こういったワードを目にすると、「激務が当たり前の業界でそんな上手くいくはずがない」「きっと何処かにひずみが生じてしまうはず」と考える方も多いのではないでしょうか。筆者も同じでした。
LANDMADEについて特筆すべきは、お店と従業員両方にメリットがあるよう考え抜かれた環境であること。” 従業員ファースト” とは、お店は従業員の為に、従業員はお店の為に、そういったポジティブな行動の連鎖を意味していると感じました。そしてその連鎖はお客様も巻き込み、決して置き去りにすることが無い。
製菓・製パン業界もその長い歴史の中で長時間労働が当たり前とされてきました。もちろんその中で技術が鍛錬され、素晴らしい歴史が生まれた事に間違いはありませんが、より多くの職人にチャンスが与えられるLANDMADEの良き連鎖は取り入れるべき新しいスタイルだと感じました。

 

●About Shop
LANDMADE(ランドメイド )
兵庫県神戸市中央区港島中町3丁目1-2-14
電話:078-954-5077
営業時間:11:00-17:00
定休日:日曜・祝日・月曜
公式Instagram:公式アカウントはこちらから

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Writer
chefno編集部
ディレクター兼ライター M
chefno編集部
ディレクター兼ライター M
輸入商社の営業部で働きながら、編集部ディレクター・ライター修行中。一歩踏み込んだ情報発信が目標です。バタークリームと杏ジャムがあればご機嫌な甘いもの好き。
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