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2023.08.29

人気のパン屋が実践する集客・ブランディング術とは!?横浜市青葉区「丘の上のパン屋」さんに聞いてみました

丘の上のパン屋外観
丘の上のパン屋 オーナーシェフ 黒沼 敦詞さん
丘の上のパン屋 オーナーシェフ
黒沼 敦詞さん
神奈川県・鷺沼にある『ビゴの店 鷺沼店』でパン職人としての経験を積み、池袋の『RACINES Boulangerie & Bistro(ラシーヌ ブーランジェリー&ビストロ)』でシェフブーランジェを務めた後、2018年4月に独立。地元である横浜市青葉区に『丘の上のパン屋』をオープン。
運営サイトはこちら

こんにちは、chefno編集部です。

今回は、事前集客とブランディングの重要性について、横浜市青葉区にある人気店「丘の上のパン屋」のオーナー黒沼 敦詞(くろぬま あつし)シェフにお話しを伺います。

都会にいることを忘れる自然豊かなロケーション

「丘の上のパン屋」は、東急田園都市線・たまプラーザ駅からバスで15分ほどの場所にあります。坂の上をあがった住宅街の一角という立地にもかかわらず、土日祝日関係なく美味しいパンを求めて来店客が絶えない人気店です。

丘の上に佇むというロケーションの心地良さ、ジブリの世界に入り込んだようなお店づくり、そして素材にこだわったパンの数々と、ワクワク感がとまりません。

丘の上のパン屋店内

▲木を使った陳列棚が温もりを感じさせる店内

来店客を虜にするブランディングは非常に重要なことで、商品やサービスに対して共感を持ってもらえれば、お店の価値や優位性を高めることにつながります。そのためにはどのように集客して、お店にいかに足を運んでいただくかがポイントになります。

この記事では、黒沼シェフが実践されてきた集客・ブランディングのなかから、とくに参考にして欲しい3つに絞ってご紹介していきます。

パン屋を開業する前に参考にしたい事前集客3ステップ

丘の上のパン屋看板
1.マーケティング思考を持って集客を考える

黒沼シェフは、開業前からどうやって自分の店の集客をするか、常に考えられていたそうです。その思考をもったきっかけは、修行先のオーナーに言われたある言葉があったからだと言います。

黒沼シェフ
「私は、開業するまでは池袋にあるラシーヌで働いていたのですが、その店のオーナーにマーケティングの重要性を叩き込まれました。そのオーナーからは『美味しいパンを作るのは当たり前で、それをいかに売っていくかが重要。作るだけでは意味がなく、最終的にどう商売にしていくかを意識すること』と常に言われていました。おそらくその経験から、開業する前の集客やブランディングが重要であることを意識できたのだと思っています」

パン作り以上に、どのように集客やブランディングをするべきかを考えられていたという黒沼シェフ。お世辞にもアクセスが良いとは言えない立地での開業でしたが、しっかりとしたマーケティング戦略があったことで、集客にはまったく不安は感じなかったそうです。

では、実際にどのような方法で開業前から集客をされていたのでしょうか。

丘の上のパン屋外観

▲店の周りは芝生が綺麗に整備され、自然豊かなロケーションでイートインも可能

2.開業をすると決めた時点で集客をスタート

黒沼シェフ
「多くの人が開業前はいろいろな準備に追われて、お店を開業した後にようやく集客をはじめるケースが多いように思います。このタイミングで始めるのではじつは遅いんです。たった一回しかないオープンの日。オープン後1週間くらいはいわば“お祭り”要素があるタイミングです。いかにお客さんを集客し、新店がオープンされたことが情報として拡散されれば、スタートダッシュを切ることができます」

先ほどの事例で記載した通り、黒沼シェフは開業前から集客を始めていました。その一例が「情報配信」です。丘の上のパン屋さんの公式ブログとSNSがスタートしたのが、2017年7月頃。開業の約9か月前から情報配信が開始されていたんです。配信されていた内容は、お店の建設過程や販売する商品の試作風景、陳列方法に悩んでいることなどなど。そして、オープンまではカウントダウン投稿もされていました。

黒沼シェフ
「開業当初からブログとSNSの運用はしたいと思っていて、日々の更新を欠かさずおこないたいと思っていました。場所がわかりにくい分、いかにお店に気付いて来店してもらうか、そして定期的に来店してもらうきっかけにはやはりお店からの情報発信が重要ですよね」

丘の上のパン屋エッグタルト

▲開業前の2017年8月に投稿された丘の上のパン屋さんの人気商品のひとつエッグタルト。この時点で、すでに人気商品は産声をあげていました

このように早い段階から情報を配信することで、ワクワク感やお店の想い、どんな商品が並ぶのかがわかります。しかもウェブ上で配信をすることで、地元以外の方(他府県の方)へ事前PRでき、結果的に集客につながります。この日々の活動の成果が、現在の人気店たる所以です。

そして筆者が気になっていたのが、ブログやSNSの更新頻度が多いこと。黒沼シェフはパンの製造をほぼひとりでおこなっています。そんな忙しさのなか、どうやってこまめに更新をされているのでしょう。

黒沼シェフ
「私の知り合いにウェブに強い人がいるので、その方に運用や更新をお願いしています。自分ではなかなかウェブのことはわからない部分がありますので、やはりメカニズムがわかっているプロにお願いするのが確実だと思っています。あとは、コンスタントに配信することを考えると、自分達では更新できない時もあるので、うまく外部の方にお願いすることで効率よく配信できています」

どうしてもコスト面を考えると、自分たちですべてしようと思ってしまいがちですが、餅は餅屋、専門外(ウェブやSNS運用)のことに時間を掛けすぎず、外部の方と連携することで、配信する情報のクオリティを落とすことなく、定期的な配信が実現できていたんですね。

3.リピーターをつくるためのブランディング

ある程度お客さんが来てくれるようになれば 、次に考えたいのがリピート。集客に力を入れられている黒沼シェフが、リピーターを作るためにどのようなことをされているのでしょう。

黒沼シェフ
「パンはもちろんですが、『来て・見て・食べて楽しい」』と思っていただける空間づくりにも力を入れましたね。自然豊かなロケーション、お店に入るとジブリの世界に入り込んだかのような空間づくり。パン屋ですが、また来たいと思う体験がこの店にはあると思っていただけるようにしています」

丘の上のパン屋看板

▲木で造られた看板が可愛い。入口からアニメの世界に入り込んだよう

たしかに、何度も来店したくなるこのお店の雰囲気は、どこかテーマパークに来たかのような錯覚をしてしまいます。お店の雰囲気作りに続いて、主役であるパンでもリピートさせるポイントはあるのか聞いてみました。

黒沼シェフ
「旬を取り入れた季節限定の商品があることですね。地元の農家さんと連携して、旬の素材を定期的にもってきてもらっています。旬と言っても、栽培・収穫状況などで素材も変わり、季節定番商品はありますが、納品された野菜や果物次第でラインナップが変わることもあります。毎回同じラインナップではなく、今はどのような商品があるのかなと楽しみに感じてもらうことで、次の来店にもつながると思いますね」

丘の上のパン屋のフルーツデニッシュ

▲季節のフルーツを使ったフルーツタルト。缶詰のフルーツを使用せず地元のフレッシュな素材を使うのが、シェフのこだわり

取材を終えて

丘の上のパン屋さんでは、事前集客→ブランディング→ファンの育成(リピーター)というマーケティングの基本ともいえる活動をしっかりと実践されていました。開業前でバタバタしている時や日々の仕事に追われていると、この基本ともいえる活動に気付かなかったり、ついつい後回しにしてしまったりするかもしれません。今後、独立開業をしてお店を持ちたいと思う方は、パンの製造や準備はもちろん大事ですが、それと同じぐらい集客やブランディングに関しても意識して欲しいです。マーケティングの思考を持って、開業を考えれば人気店への近道が見つけられるかもしれません。

 

●取材協力
丘の上のパン屋
住所:神奈川県横浜市青葉区美しが丘西3-8-8
電話:045-530-9683
営業時間: 9:00~17:00
定休日:月曜日、火曜日
公式サイト:こちらから
公式インスタグラム:こちらから

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Writer
chefno編集部
プロモーション担当兼エディター リョウ
chefno編集部
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WEB業界に10年以上従事して、現在はchefno編集部のプロモーション担当をつとめる。コーヒーが大好き!コーヒーに合うパンとお菓子を編集作業の合間に食べるのが楽しみ。車があればどこにでも取材に行きます!
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