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2023.04.05

SNSで発信し続けて約2年!デザートプレートメッセージが生み出してきた数々の笑顔-リストランテ プレーゴ 店長兼ソムリエール 藤田紗綾香-

リストランテプレーゴ ソムリエール藤田さん
リストランテプレーゴ 店長兼ソムリエール
藤田 紗綾香さん
宮内省御用達の店として明治期に名声を誇ったブラックカレーでおなじみの東洋軒が運営するイタリアンレストラン「プレーゴ・ドゥーエ」(現:リストランテ プレーゴ)。そのサービスオープニングスタッフとして学生アルバイトで入社後、正社員に。現在は店長とソムリエールを兼任。
運営サイトはこちら

皆さんのなかには、誕生日や家族の記念日をレストランで過ごされる方も多いのではないでしょうか。
今回取材させていただいたのは、三重県津市にあるイタリアンレストラン “リストランテプレーゴ” の店長兼ソムリエールの藤田紗綾香さん。レストランでのひとときがより素晴らしい時間になるように、思いを込めた接客をされています。実は藤田店長、接客・ソムリエのお仕事に加え、お店で出されているデザートプレートメッセージをご自身で描き続けているんです。独学で身に着けたデザートプレートメッセージの作成過程を2021 年5 月よりインスタグラムで発信を続け、今やフォロワー数6.5 万人!(2023 年3 月末現在)
パティシエの皆さんも、季節のイベントや人生の節目のお祝い事を彩るアイテムとして、ホールケーキによくチョコレートプレートメッセージ添えられますが、文字だけではなく装飾を施されている方も多いのではないでしょうか?現在メッセージを描かれている方には今後の文字の書体の参考に、これからやってみたいと思われている方(販売員の方も歓迎です♡)には挑戦の後押しになるように、描き始めたきっかけや制作時に意識されている事などをお伺いしました。

記念日に添えるメッセージサービスが、今では新規来店のきっかけにも

藤田さんがデザートプレートメッセージを‟やってみよう”と思ったきっかけや、‟続けていきたい“と感じたエピソード、日々どのように本業のソムリエのお仕事とのバランスを取っておられるのかなど、詳しくお話を聞いてきました。

デザートプレートメッセージをご自身で描き始めたきっかけは?

「以前からコース料理のデザートのお皿に‟Happy Birthday”のメッセージを描くようなサービスは行っていたんです。当時はご要望があると、料理長が男らしい字体でお皿にメッセージを書いていたのですが、『もうちょっと可愛くならないかなぁ』と思ったのがきっかけです。私自身、元々絵を描くのが大好きで、デザインカプチーノを制作して提供していたので、プレートの文字の横に『少し花を描くぐらいならできるかな?』と思い、そこで初めてプレートに絵柄を描いてみました。花が描かれたデザートプレートを見たお客様が、自分の想像以上に喜ばれていたのを今でもよく覚えています。当時はデザートプレートに細かい仕上げをされているお店は少なく、『こんなに喜んでいただけるなら続けたいな』という思いが芽生えたんです」

デザインカプチーノ

▲藤田さんが描かれたデザインカプチーノ。現在のデザートメッセージプレートの原点

絵を描く事に自信がない人でもうまくなれると思いますか?

「『やってみたい』と思えたら、必ずできるようになると思います。上達のスピードに違いはあるかもしれませんが、まずは絵の上手い下手よりも自らの意思で挑戦するかどうかだと思いますよ。私自身も美術系の学校には行っていないですし、今はPinterest(ピンタレスト)*などで検索すればアイデアに繋がりそうな季節のイラストなども見つけやすいので、活用しています。フレーム画や、季節のパーツなどに加えて文字の様々なフォント例を保存して、いつでも見返せるようにストックしています」

※Pinterest(ピンタレスト):キーワード検索をすれば、ひらめきを与えてくれる画像や動画が見つかるデザイン探索型サービス。ジャンルごとに仕分け保存していく事で、好みが解析されて情報がどんどん入ってくる事が特徴。

スマートフォン

▲ピンタレストに文字のフォント例を保存し、隙間時間に次回作のアイデアを練ることも

すべてお一人で手掛けられているのですか?

「現在は私以外のサービススタッフや厨房スタッフにも少しずつ覚えてもらっています。有難いことにお客様が投稿してくださったSNSをきっかけに、記念日の来店予約をしてくださるというケースが増えてきているので、スタッフみんなで協力して提供させていただいています。前日までのご予約で、コース料理の最後のデザートプレートに追加料金(+550 円)を頂いてメッセージやイラストを追加させていただいているのですが、多い日は7~8 枚描くこともあるんですよ」

SNS での発信効果と、動画撮影について

約2年前の2021年5月から勤務されているレストラン『リストランテプレーゴ』のアカウントとは別に、メッセージプレート専用のインスタグラムアカウントを作って発信し始めた藤田さん。写真だけではなく、メッセージプレートの作製動画までもほぼ毎日更新されています。スタッフの方の協力があるとはいえ、動画を撮って編集までして投稿をするのはとても大変なことのように思えるのですが、それでも続けられているのはなぜなのでしょう。

リストランテプレーゴ 店長兼ソムリエール 藤田さん

約2年間SNSで発信を続けられて、現在の想いは?

「自分と同じようにプレートを描かれている方とSNSを通して繋がってみたいという当初の想いは今も変わりません。投稿した人に閲覧した人が気軽にメッセージを送りあえるのもSNSの醍醐味ですし、プレートメッセージに取り組まれている多くの方たちと繋がっている実感が今もあります。配信を続けてきたことで、ご予約の際に『デザートプレートメッセージのSNSを見た』と言ってくださる方も確実に増えてきています。当初の想いに加えて、フォローしてくださる方が増えた最近では『インスタで見ていたものと違ってがっかりだな』と思われないよう、『やっぱり頼んでよかった、誰かにも伝えたい』と思ってもらえるように更に気を引き締めていますね。特に意識しているのは、メッセージを贈られた主役の方の反応はもちろんですが、贈った方の反応にも注視しています。 贈った方の『ほら、凄いでしょ!』というような表情が見られた瞬間は、本当にホッとします」

動画の撮影や編集はどのようにされているのですか?

「基本的に動画の撮影はスマホスタンドを使って、自分1 人で行っています。動画の編集はインスタグラムのリールの編集機能を活用して、仕事の合間に作業をして投稿しています。‟投稿を毎日上げる” などのルールは決めていないのですが、あまり投稿日数の間隔が開き過ぎないようには注意しています。レストランのサービスの一環として始めた取り組みが、お客様に喜ばれて支持され続けていることが素直に嬉しいので、今のところ、無理なく続けられていますね」

撮影の7 つ道具、見せていただけますか?

「他のお店のプレートメッセージを意識したこともなく、自己流で続けていますので、これが正しいかどうかはわかりませんが、是非参考にしてください」

撮影キット

▲左からスマホスタンド、プレートを修正する際に使うティッシュ、コルネをカットするハサミ、コルネ を留めるセロテープ、OPP シートで作ったコルネ、色付けしたナパージュ、筆

スマホで上から撮影

▲外光を採り入れるために窓際で座って撮影することが多い

リストランテプレーゴ 藤田さんチョコプレート

▲メッセージを描く際に邪魔にならない位置にカメラを設置することも重要なポイント

 

藤田さんの実際のチョコプレート作成動画がこちら!


 

デザートメッセージプレート上達の近道、一問一答!

持ち合わせたセンスも絵の素養もない筆者だって、藤田さんが手がけるようなデザートプレートメッセージが描けるようになりたい!練習方法や藤田さんの愛用品をまとめて聞き出しました。

デザートプレートメッセージ

▲艶やかなチョコレートとカラフルで立体的な色付けが施されたデザートプレートメッセージ!

まず最初に、これだけはできなければならない事とは?

「ずばり、筆記体です!学校で筆記体の授業がなくなったいまでは、意外にも書けない人が多いんです。次の動きを考えながら書いているようではダメです。書けない方は紙の上でまず練習を!」

お皿1 枚当たりの作成時間はどれくらい?

「今では1枚あたり平均10分くらいで仕上がっていると思います。もちろん当初は今よりシンプルな図柄でも、もっと時間がかかっていましたよ」

下書きはするのですか?

「お皿に下書きはしていません。全部フリーハンドで描いています。初めての図柄で何かを参考にする時には一度紙に描いてみて、『チョコレートでお皿に描いたときはどんな印象になるか』を確認するようにしています」

チョコレートは何を使われているのですか?

「cottaさんの〝デコれーとペン(ソフトタイプ)”を自作のコルネに移し替えて使っています。寒い時期は描く前に手で温めたり、ディッシュウォーマーの中に入れたりして柔らかくしてから使います」

デコれーとペン

▲藤田さん愛用 cottaさんの〝デコれーとペン(ソフトタイプ)”

コルネ

チョコをコルネに詰め替えて使用

イラストの影の部分はどのようにして描かれているのですか?

「筆を使って、描いた線をぼかすようにしています」

色付けは何で行っているのですか?

「透明のナパージュ*に色付きのシロップ(モナン社製)や水溶性の色素(ウィルトン社製)を加えたものを色ごとに絞り袋に入れて保存しています」
※ナパージュ:お菓子の表面やフルーツの表面に塗って輝きを出したり、乾燥を防いだりするコーティング剤

色付けしたナパージュのグラデーションがとても綺麗ですね

「筆先ではなく柄の先端部分を使って、色の境目をなじませると自然な仕上がりになりますよ。(動画を参照して確認してみてください)」

効果的な練習法は?

「オススメは、実際のお皿と同じサイズの紙の上で描いて、文字とイラストのバランスをとることです。ある程度描けるようになるまでは、紙をお皿の横に置いてお手本として描くと良いと思います。自分が描いたものを写真などで残して後から客観的に確認できるようにすることも重要です。見比べることで、改善できた点がわかりやすいので、練習のモチベーションも上がりますよ。色々お伝えしましたが、最終的には無理なく楽しんでコツコツ練習を続けられる方法を選択することが一番だと思います。新しく挑戦されたいと思われる方にとっても、その方が本業に負荷がかからないと思いますので」

 

取材を終えて

SNS の閲覧をきっかけに取材を申し込んだ際、サービス担当の方がお皿にメッセージや可愛いイラストを描いていると知った筆者はとても驚きましたが、インタビューを終えて『今後はパティスリーでも製造スタッフだけではなく、販売スタッフの方もメッセージプレートを描くのが当たり前になっていくのではないか』と考えを一新しました。『もっとこんな風にできたらいいな』と感じることは仕事の中にはもちろん、日常の暮らしの中にあふれています。それに対して『やれるかも』、『変えてみよう』と、一歩踏み出すことは簡単ではありませんが、藤田さんは気負うことなく実現されています。取り組み続ける姿勢が周囲の協力を引き出し、身に着けた技術を外に発信していった結果、お客様からの高い指示を得ているのは、日々得たアイデアに自分のエッセンスを加えてデザートプレートに仕上げることを心から楽しまれているからに他なりません。『こうなったらいいな』と感じた時は新しいことに挑戦するチャンスなんだと改めて気づかされた時間でした。

リストランテプレーゴ

 

●取材協力
Ristorante PREGO リストランテプレーゴ
住所:三重県津市寿町18‐21
営業時間:11:00~21:00
定休日:月曜日
公式URL:こちらから
メニュー情報はこちらから(LINE)

チョコレートメッセージプレート専用アカウントはこちら

 

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Writer
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
chefno編集部
パティシエール兼ひよっこライター ハルミ
製菓業界に足を踏み入れて早20数年。読者目線の企画運営が目標です! 食べることと旅行が大好きな1児の母。サンマルク、カイザーゼンメルが大好きです♡
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