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2023.12.19

それぞれのガレット・デ・ロワ、それぞれのレイヤージュ ―有名シェフのレイヤージュを大公開!

パリジーノアトリエドママン

ガレット・デ・ロワが焼ける時の香り、表面の艶とレイヤージュの輝きに心を打たれた20数年前から、ガレット・デ・ロワに魅せられ、フェーヴを集め続けている担当者の念願の企画です!

ガレット・デ・ロワの伝統や歴史から始まり、前回までガレット・デ・ロワの製造スケジュールやストック方法など実務的な面の記事をお届けしました。長年、ガレット・デ・ロワを実際に販売してきたシェフたちのお話は、製造・販売していく中で得た工夫や気づきの宝庫で、目からウロコでした。

連載4回目の今回は、ガレット・デ・ロワの魅力を語るうえで外せない「レイヤージュ(模様)」についてご紹介します。レイヤージュの特徴を紐解き、これまでの記事で登場したシェフたち渾身のレイヤージュの秘密に迫ります。

知っておきたいレイヤージュのこと

ガレット・デ・ロワに心を奪われてしまうのは、味もさることながら、何といってもその表面の模様の美しさ。フランス語でその模様や模様を描くことをレイヤージュ(rayage)といいます。
お店に並んでいるガレット・デ・ロワを見るとそれぞれ個性がありつつも何となく似ている気がしませんか。それは、次に紹介する4つのモチーフがベースになっていることが多いからなのです。なぜこの4つのモチーフが定着したのかは定かではありませんが、クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ発信の情報や文献で調べたところ、それぞれのモチーフにはフランスの文化の土台にもなっているギリシャ‐ローマ文化やキリスト教文化で何かしらのシンボルとして意味が込められていたことがわかりました。

月桂樹(葉っぱ模様)

意味:勝利
葉がしおれないので永遠性を連想させる

ガレット・デ・ロワ

麦の穂(矢羽根模様)

意味:五穀豊穣、生命を象徴するもの
時に束された穂として、そして豊穣の神々の持ち物の一部としてローマやギリシャ文化に登場した

ガレット・デ・ロワ
太陽(渦巻模様)

意味:生命力
生命を育む力であり、光と熱を供給し、富の源となるもの

ガレット・デ・ロワ

ひまわり(格子模様)

意味:栄光、信仰心の篤さ、忠誠、キリスト教徒
救いを求めて神に祈りをささげる姿が生長のために太陽のほうを向くひまわりに似ていることから

ガレット・デ・ロワ

公現祭で取り入れられる前にガレット・デ・ロワの原形となるお菓子が食べられていた農神祭は、もともと古代ローマ帝国が戦いに負けた際、民衆の士気を上げることが狙いで始められた祭りであったとか。ギリシャ‐ローマ文化やキリスト教文化に関連するシンボルがレイヤージュに用いられるのは、そういった歴史的背景が深く関わっているのかもしれません。現在、本場のフランスではガレット・デ・ロワの宗教的な意味合いは薄れており、一般家庭で広く親しまれています。

模様は、複雑なほどきれいに焼き上げることが難しくなるため、技術の見せ所でもあります。それもあってか、ガレット・デ・ロワを題材にしたコンテストやフランスの国家最優秀職人章(M.O.F)試験において、レイヤージュは審査項目の一つとなっています。

シェフたちがたどり着いたこだわりのレイヤージュ

ガレット・デ・ロワの顔となるオリジナルのレイヤージュを創り上げていくことはガレット・デ・ロワ製造の魅力の一つでもあります。
ここでは、これまでの連載記事に登場したシェフたちがガレット・デ・ロワを作り続けてたどり着いた渾身のレイヤージュを、動画とともに大公開!シェフたちのレイヤージュを見比べると、使用する道具やテクニックなどで多くの違いが見えてきました。「こんな方法があったのか!」「このやり方でもできるのか!」という発見を、今後ガレット・デ・ロワの製造に挑戦する際に活かしてほしいと思います。

今西 克彦シェフのレイヤージュのポイント

・事前にガイドとなる穴をあけておく
・すべての作業を回転台のうえで行う
・適度なカーブがついたナイフを使用
・“シクテ”(端を閉じる工程)は1回目のドリュールを塗る前に行う

ガレット・デ・ロワのレイヤージュ

▲月桂樹をモチーフにした細かいレイヤージュ

 

 

今西シェフ
「刃を入れる深さを変えることで、焼きあがった時のラインの開き具合や深さが変わります。僕は、引きたいラインによって刃の入れ方を4種類くらい使い分けています。
例えば、ベースとなるまっすぐのラインは深めに入れて、横にくっきり開かせます。葉脈のラインは刃をまっすぐ入れて、途中で手首を返して刃を斜め45度にして切り込みを入れます。この時あまり深くしないように調整します。そうすると、焼きあがった時に、ラインの開き具合にグラデーションをつけることができます 。
切り込み方を使い分けることで、まっすぐなラインとカーブのラインの強弱や深さの違いができ、立体感が生まれます。

台数を仕上げる中で、レイヤージュに奥行きが生まれると、よりきれいに見えることが分かったので、この方法を取り入れています。
僕のガレット・デ・ロワは横から見るのと上から見るのとでは柄がかすかに変わって見えます。食べる前にぜひこの違いを楽しんでほしいなと思います」

ガレット・デ・ロワのレイヤージュ

▲横から見た時に、フィユタージュの層の断面がみえる。このラインが立体感を生み出している

ガレット・デ・ロワのレイヤージュ

▲刃をまっすぐ入れた箇所は層が横にきれいに割れている。ほとんど力入れないで、書いているだけのイメージ

妻鹿祐介シェフ のレイヤージュのポイント

・事前にガイドとなる穴をあけておく
・回転台は最初の円を描く時のみ使用
・レイヤージュはガレット・デ・ロワを置いた紙ごと回しながら行う
・ナイフは調理ナイフを使用
・入れる線の長さによって、ナイフの刃と背を使い分けている。
・“シクテ” (端を閉じる工程)はしない

 

妻鹿シェフ
「長いラインは大きく開いてほしくないので、深く切りすぎないように、ナイフの背で潰し切るように引きます。反対に葉脈のような短いラインは横に開いてほしいので、ナイフの刃のほうで角度もつけて切り込みます。このようにナイフの刃と背を使い分けて開き具合に差を出し、ラインに強弱をつけています。
フランスでの修業時代、レイヤージュで一番よく見かけたのはシンプルで簡単な稲穂だった気がします。うちで模様を月桂樹にしている理由は、コンテストで月桂樹をモチーフにしたことと、自分の中でガレット・デ・ロワといえば、やはりこの葉っぱの模様という思いがあるからですね。オリジナリティーを出すためにすべての線を曲線にしています」

ガレット・デ・ロワのレイヤージュ

▲ラインの強弱が見て取れる。写真で入れているのは短いライン。刃に角度をつけて寝かし気味に切り込む

ナイフ

▲レイヤージュに使用しているナイフ。刃先が薄くなって反っているのは、修行時代から研いで使い込んだ証

ミラヴェイユのガレット・デ・ロワ

▲完成品。重なりあう葉っぱが立体感を生み出している

取材を終えて

取材したお二人のシェフのレイヤージュの様子を見ていると、「追究」という言葉がぴったりな気がしました。長年、追究し続けて、独自のテクニックや自分にしかできないレイヤージュにたどり着いたお二人。自身のレイヤージュの特徴を熱く語る姿が印象的でした。
取材を通してレイヤージュだけではなく、配合や製法、どこをとってもガレット・デ・ロワは終わりのない、奥が深いお菓子ということを目の当たりにしました。よりたくさんの職人が「自分のガレット・デ・ロワ」を目指して追究の道を進み、そして日本のガレット・デ・ロワシーンがもっと盛り上がっていってほしいと思います。

●取材協力

今西シェフ /Parigino & atelier de maman(パリジーノ&アトリエ・ドゥ・ママン)

パリジーノ&アトリエドゥママン

住所:大阪府大阪市淀川区十三東1-14-1
アクセス:阪急電車十三駅からから徒歩7分
TEL:06-6390-5240
営業時間:平日 9 :00~17 :00、土日祝日 8 :00~17 :00
定休日:火・水曜
公式インスタグラム:こちらから

 

妻鹿シェフ / Patisserie Miraveille(パティスリー ミラヴェイユ)

ミラヴェイユ住所:兵庫県宝塚市伊孑志3丁目12-23
アクセス:阪急電車逆瀬川駅から徒歩8分
TEL:0797‐62‐7222
営業時間:10 :00~18 :00
定休日:第2・第4水曜日
公式ホームページ:こちらから
公式インスタグラム:こちらから

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chefno編集部
エディター兼ライター A
chefno編集部
エディター兼ライター A
商社の製菓製パン機械を扱う部署ではたらく。
職人の方々のこだわりや思いが伝わる記事・写真をお届けすることが目標です!大のハード系パン好き。
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